転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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本編 学園中等部編

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 それから長い年月が経ち、今からおよそ13年前、神界に1つの魂が戻ってきた。


「おい見ろ!! この魂、冬の神と同じ色をしてるぞ!! 冬の神が戻ってきたんだ!」


「嘘だろ……、誰か! 記録の神と生命の神を呼んできてくれ!!」


 イヴェールの魂と同じ色を持つ魂が神界に戻ってくる事で、神達は大慌てで皆を集めた。

 シュネー達やグラキエス達が来ると、イヴェールの魂を見つけた神達が彼らを呼んだ。


「氷雪の神! 来てみろ!」


 シュネーは有り得ないと思いながらも、少しの期待を持ってその魂に近付いた。そして魂を見るとシュネーは、今にも泣き出してしまいそうな表情になった。


 そこへ記録の神と生命の神がやって来た。彼らは入念に魂を観察し、イヴェールの魂の記録と照合する。


「間違いない…これは冬の神の魂だ!! 冬の神は消滅していなかったんだ!!」


 記録の神が嬉しそうにそう言うと、皆は歓喜した。シュラハート、スリアンヴォス、フロースの三神は、嬉しさの余りに泣き崩れてしまう。


「ですが、体は完全に消滅してしまった様で、魂が消滅しない様に人間の母体に入り込み、前世は人間として転生していた様です」


〘 神が人間として暮らせるのですか?〙


「異世界に転生していたようで、神力も魂も抑え込まれていたのでしょう。記憶も持ってないはずです」


「詳しくは魂に刻まれた記憶を見れば分かるだろう。冬の神には悪いが、皆で見てみるか」


 記録の神はそう言って神力を使い魂の記憶を皆に見せた。


 そこには黒髪黒目で、顔立ちは少し日本人顔に寄った姿の九条翠として生きるイヴェールの姿があった。そして皆は翠の人生を文字通り目の当たりにする。


「これは……」


「なんて酷いことを……」


 翠の人生は、イヴェールとあまり関わりの無かった他の神達や、イヴェールの消滅後新しく誕生した神達からしても、惨いものであった。


〈生命の神、どうにかしてイヴェールを神として転生させられないの? これはあまりにも……〉


 フロースはとても苦しそうな表情で生命の神に尋ねた。しかし生命の神は心苦しそうに首を振る。


「神としての体が完全に消滅した以上、下界の者の体を作り、魂を入れる他ないでしょう……」


〈そんな……〉


《……ならば、イヴェールの魂はナサニエル帝国に送って欲しい。あの国はイヴェールが最も大切にしていた国だ。神とも近い国だ》


 そのルミナスの提案に、皆は納得する。


〘確かに、それがイヴェールとっても最善ですね〙


⟬あの国には仮名があっただろう。皆で考えてやろう⟭


 そうしてイヴェールの魂が見つかると、皆で仮名を考え、イヴェールの魂をイヴェールと雰囲気の似たシャーロットのお腹に入れたのだった。




⟬これがイヴェールの過去だ⟭


 グラキエスはルーカスとリヴァイに全てを話した。するとフロースが少し怒ったように言う。


〈ちょっと、シュネーとの事まで話さなくても……〉


⟬だがもしも、テオがイヴェールの記憶を取り戻したとしたら、自分を責めるだろ……⟭


〈それはそうだけど……〉


 氷雪の神が僕をイヴェールの生まれ変わりだと思っているのならば、僕が恋人を連れてきた事を、どう思うだろうか……。


 ルーカスの表情はとても暗い。恐らく皆にもルーカスが何を思っているのかは伝わっているだろう。


《テオ、君の伴侶に呼ばせるアルシアンという名を考えたのは、シュネーなんだ》


「え……」


《テオがもし記憶を取り戻しても、心置きなく伴侶を作れる様にと。それにシュネー自身も…》


〔ルミナス、待ちなさい!〕


 ルミナスが何かを言いかけた時、突然シュネーがルーカス達の元へやってきてルミナスの言葉を止めた。後ろにはシュラハートとスリアンヴォスもいる。


〔それは私から言う約束ですよ〕


《シュネー。戦の神と勝利の女神も来たのか》


 ルミナスが彼らの名前を呼ぶと、ルーカスは少しだけ気まずそうな表情になった。それに気付いたシュネーは少しだけ困った表情をする。


〔テオ、一度に沢山の事柄を聞いて疲れたと思うけど、もう一つだけ聞いて欲しい〕


「……分かりました」


〔敬語はなくていいよ。名もシュネーと呼び捨ててくれ〕


 シュネーがそう言うとシュラハートとスリアンヴォスも同様にそう言った。ルーカスはこくりと頷き、シュネーの先の言葉を待つ。


〔貴方に、紹介したい者がいるんだ〕


 そう言うとシュネーは後ろで待っていた女神にルーカスの前へ来るように行った。


〔彼女は春の女神ヴェスナー。私の伴侶だよ〕


〔よろしくね、テオ。私の事もヴェスナーと呼んで敬語も無くして欲しいわ。駄目かな?〕


 ヴェスナーはとても柔らかい雰囲気を持つふわふわとした女神だった。
 二神の言葉を聞き、ルーカスは呆然としている。


 すると突然、ルーカスの隣に立っていたリヴァイが苦しそうに胸を抑えながら、膝から崩れ落ちた。


「っ、リヴ!」



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