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本編 学園中等部編
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しおりを挟む「んん……」
「レイア、よせ……」
ルーカスは頬にベタっとした感覚を感じながら、少し不機嫌そうに目を開く。すると視界にレイアの姿が見え、レイアを認識すると少しハッとした。
「……レイア? どうしてここに……」
「おはようございます、殿下。レイアが早起きしたようで、お祖父様が一緒にいてやるようにと」
「そう、随分早起きだ、ね……、あれ?」
ルーカスは窓の外を見ながらそう言うと、太陽の傾き具合を見て不思議そうにする。
「……今は何時かな?」
「あと少しで巳の刻でございます……」
その言葉を聞き、ルーカスは目を疑った。いつも卯の刻に起きるルーカスはおよそ2刻程の寝坊をしている。
「今日が休みでよかったよ。レイア、後で沢山遊ぼうね。朝の支度だけしてくるね」
「行ってらっしゃいませ」
ルーカスは自室の方へ行き、レイアのヨダレでベタベタになった顔を洗ったりきがえをしたり、朝の準備をする。
(レイアがいた驚きで不機嫌が直られたな。頭痛が和らいだのか?)
その後ルーカスが準備から戻ってくると、ルーカスとリヴァイ、レイアの3人でルーカスの古琴や笛子を聞いたり、庭に行って遊んだりした。
翌日、ルーカスとリヴァイは学校へ行きルーカスはいつもの様に授業を受ける。今日は午後に魔法の授業がある為ルーカスは神力の鍛錬をしようと考えていた。
昼食を終え午後になると、ルーカス達は訓練所に移動する。
「よーし集まったなー。今日は魔術大会が近付いてきてるから模擬戦をやるぞー。休憩中は各自観戦するなり自主練するなり自由に使えー」
「模擬戦か」
「神り、、炎の魔法の練習は余りできないかもしれませんね。放課後寮の庭で少し練習されますか?」
「付き合ってもらえるかい?」
「勿論です」
「じゃあ最初はテオとルナ、お前らで見本見せろ。分かってると思うが結界は使うなよー」
イライアス先生がルーカスとソフィアの名を呼び、2人は前に出た。
魔術大会では皇族のみ使える結界と封印の魔法は使用が禁止されている。結界を使うと相手の魔法を防ぐことが出来る。その為公平を期す、そして皇族同士で当たった際の試合時間を長引かさない為に禁止されている。
2人が前に出ると、イライアス先生がルールの確認をする。
「ルールは魔術大会に則ったものとする。結界の魔法の使用禁止、接触禁止。今日は模擬戦だから相手に深い傷を負わせず、気絶させるのも却下だ。限界が来たと思ったら自分から降参しろ。無理して気絶しても笑い者になるだけだからなー。じゃあ準備しろー」
ルール説明を聞き終えると、ルーカスとソフィアは互いに距離をとる。そしてルーカスは亜空間から笛子を取り出した。
「あら、今日は音の魔法を使うのね。最近は炎の魔法を練習していると聞いたから実験するのかと思っていたわ」
「一昨日と昨日、レイアに笛と琴を弾いていて、最近はあまり弾けていなかったと思ってね」
「そうなのね。じゃあ私は聞き手になればいいのかしら?」
ソフィアはにっこり笑ってルーカスにそう言う。しかしその笑顔は少しわざとらしいものだった。
「そうなる気はサラサラないんでしょう?」
「ええ、勿論よ」
「君はこの広い帝国の皇女だからね。精神的には他の者より強いと思っているよ。姉さんなら、耐えられるよね?」
「さあ、どうかしらね。姉さんは精神がまだまだ未熟だから、手加減してくれないかしら、ルー」
(これがいつもあんだけ仲良い姉弟の会話かよ……)
「あー、じゃあ準備は良いかー? よーい、初め!」
イライアス先生の合図によりルーカスとソフィアの模擬戦が始まる。
先手を打ったのはソフィアだった。ソフィアは草の魔法で蔦をだし、ルーカスに襲いかからせた。
するとルーカスは笛子を口に咥え息を吹き込み、甲高い音色を響かせる。その嫌悪を感じさせる少し禍々しい曲に魔力を乗せてソフィアの出した蔦に向けると、蔦が見る見るうちに枯れて萎れていった。
そして少し魔力を弱めて音に乗せ、今度はソフィアの方に向ける。
ソフィアは魔力の流れを微かに感じ、ルーカスから思い切り距離を取り魔力を避けた。
魔力の察知も上手くなっているね。何より、今の身のこなしはすごく良かった。
今度はソフィアがルーカスに反撃する。音の魔法の影響を受けにくい光の魔法と水の魔法を使用する。
光の魔法でルーカスに目くらましをし、水の魔法で攻撃をする。しかしルーカスも魔力に気付きそれを避ける。
そんな風に2人の攻防が続いていった。
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