同級生の家にゾンビドラマ見にいったら囲い込まれたんだが、その話聞く?!

万年青二三歳

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4.頭の中はアレでイッパイ 

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 何だって力の限りやって寝落ちが一番気持ち良いよ! 子どもの時みたいにさ。

 でも友達と抜きっこからの寝落ち、アラームなしは危険。

 修と抜きっこの末2回も発射した俺は、シャワーでのこっそり1回も含め午前中だけで3回出したわけだ……

 泥のように眠るとはこのことか! って位寝た。

 起きた瞬間に俺は危機を察知。

 部屋に差し込むオレンジ色の光、すなわち夕暮れ。

 居酒屋のバイト夕方からだったよな?! 



「あああああ」



 一瞬も無駄に出来ないっと跳ね起きようとしたら、下半身かぴかぴ丸裸で修の腕の中。



「うるさい」

「どけ、バイトに遅れる」

「ぐ」



 容赦なく修を蹴り上げベッドを脱出すると、落ちてる服を取り敢えず着て、スマホ片手に走り出す。



「バイト行ってくる!!

「行ってらっしゃい」



 走りながら、少しずつ落ちてくるハーフパンツの紐を思いっきり絞る。

 ちょうど来ていたバスに飛び乗れば、一安心。

 心臓バクバク。

 汗ダラダラ。

 全身で呼吸しながら、少しずつ冷静になってきた俺は気がつく。

 この服俺んじゃねーな? 

 やけに着心地の良いハーフパンツは、バスケットショーツみたいにゆったりフィットで膝の下まで丈がある。

 修が来てた時は膝小僧丸出しだったけどな! 

 マジかよ……いや、まさか。

 どんなミラクルが起きたって、俺の予感が外れる可能性はゼロパーセント。

 周りに乗客がいないのを確かめて、そぉっとハーフパンツの中を覗き込む。



「ひぃ……ん」



 有名ブランドのロゴがデカデカと入ったウエストゴムのボクサーパンツに見覚えなんかない。

 俺の愛用はファストファッションで3枚1,000円のペラペラトランクスをクーポンを使って950円で買ったヤツだ。

 気休めでしかないが、そっとウエストをずり下げて股間にあたる布の面積を減らす。

 ボクサーなくせにゆとりがある気がするけど、それは、あれだ。身長が違うからなだけだろ。

 自分にそう言い聞かせながら、思い浮かんでしまうのは修の立派な持ち物。

 抜きっこってなんだよ……初めてしたわ。

 人に触られるのも、人のを触るのも初めてだった。

 同じ手なのに、温度も感触も違う。

 当然力加減も違って……



「ああ!!…………何でもないです」



 思わず絶叫しそうになるが、セーフ。

 おかえり、俺の平常心。

 まばらとはいえ、他に乗客がいるのだから色々と思い出している場合ではない。

 俺はこれからバイトなのだ。

 バイト、バイト、そうだ賄い! 今夜の賄い何食べよう? 

 店のメニューから1,000円まで好きな物を食べて良いことになっている。俺は厨房担当なので、さらにその材料からメニューにない物も作れる。パズルみたいに値段と材料の組み合わせを毎回考えるのが楽しみだったりする。

 昨日の夕飯は何を食べたっけ、とか思い出してはいけない。

 危ない。

 魚介で白飯に合うメニューにしようと心に誓い、いざバイトへ。

 週末の居酒屋なんて混雑するから、働き始めればモヤモヤなんて全部吹っ飛ぶと思ってたのに、本当についてない! 

 居酒屋の入ってるビルの前で道路工事をやっているから、店内は閑古鳥。

 それなら賄いパズルに全力を注ぐぜ! と思ったのにそれも撃沈。

 最近店長が付き合い始めたという可愛い彼女が働くサンドイッチ屋さんでケータリングを頼んだんだって! 

 なんで今日なの?! 

 バスケットの写真がプリントされた箱に詰められた一口サイズのサンドイッチは色とりどりで目を引いた。

 全粒粉入りのパンと普通のパンを使い、市松模様に見えるようになっている。

 アボカド、卵、ハム、レタス、トマト。

 油は控えめ、野菜たっぷりヘルシーに。

 おしゃれなサンドイッチは他のスタッフには大人気だった。



「江口くんも遠慮しないでいっぱい食べなよ!」



 そう勧めてくれたけど、俺は今朝食べたホットサンドのことばかり思い出してしまう。

 見た目は茶色だし、火傷注意で食べにくいけど、美味しかったんだ。

 俺のリクエストで甘いのも作ってくれたし、俺が作ってくれたのも美味しいって残さず食べてくれた。

 それで終わりだったら良かったんだけどな。

 突然のハプニングアレコレで、すっかり俺の頭は混乱していた。

 修の家に荷物を置きっぱなしで来たから、どうしたって戻らなきゃいけない。

 どんな顔をして合えば良い? いつも通りできるのか? 

 居心地の良い修との友人関係はどうなってしまうんだろう。

 とにかくそれが気がかりだった。

 失うには惜しい関係、そう自分が思っていることに気がついた。

 そう気がついたって、どうすれば良いかわからない。

 悶々と脳内で堂々巡りをしてバイトを終えた。



「お疲れ様です。お先に失礼しまーす」



 そう言って店の裏口を出てすぐ、人影に気がつく。



「修……?」

「お疲れ」

 ガードレールに寄りかかっていた修は近くにやってくると、俺のカバンを差し出した。



「これ、洋服も乾いたから入ってる。これないと、家に入れないだろ?」

「わざわざ持ってきてくれたのか? さんきゅ」

「じゃな」

「おう」



 そう言って修はあっさり行ってしまった。

 いつも通りのそっけなさ、言葉少なで、こちらのことなどお構いなし。

 俺の頭を悩ましたアレコレなんてなかったんじゃないかと思うほどの自然体だった。

 心配していたような気まずい雰囲気にならなかったことを喜ぶべきなのに、どうして俺は少し寂しいんだろう。

 カバンの中身を確認したら、入っていた俺の服から知らない洗剤の匂いがした。

 やっぱり全部あったこと。

 帰り道の俺は抜け殻だった。

 頭は働かずにぼんやりと家を目指す。

 一人で帰るのなんて当たり前なのにどうして違和感があるんだろう。空っぽの隣なんて思うのはおかしい。



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