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本編 学園中等部編
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しおりを挟む馬車が霊園に到着すると、イグネイシャスは馬車で待機し、ルーカス達3人はシャーロットの墓前まで向かった。
墓前に到着すると、ルーカスは墓石を綺麗に磨く。そして亜空間に入れていた白い菊の花を取り出してお供えする。
「庭園で育てていた菊が大きく育ったんだ。庭園の手入れは庭師がしてくれているからとても綺麗に花が咲くんだよ」
墓石の準備ができると、レイアを抱いたリヴァイがルーカスの隣に立った。すると2人は真剣な表情でシャーロットへ報告を開始した。
「先日のパーティーで、リヴに告白をする事が出来た。そして無事恋人になったよ。僕は今世では死と言う道が絶たれている。だから生涯が想像も出来ない程長いものになった。これから様々な別れや辛い出来事があるだろうけど、その長い時間を、僕は楽しく過ごす為に、リヴと生きる事に決めたんだ」
「……私は、殿下に対しては臆病で、嫉妬や束縛をして殿下を傷付けてしまう事もあると思います。そして正直、私如きが殿下に対して恋情を抱いているなど、図々しいにも程があると思っております。側近として恥じるべきだと」
「リヴ……」
リヴァイは少し苦しそうな表情でそう言い、ルーカスも悲しそうな表情になる。しかしリヴァイは覚悟を決めたような表情で顔を上げた。
「それでも私は、押し殺せない程に殿下をお慕いしております。他の者ではなく、私自身で殿下に幸福を感じさせたいのです。その役目が私でなければ、狂ってしまいそうな程、この方が愛おしい。
殿下が私を選んで下さいました。ならば私はこの方の幸せに、全てをかけていたいのです。私のこれは、純愛ではないかと思います。しかしどうか、私の醜い感情を、殿下に向ける無礼をお許し下さい」
そう言ってリヴァイは墓石に向かい、深く頭を下げる。
「もし、母様に許して貰えなかったら、僕が許すよ。……違うか。僕はもう許しているからね。それに、きっと母様も許してくれるよ。君は誠実で真面目で、凄く立派だからね」
「殿下は私を買い被りすぎです」
「そうかな?」
ルーカスの励ましに、リヴァイは少し気持ちが軽くなったようで、表情が明るくなった。
「では、レイアのことを紹介しようか。まだ眠っているけどね」
レイアは馬車に乗ったあとからぐっすりと眠ったまま1度も起きていない。
「もうすぐ食事の時間ですから、1度起こしてしまいましょうか」
「そうだね。レイア、起きて?」
ルーカスがレイアを起こそうと体を揺すぶった。するとレイアの瞼が開く。
「レイア、起こしてごめんね。もうすぐミルクの時間だから……」
「…あぶ~」
寝起きでも滅多に不機嫌にならないレイアが少し機嫌が悪い。
「少し不機嫌ですね」
「おむつかな」
「向こうで変えましょうか」
「そうだね」
ルーカスとリヴァイは霊園から少し離れ、レイアのおむつを変えに行った。
レイアはおむつが新しい物になると、また機嫌が良くなってルーカスの髪の毛を食べようと掴む。
「レイア、離すんだ」
「う~、ばぁ~」
「ふふ、レイア、僕の母様に君を紹介させてね」
3人はもう一度シャーロットの墓前へ行くと、レイアをシャーロットに紹介する。
「この子がレイアだよ。今は6ヶ月で口に物を入れるのが癖みたい」
「私もよく指を咥えられます」
「ふふ、僕の角を食べようとした時は本当に驚いたよね」
ルーカスとリヴァイは思い出して微笑ましく笑いながら、レイアの日常を伝えた。
「殿下が学園に行っておられる間は、私の祖父が見てくださっております。その為週末は、殿下もムハンマドの別邸で過ごされています」
「だから庭園に長期休暇までは行けないんだ。それに週末以外レイアとも一緒に遊べないから、先程も早く長期休暇にならないかなとリヴと話していたところだよ」
そんな風にルーカス達はシャーロットに沢山近況報告やレイアの事を伝える。
「では、そろそろ帰るよ。また命日に、今年は父様達やおじいちゃん達も一緒に来るね」
そう言ってルーカスが最後に墓石に向けて手を合わせる。
「ガイを待たせているし戻ろうか」
「はい」
お墓参りを終了すると、ルーカス達3人はイグネイシャスの待つ馬車へと向かって、歩き出したのだった。
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