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3.腹の皮が突っ張れば目の皮が弛む

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 ほとんど寝てない日に朝から腹いっぱい食ったらどうなるか知ってる? 

 そ、ねむーい! 

 修にもらったホットサンドは一口サイズだったからあっという間に食べ終わって、俺の瞼は下がり始める。

 スマホでスケジュールを確認すれば、居酒屋のバイトは夕方からだった。



「ねむー」



 ドサッとベッドにダイブする。

 まだ二人分の体温でぬくぬくの布団に包まればあっという間に意識は遠のいていく。

 このほんの数秒間の落ちていく感じがたまらん……



「あああ!!」



 突然布団を剥がれ、俺は強制的に覚醒させられた。



「なんだよ!! 寝そうだったんだよ! 一番良いとこ! 休みの日なんだから二度寝させろよ!!」

「髪、乾かしてからにしろ」

「あぁ? 良いよ別に」

「だめだ」

 すでに修はドライヤーを持ってきていた。

 俺を起こすとそのまま真後ろに陣取って髪を乾かし始める。



「おぉぉ……お殿様気分。最高」

「何?」



 ドライヤーの音で聞こえなかった俺のくだらない呟きを聞くために、わざわざ修はスイッチを切ったらしい。

 振り返ればすぐそこにモサモサの髪があった。



「おわっ!」



 当然なんだよ。真後ろに座ってんだから。

 しかもちょっと身体を前に倒して来てんだから背中があったかいし、首に湿った風も感じる。



「お殿様気分って言ったの!」

「それ好きだな、お前」

「良くない? お殿様。そしたら修は爺だな。俺の世話焼き担当な?」

「何すんの?」

「なんでも! 全部面倒みてくれ!!」

「………………なるほどね」

「よろー!」



 爺は自分の頭はいつもモサモサの癖に、俺の髪を乾かすのは上手かった。

 ちゃんとブラシでくるんくるんとブローまでしてくれたから、美容院帰りみたいに綺麗なマッシュになった。



「おぉ! 爺やプロ級。写真とろうぜ」



 俺のスマホをインカメラにして、髪が主役だから俯き加減でポーズをとった。



「撮るぞー」



 シャッターを切る瞬間するりと首に腕が巻き付いた。



「うわぅ!」



 手が滑ってシャシャシャと連写してしまう。



「ちょっと! なんだよ!! 腕!」

「腕がどうかしたか?」

「だめなんだよ! 俺は首になんか当たるとゾワゾワしちゃうの! 気をつけろな?」

「おう」

「なんか目覚めたわ。ゾンビ×ゾンビの続き見るか!」

「ん。俺シャワー浴びてくる。続き見てていいよ」



 俺にリモコンを渡すと、修は浴室へと向かった。

 そのまま布団でゴロゴロしながら見ることにした俺は再生ボタンを押す。

 昨日どこまで見たかなんてちっとも覚えていないが、どこから見たってぐちょぐちょに決まってる。なんだって良い。

 止まっていたところから見始めれば、まだ主役の二人は無事だった。

 一緒にパーティしていたメンバーはだいぶ減っており、結構な数のゾンビが誕生したようだ。



「うぇ……」



 一人で見ていてもやっぱり声が出てしまう。

 ゾンビのぐちょぐちょは気持ち悪い。でも見たい。



「ひぃっ! んわぁ……」



 布団に包まりいつの間にか夢中になっていたから、修が出て来たことに気が付かなかった。



「ぎょお!!って修かよ。脅かすな。ったくもう」



 視界の隅をいきなり横切った黒い塊に盛大に驚いた俺は多分十センチくらい浮いていたと思う。

 そのまま修は俺の前、ベッドのすぐ下に座った。



「ん」



 振り返ると、当然というように俺にドライヤーを渡してくる。



「お! 今度は俺が爺やだな。」



 ベッドに腰掛け、脚の間に座る修の頭を見下ろした。

 モサモサ頭をかっこよくしてやろう、と俺は張り切ってブラシとドライヤーを駆使する。

 美容院でやってもらった時のことを思い出しながら、ブロッキングなんてしちゃったりして。



「お客様、お痒いところはありませんかぁ?」

「ん」

「ぼあ!」



 急に修が振り返るから、俺たちの鼻先はスレスレの位置にある。

 色々思い出す位置関係に俺の心臓は急にドクドクうるさくなった。



「なんでもねーよ。前向いとけ」



 ブラシで梳かしながらドライヤーをかければ、いつものモサモサはツヤツヤストレートになる。伸ばしっぱなしだったが、元のカットが良いらしく、後ろに流すように乾かせばカッコがついた。



