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第3章 聴講生になったので、自由にします!
上級ダンジョン、婆ちゃんと攻略中
しおりを挟む自分と婆ちゃんたち老人ずを連れ、26、27階層の砂漠フィールドを行く頃
辺境伯の領都を、近辺の伯爵家や子爵家の者が訪れる回数が増えていた。
ヴィルジーク様が養子に入り、周辺の貴族を集めて、披露目をするのは当たり前の事だけど……
ヴィルジーク様が公爵家三男であった事は事実な上、やや強面ではあるけど、イケメンなのは確か。
王都でも、公爵家三男でなければって言うご令嬢も居れば、騎士爵は貰えるだろうから、それでも優良物件って方だったの。
それが、今回の王命で、次期辺境伯となれば、株は上昇。
子供さえ産めば、後は王都邸に居れば。なんて事を考える者まで居た。
そこへ、元より辺境に近い領地を戴いてる家にすれば、伯爵と言え、辺境伯は侯爵家に準ずるので、娘が居る者とすれば、お近付きになりたいもの。
娘とすれば、辺境領ではなく、王都に縁付きたいと思っていても、ヴィルジーク様のご尊顔を拝したら……
夢中になるだろうねえ。
それで、お披露目の後も、理由を付けて、領都を訪れる娘と従者が後を絶たなかったんだけど……
王都で揉まれてるヴィルジーク様、繁忙を理由に、第2の門を潜らせなかった。
近辺の子爵家や男爵家の当主自身がお伺いを立て、来ると言うのであれば、寄親としての責務もあるので、通しただろうし、娘を連れて来るのも可能だったろうけど……
寄親、寄子の関係であれば、防衛経費(ほぼ人件費)にかなり取られる上、魔の森からのスタンピードの頻度から、3つめダンジョンの存在を疑われており、娘が甘い夢を見て、嫁いだとしても、軍の助力を戴けるか否かってくらいだと、自覚してる家が殆ど。
稀に、辺境伯領の厳しさを分かって居らず、侯爵家相当と言う事で、媚びを売ったり、娘を寄越す家もあるが、辺境伯家は暇ではない。
何とか理由を付けて入りこもうにも、辺境伯に女性と言えば、通いの平民の裏方の召使いのみ。
メイドも、以前より魔の森からの襲撃があるものだから、居続ける者は居なかった。
それではと、メイドとして声を上げれば、3門内の屋敷に滞在して、仕事をしてみろと言われ……
自分が上級ダンジョンに潜ってるから耳にしていない襲撃の鐘の音、2週間に1回は打ち鳴らされていた。
自分はタイミング悪く聞いてない。
その頻回な襲撃の度に、ヴィルジーク様は出撃して行く。
目も向けられないだけでなく、落ち着かない怯えで、ご令嬢らしい者であればあるほど、早々に逃げ出していた。
ヴィルジーク様が養子に入る事になった理由も、ギルバート様の婚約者が早々に逃げ出し、婚期を逃したからだから。
なので、辺境伯家とすれば、一緒に戦ってくれる様な女性を求めてた。
ダーイン辺境伯がそんな状況になってるとは知らず、婆ちゃんずは30階層に達してた。
一旦戻る?って話は、婆ちゃんに一蹴され、31階層に降りれば……
トレントの上位種エンシャントの森があって、身構えれば、「待って、待って~!」という姿無き声が聞こえた。
と思ったら、光ってる球があるのに気付いた。
と同時に、光る球は形を変え、薄ら透明の人型に。
見えてる姿が、前世で居ると想像された妖精?いや、精霊に似ていた。
「え?もしかして、見える様になった?」
と思って呟けば……
「相手から見える様に合わせて来てるんだから、当然だろ」
婆ちゃんの弁に、不満を覚えるのも仕方がないでしょ。
デイビッドさんは、「なるほど。この階層を抜けるには、彼らとの協力が必要になるのですな」と言ってるし。
でも、この感覚を覚えておけば、契約してくれる精霊?妖精?を見えるかな?
どっちか分からないから、羽虫って婆ちゃんが言うのかあ。と思ってたら、何故かいっぱい集まって来た。
だけじゃなく、「ねえねえ、アナタから甘い匂いがする!」と話し掛けてきた。
唖然としてたら、何やら肩に居るイベルダと喋ってる?
