転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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本編 学園中等部編

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 長老が決定してから数年が経った。この数年間、新しく長老になったシュネー達はものすごく忙しなく動いていた。


「最近ニクスに会わない」


⟬ああ、私も最近は避けられている気がする⟭


 イヴェールがニクスと最近会えていないと言うと、グラキエスが共感した。


〈きっとニクスも忙しくしているだけよ〉


⟬だと良いが……⟭


 そんな2人を慰めるようにフロースが言うと、イヴェールとグラキエスは納得したのかそれぞれ仕事に戻って行った。


〈ルミナスはどう思うかしら?〉


《我とフロースは最初から避けられていただろう》


〈そうね〉


 ルミナスとフロースは、イヴェールとニクスと初めて挨拶を交わした後日から、何故かニクスには避けられていた。


 ニクスはグラキエスに対する嫉妬心を隠している。イヴェールとグラキエスは無理に心の内を知ろうとする性格ではなかったため、違和感を感じても言及することは無かった。

 シュネーにはグラキエスの事は大切だが同時に嫉妬心も抱いており、どうすれば良いか分からないと相談していた。
 しかしシュネーも馬鹿ではない。それだけがニクスの心の内では無いことに気づいていた。だがシュネーも等しく言及はしない。

 その冷徹な性格がもたらした行動が、イヴェール達の大きな失態であった。




 あれからまた数年が経ち、イヴェールとグラキエスの二神とニクスの間には、目に見えるほど明らかな壁が生じていた。けれど会話が全く無くなったわけでも、喧嘩をする訳でもなかった。


 そんなある日、以前長老となった魅了の神が、下界から伴侶にしたい人間を連れて来たいと言う。

 神には死という概念が存在しない。そして伴侶として1人を決めると、それは絶対に覆ることなく、その者とは永遠に共に過ごす事になる。その相手が同じ神であろうが、下界の者であろうが例外ではない。
 もしも下界の者を伴侶にするのならば、自身の神力を使ってその相手の寿命を消すことが可能だ。それもたったの1度しか叶わない。


 その為神は安易に伴侶を決めることはしない。だが、魅了の神はその唯一の存在を決めたらしい。


「お主自身で決めたのならば誰も反対はせんじゃろうて」


 そうして魅了の神は、唯一無二の伴侶を神界へと連れて来た。
 その者は魅了の神の管轄する国で、国1番の美女と呼ばれていたそうだ。確かにその女性は美しい容姿を持っていた。しかしそれは、自分達の優れた容姿を見慣れた神達にとっては、平凡と言わざるを得ない程の美貌であった。

 だが魅了の神にとっては誰よりも、例え神界内でも上位の美しい容姿を持つ自身よりも、美しく目に写っていることだろう。
 魅了の神はその女性の寿命を無事に消すことに成功した。そして数百年近く、とても仲睦まじく幸せそうに過ごしたのだった。


 だがそれは、長い時を生きる神にとってはたったの一瞬の幸福に過ぎなかった。


 寿命が無くなった女性は、数千年が経つ頃には、日に日に横柄さが増していった。だが魅了の神にとっては最愛の人である為、彼はその横柄さをちょっとした我儘程度にしか思っていなかった。


 そんな矢先、事件は起きた。イヴェールは魅了の神の伴侶になんて露ほども興味がなく、今までその者と会うことなんて殆どなかった。それこそ彼女が神界に来てすぐの頃の神界内の案内の時くらいだろう。
 そんな中、イヴェールがフロースとルミナスの元へ向かう道中、彼女とばったり出くわしてしまう。その瞬間、彼女は魅了の神の伴侶でありながら、あろう事かイヴェールの事を口説き出したのだ。


「ねえ、貴方も神様よね? すごく綺麗で私好きになっちゃった。あの人にはそろそろ飽きてきちゃったのよね。ねえ、私を貴方の伴侶にしてくれない?」


 彼女は猫なで声でそう言いながらイヴェールに触れようとした。それをイヴェールはさっと避けると、穢れたものを見るような目で彼女を見を下ろした。そしてそのまま何も言わずに彼女の前を去っていった。


 その翌日、イヴェールが仕事をしていると、突然部屋に激怒した状態の魅了の神が押しかけてきた。


「おいイヴェール貴様! 一体どういうつもりだ!!」


「突然押しかけて何の用かな?」


 「なんの用だと!? 貴様が私の伴侶を誑かしたのだろう!!」


 魅了の神は怒り心頭の状態で声を荒らげてそう言った。するとその騒ぎを聞き付け皆がイヴェールの部屋へと何事かとやって来た。グラキエスやフロース達もやって来たようだ。


「彼を攻めないで! 貴方がいるにも関わらず、彼の甘い言葉と容姿に絆されてしまった私がいけないの!」


 すると突然魅了の神の伴侶が二神の間に割って入り、泣き落としを始めた。


「この者はいったい何を意味の分からないことを言っているんだい」


「まだしらばっくれる気か!!」


<おい、イヴェール。やっぱり素直に話すべきだ。確かに伴侶のいる者を口説くのは堕落に値する事だが、恋に落ちることは仕方がないことだろう? 不憫に思って見て見ぬふりをした俺にも責任がある>


 そう言って今度は、何故か雪の神であるニクスが、イヴェールに向けて憐れむ表情でそう言ったのだった。




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