「おぉ! 男前じゃん。俺の腕前を見よ!」



 スマホのインカメラで確認させると、いつもよりすっきりと顔の見えるヘアスタイルに満足したらしく、少し目尻が垂れた。



「撮ろ」



 振り返る修がスマホを見せる。



「おうよ!」



 少し顔をずらして重ならないように位置を調整したが、修は不満らしい。

 もっと近づけと指をくいくい動かした。

 修は俺の両膝を肘掛けのようにして身体を寄せてくる。

 うん、そうすると、あれだ。

 股間のナニがピッタリしちゃう訳で。



「撮るよ」



 早く終われ……! と念じるあまり俺の顔は目がギンギンになったが、修は満足そうだった。



「ドラマの続き見よう」



 そしてなぜかそのままのポジションでドラマの続きを見ることになる。

 寄りかかる所がないから、だんだん疲れて来た俺は前傾姿勢になっていく。

 ちょうど良い高さに修の頭があるから顎を乗せてみた。

 なんかしっくりくるな……

 自然と腕を前に垂らせば、なんとなく修の首に巻きつけると収まりが良い。

 え? 何この密着具合。

 こりゃおかしいと思って離れようと思ったのに! 



「ひゃ! なんで……シーズン2は幽霊でるの?! 無理無理無理! でも見たい!」

「声でかい」



 ゾンビドラマに幽霊なんて誰も期待してないんだよ! 

 修の背中にしがみついたまま俺は恐々ドラマを見るしかなかった。

 乾かしたての髪に顔を押し付けギャーギャー言う俺をうるさいと言いながらも修はそのままにしておいてくれる。

 脚までぐるりと巻きつけて幽霊から逃げ惑うヒーローとヒロインの行く末を見届ける。

 シーズン3がある作品なんだから、もちろん二人は無事。

 修羅場を潜り抜けた男女が安全な場所でやることって言えば一つだろ! 

 洋ドラの目玉、超濃厚な濡れ場の始まり始まり! って地獄。

 どうして修は俺の巻きつけた脚をガッチリ掴んでるのかな?! 

 チュッチュッと音の立つキスも恥ずかしいが、グチュグチュよりはマシだった……。

 盛り上がったドラマの中のラブシーンはかなり進んでいる。

 待って、彼氏の手はTシャツの中で思いっきり揉んでない? 

 スカートの中の手はどうしてそんな動きなの? 

 彼女、どうしてそんなに汗ばんで顔が赤いの?! 

 思わずゴクリと喉がなってしまう。

 視線を下げて修の様子を伺うが、特に反応はないからきっと大丈夫。

 修だって夢中になってるだろ。

 AVだって見たことあるが、そんなのよりずっとエロかった。

 だって不意打ちの濡れ場にしちゃ本気すぎるんだよ! 

 そして俺は忘れていた。

 今の格好は借りたスウェット上下、ノーパンなことに。



「守、当たってんだけど」

「は? 何が?」

「……勃ってる」



 ぐるりとこちらに向きを変えた修が俺の脚をそのまま持ち上げたから、俺はころんと仰向けに寝っ転がった。

 そして隠しきれない股間のテント。

 ご丁寧に頂点の色が変わっている。



「見んなって!」

「ムラムラした?」



 膝でツンと突かれれば、下着が一枚ない分ダイレクトな刺激に襲われる。



「んぁっ!」

「シミになるから脱いで」



 そういうと修はあっさり俺からスウェットを剥ぎ取った。



「ちょっと! 待て待て待て!! 恥ずい! 流石にこれは無理」



 ガッチリ脚を脇に挟まれ、肩を両手で押さえつけられた俺はどうにも動けない。

 しかも修の顔が近い。この距離もおかしい。



「なんで? 恥ずかしくないよ?」

「お前は服着てるからだろ?! 俺は下半身マッパなんだって!! 不公平。おかしい」

「じゃあ脱ぐ」



 なんでそうなる?! 

