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番外編 テスト明けの眠れない夜

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 大学生、成人男五人、テストの打ち上げといえば?

 居酒屋で飲み放題からのカラオケ!かと思いきや、俺たちがいるのはファミレスで~す。

 なぜか。

 最初は「飲みに行こうぜ!」って歩いてたんだけど、たった一言で流れが変わった。



「ファミレスで良くね?」



 普段口数極少男の修がそう言ったもんだから、なんとなくみんなそんな気になってしまった。

 いやいや‼︎俺と二人の時は結構喋るからな?!

 わがままだし‼︎色々要求される‼︎

 何とは言えないが。



「パフェあるしな~」



と、兄貴肌の隆が言ったことで、行き先はファミレスに決定。

 五人で行ったら、六人がけのテーブルに案内された。

 当然のように修は俺を奥に座らせ、隣を陣取った。何なの?その手際の良さ。器用すぎない?

 向かい側には残りのいつメンが三人並ぶ。



「まじ課題辛い。間に合わないかもしれん」

「今期、一個でも単位落としたら本当にやばい」



 一難去ってまた一難。

 テストが終わったとはいえ、まだまだやることは山積みでどうしても愚痴っぽくなる。酒でも入れば違うのだろうが、ドリンクバー前の席に案内されたので自然とドリンクバーのソフトドリンクで乾杯となった。



「守、次はカルピス?」

「あ、うん。サンキュ」



 グラスが空になるタイミングで修が声をかけてくるから、俺は一度も席を立たずにのんびりしている。



「お前ら、仲良いのな」



 急に隆にそう言われて、俺の心臓はドクン、と跳ねる。



「あ、え、そうか?……普通、じゃね?」



 おしゃべりな俺が辿々しく答えるなんて、怪しすぎるだろ。

 どうにか誤魔化さないと、勘のいい隆のことだ。気がついてしまうかもしれない。



「っと、その、なんだ……」



 これが墓穴を掘るってやつ!?

 何か言いたいのにちっとも言葉が浮かばない。

 正面に座る三人の視線がジリジリと俺たちの秘密を炙り出してしまう。

 口を開いては閉じ、何も言えないまま呼吸まで浅くなる。



「ハマってるドラマが一緒なんだよ。この前宅飲みしながら続き見て、飽きたからってオセロして負けた方が勝った方の言うこと聞くってことになった。な?」



 絶体絶命と思ったところで修のナイスアシスト。

 しかも嘘は一切言ってない。

 すげぇな、修。まぁ、オセロで負けたのは俺で、言うことを聞いたのも俺。何をしたのかなんて絶対こいつらには言えない。

 無理だと言っても俺の腹を洗った修の強引さと、その後の雄の目をした顔を思い出し、顔が熱くなる。



「守、暑いんだろ?もっと飲め」

「ん。わかった」



 持ってきてもらったカルピスを飲めば、少し落ち着いてくる。

 修が戻って来て、一言説明しただけで隆も他の二人もあっさり納得した。

 こっそり、溜めていた息を吐き出せば、テーブルの下で修の脚が俺の脚に寄り添った。お互いデニムをはいているのに、すぐにじんわり熱が伝わってくる。馴染んだ温度に、自然に唾液が溢れて、喉が鳴る。



 あぁ、なんで二人きりじゃないんだろう。

 いつの間にか溶けてしまったアイスクリームをぼんやりと口に運ぶ。



「守、垂れてる」



 修の親指がそっと俺の口元を拭ったと思ったら、そのまま自分の口に指を運ぶ。



「甘いな」



 ふっと緩む頬に、せっかく落ち着いた胸が再び暴れ始める。

 あぁ、家だったら指じゃなかった。

 修の熱い舌が直接自分の口元を這い、そのまま……



「守?もう行くって」



 ぼんやりしていたのを心配した修が顔を覗き込んでいた。あまりの近さに反射的に大きくのけぞった。



 ガツン!



