転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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本編 学園中等部編

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「……もし仮に、僕が冬の神の生まれ変わりだったとして、何故君達は僕に優しく接するんだい? いくら仲が良かったとはいえ、冬の神は堕落させられる程の事をしたのでしょう?」


⟬違う、イヴェールは何も悪くない! イヴェールは、長老に濡れ衣を着せられ、友に裏切られたんだ……⟭


 グラキエスはとても悲しそうな表情で、必死にイヴェールを庇った。


 10万年以上も前の話。イヴェールには、ルミナス達の他にもう二神の友がいた。それは雪の神ニクスと氷雪の神シュネーである。ニクスと氷の神グラキエスは同じ時に誕生し、師であり親でもある氷雪の神シュネーによって兄弟のように育てられていた。

 そして冬、氷雪、雪、氷という似た観点のものを司る神である為、イヴェールもシュネーと共にグラキエスとニクスを可愛がっていた。


 今まで仲良く過ごしていたが、グラキエスとニクスの神力の訓練が始まると、二神の間に少し不穏な空気が流れ出した。


 イヴェールは二神よりももっと早くに誕生した為、神力は完全に習得して自身の仕事を既にこなす段階であった。その為イヴェールは偶にグラキエス達の訓練を見に行った。

 その訓練で事件は起きた。グラキエスの神力の扱いは神の中でも上位に位置するものだ。そしてそれは幼少の頃からも変わらない。神力を操る訓練を始めたばかりだったが、グラキエスとニクスには埋められぬ大差が着いてしまっていた。


 しかしニクスは何とかして追いつこうと努力を重ねた。それでも縮まるどころか広がっていく大差に、ニクスは時を重ねる毎に向上心がやがて嫉妬心へと変わってしまった。


 ニクスはその嫉妬心が悟られぬよう、上手く隠しイヴェールとグラキエスとはこれまで通りに過ごしていた。感情の冷めた冷徹なイヴェールとグラキエスに心の内を隠す事は、造作もない事だったようだ。


 それから年月が過ぎ、グラキエスとニクスが仕事をこなす様になった頃から、グラキエスはルミナスとフロースと共に過ごすことが増えた。そしてルミナスとフロースと仲良くなると、グラキエスは二神をイヴェールとニクスにも紹介する。


⟬ルミナスとフロースだ⟭


〈ちょっと! そんな紹介の仕方ある!?〉


⟬既にイヴェールもニクスも顔見知りだろ⟭


〈まったくもう! 私は花の女神フロースよ。貴方がイヴェールね。噂通り本当に美しいわね。ニクスもよろしくね〉


<ああ! よろしく頼む!>


 フロースがイヴェールとニクスに挨拶すると、ニクスがニカッと笑って挨拶を返す。


「僕は仕事が残っている。グラキエス、先に戻っていいかい」


⟬ああ⟭


 イヴェールは挨拶も早々に直ぐに仕事に戻って行った。


〈あら、もう帰っちゃったわ。残念〉


《あんなに美しいものがこの世に存在するのだな》


〈そうよね。いつかあの美しい顔で微笑んでくれないかしら〉


⟬無駄な望みだな⟭


 ルミナスとフロースは、イヴェールの美しい容姿に、少し見惚れてそう言った。するとグラキエスはフロースの望みを断ち切る様に無駄だと言ったのだった。


 あの日からフロースとルミナスは、休息の時間になるとグラキエスを連れてイヴェールの元へと訪ねに行った。


〈イヴェール、いる?〉


「何かあったのかい」


〈ううん、イヴェールと休息の時間を一緒に過ごしたいなと思って〉


 その言葉を聞きイヴェールは少し黙った後、無言で部屋の中へと招き入れた。するとイヴェールはそのまま先程読んでいた本を読み出した。


〈あれ、私達招き入れられたのよね……?〉


 その様子にフロースは戸惑ってグラキエスにそう言った。


⟬イヴェール、フロースの言う一緒にいたいは世間話がしたいという意味だ⟭


〈普通はそうでしょう!? 急に読書を始めるからびっくりしたわよ。一体今までどうやって一緒に過ごしてきたのよ……〉


《我も同感だ……》


 フロースとルミナスは少し呆れた様子でイヴェールとグラキエスにそう言った。


〈じゃあ、慣れてないみたいだから私から話を振らせてもらうわね。イヴェールはどうしてこの間私達にあってくれたの? 正直迷惑だったんじゃない?〉


 フロースは少し不安げに質問した。


「……グラキエスが紹介したいと言ったからだけど。グラキエスが紹介したいと言える程の者を拒絶する必要なんてないでしょう」


〈……グラキエスの事をとても信頼しているのね〉


「それは友人だからね」


 イヴェールは当たり前だと言わんばかりの表情でそう答えた。


〈イヴェールの友人になれる数は制限があるかしら? 私も立候補したいけれど良い?〉


《我も立候補させて欲しい》


「制限はないけれど、立候補に許可は必要ないでしょう」


〈……ふふ、それもそうね。じゃあ勝手に立候補させてもらうわね。これからもお話しましょう〉


《また遊びに来る》


 そう言うとフロースとルミナスはイヴェールの部屋を出ていった。


⟬フロースとルミナスを気に入ったようだな⟭


「僕は冬の神だから熱いものは苦手だ。けれど暖かいものは好きだよ。彼女達はとても暖かい」


⟬そうか。私やニクスとシュネーも暖かいか?⟭


「君達はとても冷たいよ。けれど大切な友人だ」


⟬ああ。私にとってもイヴェールは大事な友だ⟭




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