転生皇子の新生活

本編 学園中等部編

252

　あの後、2人の攻防が続くと、突然ソフィアが頭を抑えながら蹲った。


「ゔぅ……。……ベニー、降参致します」


「勝者テオ！」


　ソフィアが降参すると言うとルーカスは笛子を吹くのを辞める。するとソフィアはゆっくりと立ち上がる。
　ルーカスはソフィアにすぐに寄り添った。


「大丈夫かい？」


「ええ、もう平気よ。でも悔しいわ。貴方は音の魔法しか使っていないのに負けちゃったわ。次は負けない！」


「うん。手は抜かない」


　2人は観戦していたクラスメイト達の元へ戻り、ルーカスはソフィアを座らせた。するとナタリーやティファニー達がソフィアの元へやってくる。




「……なんで皇女様は負けたんだ？」


「さあ……？」


　ルーカス達の試合を観戦していたマルセルとフランクが不思議そうにしている。するとそこへアレイルが近付いて説明をしてくれる。


「ルーカス殿下はずっと笛を吹き続けておられましたでしょう？　その少量のダメージが蓄積されて大きくなり精神的に大きなダメージを受けさせたのです」


「だとしたら音の魔法は攻撃には向かないのでしょうか？　先程皇女様も避けておられましたし」


「確かに音の魔法は主に回復に特化しておりますが、それだけでは御座いません。先程皆様も目にしましたように、音に魔力を乗せただけで蔦を枯れさせたり、人の精神へダメージを与えられます」


　その言葉を聞き、皆に少しの緊張感が走る。


「そして何より、ルーカス殿下は魔力を蔦や皇女様に向けて調整しておられましたが、本来音の魔法は、音に魔力を乗せるだけで発動出来るものなのです。つまり、魔力の乗った音を耳にしただけで、あるいは音に乗った魔力が接触するだけで、ダメージが御座います」


「……つまり、ルーカスはわざわざ手間の掛かる方法で戦ってたってことですか？　私達に影響が出ないように？」


「そういう事ですね。単に練習をされたかっただけなのかもしれませんが」


「両方でしょうね」


　アレイルの言葉にキャサリンがそう言うと、リヴァイもこくりと同意する様に頷いた。


　するとそこへ模擬戦を終えたルーカスが戻ってくる。


「リヴ、エイル、キャシー、向こうで自主練習をしたいから来てくれるかい？」


「「「畏まりました」」」


「それから、ベニーが今の模擬戦が終わったらフランクとギャレットの番だと言っていたよ」


「分かった。じゃあ私達も移動しようぜ」


　そう言うと、皆はそれぞれ自主練習をする組と、観戦する組、そして準備に行く組に別れた。




　ルーカスは広い所に移動すると、氷の魔法、基神力の訓練を始める。


　先ずは神力と魔力の違いを見つけるところからかな。


　ルーカスは集中をして自分の体内に流れる2つの力の違いを探し始めた。




「今日は炎の魔法の鍛錬ではないのかしら？」


「何か違う策を考えられたのか？」


　キャサリンとアレイルはルーカスの様子に少し不思議そうにそう言った。すると突然思い出した様にキャサリンがリヴァイにふっかけた。


「そう言えばリヴ、貴方ルーカス殿下に無理強いしていないわよね？」


「……なんの事だ」


　突然のキャサリンの言葉に、リヴァイは少しの心当たりがありながらも尋ね返した。


「ルーカス殿下と2人でエラスティスに行ったんでしょう？　陛下に報告があったとティファから聞いたわ。貴方に我慢させないようにと、ルーカス殿下は閨を提案されたんじゃないかしら？」


 　流石に長年ルーカスの友人兼側近として側にいたキャサリンはルーカスの考えうる事を的確に当てた。


「……教本を読んだ後殿下と湯浴みをして、殿下が準備の仕方を試された」


「本当にそれだけ？」


　その確信を持ったキャサリンの視線にリヴァイは少し顔を顰めた。


「……キスをして、処理して頂いた」


「……本当にルーカス殿下に手を出していなかったのね」


　キャサリンは目を見開きながらものすごく驚いている。


「陛下とのお約束は違えぬ」


「……リヴ、貴方はルーカス殿下のことに関すると、貴方が思っている程理性的ではないわ。貴方のその恋情は、正直執着と言える」


（確かに、私の想いは重たすぎる……。いつ理性を飛ばして殿下を傷付けてしまうのか……）


「だから、ルーカス殿下と2人で、ちゃんと話し合いなさい。そして貴方の欲を殿下に知ってもらう。その為に自分の欲を知る。これは貴方達2人の問題よ。どちらか片方が我慢をするのではいけないの」


　その言葉に、リヴァイはハッとする。リヴァイがルーカスに何をしたいのか、何をしてしまう可能性があるのかを、自分でも分かっていなかったのだ。


「殿下とはまた話をする」


「ええ。私達はルーカス殿下とリヴの事を応援しているわ。けど、ルーカス殿下を傷付けたら側近としても友人としても、絶対に許さないわよ」


　そのキャサリンの気迫に、リヴァイとルーカスの鍛錬を見守っていたアレイルは息を飲んだのだった。




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　昨日2話目出せず、すみませんm(_ _)m
　　今日の2話目と明日の投稿を休みます。また水曜日から再開しますので、よろしくお願いします(￣^￣ゞ