 星が飛ぶ。



「いってぇ……」



 壁に強打した後頭部がズキズキ痛む。



「大丈夫か?」

「ん、打っただけ」



 修の大きな手が後頭部をふわりと撫でる。

 痛みに敏感になった皮膚がビリビリと修の感触を過度にキャッチして、俺は身震いした。



「ちょっと守のこと休ませてく。先行って」

「OK。保護者がいて良かったな、守」

「おつー、たんこぶの分、背が伸びんじゃね?」

「お疲れ、守、テスト終わってて良かったな。記憶とんでも平気だぞ」



 三人の憎まれ口にひらひら手を振って合図する。

 カラン、とドアベルが鳴って三人が出ていったのを確認すると、修の腕がするりと腰に巻き付いた。



「外だってば、近い」

「ん、十秒だけ」



 修は俺の頭に顔を埋めた。

 ゆっくりと繰り返される深い呼吸が俺の肌を湿らせる。

 十秒なんて経たないで欲しい。ずっと俺たちの時計は九秒のままで良い。



「今日泊まってくだろ」



 低く掠れた声が修の飢えを顕わにする。

 その声を聞くだけで、首をすくめた俺だって十分飢えていた。



「当たり前だろ」







 お互い平静を装っていられたのも、アパートの前まで。

 階段を駆け上がり、修の部屋を目指す。

 玄関の鍵がガチャリと回る音にさえ興奮を煽られた。



「んっ!ンンン……」



 玄関に入るなり、噛みつかれるようなキスに襲われる。

 強く吸われすぎて舌の根元が痛むのに、思考は蕩けていく。

 カチャカチャと鳴るのがどちらのベルトのバックルなのかもわからない。

 抱き合うこともせず、唇は合わせたまま互いの服を剥ぎ取るように脱がせあった。

 あっという間に全裸になる。そこらじゅうに散らばった服は二人分。

 テスト期間は互いに都合がつかず、ずっと会っていなかった。

 素肌に触れたい、その一心でそれぞれの手は忙しなく移動する。



「あ、んん……待って、後ろはヤダッ‼︎」



 シャワーも浴びずにそこを直接触られることには抵抗があった。

 本当は望んでいるのだけど。



「守は我慢できるんだ?」



 唸るように低い声がして、ぐるりと体をひっくり返され、玄関のドアに押し付けられた。

 尻の間に押し付けられる熱に、勝手に穴がひくついた。



「欲しがってるじゃん。違う?」

「や、だって、汚い」

「守ならいいよ」

「やだ、汚したくない」

「俺が掃除するから」

「無理」

「……わかった」



 修の言葉にホッとしたのも束の間、背後でビッと開封する音がした。

 振り返れば修が器用に口を使ってコンドームを開封していた。



「守の言うことなんか聞かない」

「……うっそだろ」



 パチンと音がして、あっという間にコンドームを装着した修は俺の尻を捲るように割った。



「ひ、ぁっ‼︎」



 いつもは指で散々ほぐすのに、いきなり挿入するように先端を擦り付けられれば、怖いはずなのに、期待してしまう。



「……なんだ。柔らかいじゃん。守、ここでオナニーしたんだ? 昨日の夜? 今日の朝? まさか学校」

「学校でなんかするわけないだろ!」

「じゃあ、昨日の夜と、今日の朝はしたんだ」

「っ‼︎」

 まさかそんなことがわかるなんて、俺は知らなかった。

 修は俺よりずっと俺に詳しい。

 簡単に秘密は暴かれる。



「ね、ここに何が欲しかった?守、言えよ」



 耳の穴を舌で舐め回しながら、意地悪く問い正す修の声が気持ち良かった。

 玄関のドアにはベッタリと俺の先走りがこびりつき、俺はこっそり亀頭を擦り付ける。

 そんなの、修が見逃すわけがないのに。



「ひゃっ‼︎」



 ぎゅっと亀頭を握り込まれ、小さく叫び声をあげたって、修は許してくれない。

 すりすりと鈴口を擦られ腰が痙攣した。



「一人で気持ち良くなっちゃうの?俺のこと、置いていかないで」

「わかった、わかったから、むり、それ、怖い、痛くなりそっ!あぁ……っ‼」



 ぐっと押し付けられただけで、俺の尻は簡単に修を受け入れ始めた。

 普段のように解されていない分、はっきりとそこで修の凹凸を感じる。先端が、くびれが、順に通過し、良いところを擦り上げる。



「ああぁ‼︎」



 たった一度だけの通過で俺は激しい快感を覚え、全身を硬直させ射精した。

 信じられない。

 溢れる精子は固く、ポトリ、ポトリと塊になって床に落ちていく。



「濃いな」

「ーーっ‼︎ うっさい‼︎ 自分じゃイケなかったの‼︎ バカ‼︎ お前のせいだからな‼︎」



 悔しくて、振り返って思いきり睨みつけたのに、修は嬉しそうに笑う。



「守、かわいい」

「ん!あああっ‼︎」



 声は甘いのに、下から掬い上げるように突き出す腰使いはえげつない。俺より身長の高い修にそうされては、俺は完全に奥まで貫かれて身を任せるしかなかった。



「かわいい、守、好きだ、好きだ」



 有無を言わせないセックスに反感を覚えながらも、甘すぎる言葉に俺はすっかり溺れていった。







「ごめんって」

「やだったんだからな」

「うん、わかってる」



 散々玄関で貫かれて蕩けながらも、汚したら嫌だと俺は泣いた。そんな俺を抱き上げると修は繋がったままバスルームに移動し、後始末をしてくれた。

 たっぷりと湯の張られた湯船で後ろから抱かれながら、くどくど文句を言ったって修はケロッとしている。

 そりゃそうだ。俺はいやいや言いながらも、散々よがってイキまくった。照れ隠しなのはお互いに百も承知のこと。単なるバカップルの茶番だ。



「明日の朝ごはん、ホットサンドがいい」

「オーケー。チョコバナナ? いちごチーズ?」

「いちごチーズ? 何それ⁈ 新しいじゃん‼︎」

「動画でやってた」

「それ食いたい!」

「わかった。ん」



 後ろから伸びてきた手が顎をするりと撫でるから、俺は自然と首を伸ばして修のキスを受け入れる。

 茶番は終わり。

 押し付けられる硬さに、まだ眠れない夜を予感する。

 口下手は彼氏になったらおねだり上手。

 そんなの聞いてない。

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