転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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本編 学園中等部編

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 <おい、イヴェール。やっぱり素直に話すべきだ。確かに伴侶のいる者を口説くのは堕落に値する事だが、恋に落ちることは仕方がないことだろう? 不憫に思って見て見ぬふりをした俺にも責任がある>


 その言葉を聞いた周りの者達は、戸惑いながらコソコソと話し出す。


「それってつまり、冬の神があの女性を口説いたってことだよな……?」

「だって実際に冬の神と仲のいい雪の神が見たってことだろ?」

「それにあの素直な雪の神が嘘をつくか?」

「でもあの冬の神があの程度の女に恋に落ちるかしら?」

「そうよね。普通あの女性に魂を消滅させられる覚悟を決めれる?」


 神達はニクスの発言を信じる者と有り得ないと跳ね除ける者達の2つに別れた。


⟬ニクス、お前、何のつもりだ?⟭


〈そうよ。イヴェール程美しい神が、そんな性格も容姿も醜い醜女に恋する訳ないじゃない!〉


 グラキエスとフロースはニクスに向けて怒りを表した。


<グラキエス、フロース、これ以上は無理だ! 俺は黙っておけない……。どうせ隠したって無駄だと、お前らだって分かってるだろ?>


「それって氷の神達も見たってことか……?」


 ニクスはグラキエス達を説得する風にそう言い、周りが自分に有利になるよう動いた。
 すると痺れを斬らせたのか、魅了の神がイヴェールに怒声をあげ掴みかかろうとする。それをイヴェールは簡単に避けて見せた。


「私の神力が戦闘に弱いからと言って舐めるなよ!! 私は長老だ。お前の魂を今すぐ消滅させてやる!!」


 そう言うと魅了の神は神力とは別の強烈な力を放とうとする。それに抵抗するべく、イヴェールは魅了の神の力以上の神力を動かす。イヴェールの神力の漏れにより、部屋の中の気温はみるみる内に下がっていく。


 そして二神が力を発動し衝突する寸前、氷雪の神シュネーが二神よりも強い長老の力で力を消滅させた。


〔辺り一面を吹き飛ばすつもりですか?〕


「氷雪の神、貴様も冬の神の味方をするか!? ならば貴様諸共消滅させてくれるわ!」


 そう言ってまた長老の力を使おうとする魅了の神に、イヴェールは彼の頬に思い切り回し蹴りを食らわせた。
 その瞬間、この場にいる全員が一体何が起きたのか状況が飲み込めなくなった。


「シュネーに手を出さないでくれるかい。だいたい、確信もない事で騒ぎ立てないでくれるかな? 唯一無二の伴侶を取られて血が昇っているのは分かるけれど、先ずは真実の神に尋ねるなりして確証を得る事が優先でしょう。
 それから君、神相手に浮気する言動を起こすとは、神界の理を馬鹿にしているのかい?」


 イヴェールは怒りを浮かべた冷めた声と、軽蔑する目で魅了の神と女性を見ながらそう言った。

「冬の神が、他者の為に怒ってる……」

「意外と喋るんだな……」


〔イヴェール、私は大丈夫。それより真実の神だが、最近何故か神力が不安定らしい〕


「本当に申し訳ない……」


「神力が不安定……ルミナスか治癒の神では治せないかい?」


《試してみよう》


 イヴェールの提案に、ルミナスは即座に了承し神力を使った。その瞬間真実の神の周りは明るく光ったが、彼の神力は安定しなかった。次に治癒の神も神力を使ってみた。だが同様に効果は出なかったのだった。


《駄目みたいだな……》


「こんな重大の時に本当に申し訳ない……」


〔真実の神が謝る事ではないですよ。確信も持てませんからイヴェールの処分は一先ず保留で良いですか?〕


「まあそうだよな」

「ええ、もちろんよ」


 氷雪の神の問い掛けに、皆は納得した。どうやらいつも素直なニクスの言葉と、普段のイヴェールの態度から、皆は半信半疑の様子だ。

 そんな中魅了の神だけは今すぐに判決を下すと喚き散らしている。


〔彼を部屋に連れて行ってあげなさい。伴侶とは離しておくんだ〕


 他の神達は何とか魅了の神を宥めながら自室へと連れて行った。そして皆も自身のするべき事に戻った。

 イヴェールの部屋にはシュネー、グラキエス、フロース、ルミナスが残る。ニクスもそそくさと帰ったようだ。


⟬ニクスの先程のあれは何だ⟭


《ああ、あんなイヴェールを貶めるような発言を……》


〈いったいイヴェールがニクスに何をしたって言うの?〉


 三神は先程のニクスの言動に、怒りを隠すことなくそう発言した。


〔ニクスは私に、グラキエスの優秀さに嫉妬心を抱えていると相談してきたことがあります。その時に何か隠しているようで、それはイヴェールに対しても嫉妬心を抱えていたのかもしれません……〕


〈だからってあんな下手すればイヴェールを消滅させてしまう様な発言をするなんて!〉


《それにニクス自身にも危険だ》


「ニクスはいったい、何を考えているんだろうか。今まで深く彼の心を気にしなかった僕が悪いよ……」


⟬イヴェール……⟭


 イヴェールは少しだけ悲しそうな声色でそういったのだった。




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