 一時的に自由になるかと思いきや、パニクった俺はちっとも動けずにあっという間に服を脱いだ修に押さえ込まれる。



「ひゃっ! 押すなって……んっ、だめ、擦れるから」

「勃ったものはしょうがない。抜こうぜ」

「や、だよっ」



 男ふたりで下半身丸出し。

 銭湯に行けばありふれた状況も、友達の家でこれは絶対おかしい。

 俺はパニック。修はいつもより距離が近いし、なんかおかしい。



「なんで? すぐイっちゃうから?」

「ちげーわ! 言っとくけど俺は早漏じゃないからな?」「どうだか」

「おうおうおう! 言ってくれるじゃねーか! 勝負すっぞ!!

「なんの?」

「抜きっこだ! 抜きっこ!! 相手を先にイかせた方が勝ちだ」

「わかった」



 バカみたいな俺の提案に修は同意して、向かい合わせになったのはいいが、なんで俺は修の膝の上にいんの? 

 ベッドの上で壁に寄りかかり脚を伸ばした修の上に、跨るように座らせられた俺は恥ずかしくてたまらない。

 これって完全に騎乗位じゃねーか!! AVで見たやつ……

 そうだよ。俺は童貞だ。

 だって気がつけば周りは男ばっかり。

 スッゲー楽しいから、うっかりして彼女を作る暇がなかったんだよ! 



「俺はいつでもいいよ」

「俺だって!! ハァン......ずるっ! あ!」



 修の大きな手がすっぽりと俺のちんこを包んだ。

 予想外に優しい力でゆっくりと扱かれて背筋が震えた。



「あ、待て、って……」



 チュクチュク響く水音は全部自分のカウパーだと思うと恥ずかしくて堪らない。

 初めて他人に直接触られる気持ち良さにすぐイってしまいそうだった。

 急いで修のちんこを扱かなければ、と手を伸ばせばその大きさにギョッとする。



「でっ、か……」



 手の中で修のちんこがビクンと脈打つ感触がした。

 修もさては大して経験ないな? 

 敏感くんじゃねーか、なんて余裕に思ったのは一瞬だけ。



「あ、あ、待ってやば、や、あ…ん、ん……」



 徐々に刺激を強くされ、あっという間に俺の絶頂は目の前に迫った。

 びくん、と背筋が伸びる。



「守……」



 呼ばれた名前に反射的に顔を上げてしまった。

 熱っぽい目をした修の表情に心臓が跳ね上がる。



「あ、やば、イクっ……!!」



 視界が真っ白になっても脳裏に浮かぶのは直前に見た修の顔だった。

 初めて見る雄の表情に、俺は捉えられた獲物の気分になる。

 脱力して修の胸によりかかれば、そこも俺と同じようにドクドクと鼓動がうるさかったからホッとした。

 汚れを素早く拭かれ、俺はうつ伏せに寝かされ腰を持ち上げられる。

 四つん這いの状態に流石に慌てる。



「ちょ、何? なんなの?! 勝負は俺の負けでいいよ?!」

「俺まだイってない。脚貸して」



 そう言うと閉じた太ももの間にグッと硬いものが当てられた。

 ヌルリと割って入って来る感覚に肌が粟立つ。

 俺の腰を持つ修の手は信じられないほど熱かった。

 ヌルヌルと動き始める修のちんこが俺のちんこを刺激する。



「あ、擦れる……んっ、あっ、あ……やば、いかも」



 どんどん激しくなる修の腰の動きに俺は振り回される。

 肌がぶつかり合う音の生々しさ、イったばかりのちんこへの刺激、何より修の声が俺の頭を熱くした。



「守、守……イキそ、もう少し……」

「あ、だめ、そんなにしたら、あ! でちゃうっ!」



 シーツのシミは二人分。

 そのまま俺たちは脱力して横倒しになった。

 なぜか修の腕は俺の腰に巻き付いているから、ピッタリ身体は重なったまま。

 べちょべちょの後片付けをしなきゃいけないのはわかっていた。

 でも寝不足、満腹からの射精!!

 はい、寝落ちです!!



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