「え?本当に?契約して、その空間の世話をしたら、収穫物分けて貰えるの?」
「メリルフートも、マジェスタだけじゃないの?」
「ええ!?ウィルダーフラワー!?」
「本当に、お手伝いしたらくれるの?」
何やら、イベルダが取り纏めてる雰囲気になってた。
「さすが、マーゴットの弟子だけあって、有能ですな」
「いや、ライラが規格外なだけさ」
そう言われてると知らず、イベルダが取り纏めた羽虫と、人差し指を用いて、契約して行ってたの。
害がなければ通し、話が出来る様であれば、増え過ぎたトレントを狩って貰う。
薬師が居れば、霊樹の雫を作って貰い、泉に溜まる瘴気を祓う。という話だったけど……
この上級ダンジョンが薬師の為のダンジョンだと知る者は居ない為、薬師が訪れる筈もない。
まあ、婆ちゃんや自分は別にして。
それで、薬師が2人も居る上、自分が亜空間の小屋を持つテイマーで、大喜びで……
精霊王は居ないけど、長の役割の者が、自分の亜空間に移る者を選んだ模様。
なので、召喚獣の小屋を出せば、勇んで入って行った。
ただ……多くない?
そう思いながら、頼まれた泉の浄化の為の魔法薬を作るのに、トレントの実以外にも、同じ階層に生えてるという薬草を採集に向かったんだ。
必要な物を集めて生やしてるって事だけど、小屋の中にも移植出来ないかな?
だって、聖水の様な浄化の魔法薬があればって場所、ここ以外にもありそうだから。
だけど、あ~、この世界の両生類のオオサンショウウオは、滝の裏を作って、生息させないとダメか。
そう思いながら、滝の裏の割れ目に、身体を潜り込ませば……
思い出すのは、初めて行った初級ダンジョンのレイクサーペントだけど……
割れ目の奥にあるのは暗闇ではなく、何処かに隙間があるのか、陽の光が差し込んでいて、暗くない上、水が岩を伝って落ちて来ていて……
思っても居なかった清浄な空間に、息を飲んでた。
ら!ええ!と思う物が目に入った。
この上級ダンジョン、やっぱり薬師のダンジョンだよ!
知ってる者でなければ見付けられなかったと思うけど、苔の中での最上級品があった!
岩にこびりつく様に生えてる、長さ2cmの細長い苔は若草の様な緑色なんだけど、真っ直ぐの先は薄くピンク色に色付いてるの!
効果は、命の長さを延ばすっていうもので、エリクサーに似た霊薬とも言える魔法薬を作るのに、必須な材料!
それだけに、この苔が無いと作れないので、幻の薬でもあるの!
それが大きめの岩全体に群生してて、歓喜の声を上げそうになったけど、押さえて、オオサンショウウオの姿を探した。
こういう滝の裏って言う環境にして、1部移せば、亜空間だけに生えるかな?
そう思いながら、潜んでる個体、少し小さいのを残し、微かな電流で痺れさせて……確保!
それから、今までの経験則であれば、滝裏が出来てるので、確かめに小屋の中に入れば……
婆ちゃんが羽虫っていうのが分からないでもない彼らが、飛び回ってた。
山羊の親子が居る高台の手前から、川を遡ってみれば……
それまであった直滑降の修験道が打たれそうな滝が、姿を変えていて、先程、目にした環境があって、歓喜した!!
僅かに傾斜がある滝が3段に分かれて落ちる事で、落差の衝撃が緩和されてる。
水の衝撃が強ければ、岩に穴を開ける事もあるので、なるべく当たりが柔らかい方が良い。
水しぶきの粒が細かい程、苔が育ちやすいんだよ。
浄化の薬を調合して、羽虫たちに渡そうとした時には、プラナーダという名の苔やオオサンショウウオの子供を移したんだけど……
さすがに、先程と同じ環境にするには時間掛かるだろうなあ。と思ってるけど、もしかして、もしかすると、直ぐに育つ可能性も無きにしも非ず?
そうであって欲しいなあ。
そんな事を考えてる自分、顔が緩みっぱなしだった。
なのに、「何言ってんだい」という婆ちゃんの言葉で、我に戻された。
「ライラが浄化させに行くんだよ!他に誰が出来るっていうんだい」
婆ちゃん、ブツブツ言ってるけど、確かに言われてみれば?
と言う事で、浄化させる泉にいけば……
うわぁ!と叫びそうなくらいに澱んだ、本当に泉!?という水溜まりがあった。
泉の側の土も木々も、ドロドロの黒いものがこびり付いていて……
自分に襲い掛かって来られても困るので、さっさとやっちゃいましょう!
作った浄化の薬が入った大きな瓶を、空に投げ、風魔法で切っただけじゃなく、雨化させて振り注げば……
着いて来て後ろに居た婆ちゃん達がボヤいてた。
「やり方が豪快だねえ…全く」
着弾した処から、黒い色が抜けて元に戻って行くので、ホッとしてたら……
後ろで歓声が聞こえて来た。
ちなみに、泉の浄化は前回というのが50年も前だったので、あのドロドロぶりだった訳。
泉さえ浄化されたら、最上級回復薬の1つであるエリクサーを作る薬の材料になるくらい重要なんだってー。
先日ようやくハイポーションの上、エキストラポーションを作れる様になったばかりだからねえ。
まあ、着実に、材料の方は集まって来てるけど。
高齢の婆ちゃんが亡くなる前に作れる様になりたいとは思ってるんだ。
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