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本編 学園中等部編
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しおりを挟む結局イヴェール達で話し合うだけでは、ニクスの考えている事など分かるはずもなく、あの後グラキエス達もイヴェールの部屋を後にし、自分の仕事に戻って行った。
騒動のあった日の夜。イヴェールの部屋にニクスが訪ねてきた。
<イヴェール、いるんだろ? ニクスだ、中に入れてくれ>
イヴェールは先程の発言により、ニクスに少しの不安を抱きながらも、部屋の扉を開き中へ招き入れた。
<悪いな夜遅くに>
「いや、構わないよ」
<それにしても、お前が俺を部屋に招き入れる程馬鹿だとはなぁ、くくっ>
「…………ニクス?」
ニクスは笑い声と、気味の悪い笑み浮かべながらそう言った。その態度にイヴェールは物凄く困惑する。
<あ~、ほんと馬鹿だよなぁ、お前ら。ちょっと良い子のふりすりゃ簡単に騙されるんだから>
「何を……」
<ちっ、んだよまだ分かんねぇのか? 俺がお前らみたいな奴らと仲良くするわけねえだろ。全部演技だよ、え、ん、ぎ。わかる?>
ニクスはいつもの態度とは全く違う、相手を馬鹿にしきった態度でイヴェールにそう言った。
<なあ、お前早くあの女口説いたって言えよ。そんで早く消滅しろ。そしたらグラキエスの野郎は絶対取り乱すだろうなぁ!? あのいつも余裕ですって言わんばかりの澄ました顔を、俺の手で歪ませたとなりゃそんな気持ちいいことはねえからな?>
どうやらニクスは、イヴェールに恨みがある訳ではなく、ただグラキエスの取り乱した姿を見たいだけのようだ。その事に気付いたイヴェールは、ニクスに向けて軽蔑の視線を送り怒りを表した。
<そんな怒んなよ? 確かにお前にとってグラキエスは弟みたいなもんだからなぁ? けど、俺だってお前の弟だろ? なぁ、イヴェールお兄ちゃん?>
「この上なく不愉快だよ、ニクス」
そう言って冷えきった瞳でニクスを見ながら、イヴェールは神力を込めた。
<まあ待てよ、本題はこっからなんだからさ。お前の大事にしてるナサニエルって国、近い内に滅ぶぞ?>
「っ!? あの国に何をする気だい」
イヴェールはニクスの言葉に驚きそして尋ねた。その様子を見てニクスは、またもやニタリと気味の悪い笑みを浮かべる。
<俺の管轄する国に戦争を仕掛けさせんだよ。それも2カ国にだ。その国には、両方俺の友達の戦の神と勝利の女神の加護が着いてる。既に戦の準備も整っている。戦況がどうなるかなんて簡単に分かるだろ?>
「望みはなんだい」
「話が早くて助かる。俺の望みはお前が消滅する事だ。くくく、あいつらの絶望に満ちた顔、想像するだけで愉快だ」
「却下する。僕は消滅する気もないし、ナサニエルを滅ぼさせる気もさらさらない。君が約束を破らない保証がどこにある。君を消滅させればいい」
イヴェールは冷めた表情で淡々とそう言った。
<俺を消滅させても無駄だ。俺の管轄する4カ国全てに、お前がどれだけ極悪非道な神なのか教えてやっているからな。そして俺がお前に危害を加えられているともな。俺が死ねば、戦と勝利の加護が着いた4カ国が、ナサニエルを襲いかかる。お前の管轄する他の国にも仕掛けるだろうなぁ?>
その言葉を聞きイヴェールは部屋の気温を一気に下げて、ニクスの首に氷柱を突き付けた。氷柱の先端が首に触れ、ニクスの赤い血が氷柱に伝う。部屋はその血すらも、一瞬で凍らせてしまう程の寒さである。
<お前に俺は殺せねぇよ、イヴェールお兄ちゃん>
ニクスは余裕そうな表情で笑って言う。するとイヴェールは、ニクスの首に突き付けている氷柱をより深く押し込んだ。ニクスの首には、腕の太さくらいの穴がぽっかりと空いた。
「ニクス、約束は守りなさい。その傷はルミナスにでも治してもらうと良い。彼らに全てを話してからね」
そう言うとイヴェールは神力を抑え部屋を出ていった。
<何が冷酷な神だ。ほんとに甘ぇやつだなお前は。だがこれでやっと、グラキエスの取り乱した姿が見れる。くくくっ>
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