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本編 学園中等部編
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しおりを挟む馬車の準備が出来ると、イグネイシャスが部屋まで呼びにやって来た。イグネイシャスが御者をするそうで、ルーカス達が馬車に乗るとイグネイシャスは馬車を出発させた。
ルーカスとリヴァイは向かい合って座り、リヴァイは膝の上にレイアを座らせる。
そして少しの間馬車が走ると、レイアは座ったまま寝落ちしてしまった。
「リヴ、変わるよ」
そう言ってルーカスは立ち上がると、リヴァイの隣に向かう。リヴァイはルーカスに手を差し出した。そしてルーカスが隣に座ると、レイアを渡す。
「少し重くなったよね」
「そうですね」
「これから直ぐに大きくなるんだろうね。週末しか会えないし、早く長期休暇に入らないかな」
「殿下がご卒業なさる頃には、レイアも4歳ですので、勉学も始まっておりますね。お披露目会も直ぐです」
リヴァイはそう言いながらレイアの頭を撫でた。
「リヴはレイアの頭をよく撫でるよね」
「そう、でしょうか?」
ふふ、自覚なかったんだ。
ルーカスはリヴァイにもたれかかって体を預けた。
「僕の事も撫でてよ」
ルーカスはリヴァイの顔を覗き込むように視線を合わせてそう言う。それを聞き、リヴァイが優しくルーカスの頬を撫でて、2人の間には甘い空気が流れた。
すると突然、馬車がガタリと大きく揺れ停車した。
「っ!」
「何事だ!」
リヴァイはすぐ様立ち上がり腰に付けた剣に手をかけ、ルーカスはレイアを庇い亜空間から剣を取り出した。
「申し訳ございません! 馬が石を踏んでしまい興奮状態になりまして」
イグネイシャスの返事を聞き、ルーカスとリヴァイはほっと息を吐き安堵する。
シャーロットのお墓のある皇族の霊園は、帝都にある小さめの山の麓にある。その為余り整備されていない道を通って行くため、馬が石を踏んでしまったらしい。
そして2人は剣を戻すと、ルーカスがリヴァイにレイアを手渡し2人は馬車を降りる。
「馬を少し休ませてあげなさい。驚いたね。もう大丈夫だよ。少し休もうね」
そう言ってルーカスが馬を撫でると、馬は少し落ち着きを取り戻した。
「向こうに川が流れている。連れて行ってやれ」
「分かりました」
(凄い。馬が一気に落ち着いた。御二方の馬術が素晴らしいのは、きっと馬を大切になさるからなんだろうな)
イグネイシャスは馬と馬車を繋ぐ革を外し、馬を連れて川の方へと向かっていった。
「中で待とうか」
「はい」
それを見送ると、ルーカス達は馬車の中に戻りイグネイシャスが戻ってくるのを待つ。
「ねえリヴ、まだ先の話ではあるんだけど……」
「何でしょうか?」
「僕達、結婚式はあげるのかい?」
ルーカスの突然の話題に、リヴァイは驚きこれでもかと言うほど目を見開いた。
「……私は、そのつもりですが。気が乗りませんか……?」
ルーカスが言いにくそうに言った為、リヴァイは不安そうに尋ねた。
「えっ、違うよ、嬉しいからね? そうではなくて、結婚は僕が卒業してからにしようと言っていたでしょう?」
「はい…」
「だけどね、そうなると結婚式とレイアのお披露目会の時期が被ってしまうでしょう? だからその、レイアのお披露目会を先にしてあげたくて……」
(そんな事か。そんなに気になさる事などないだろうに)
「勿論構いませんよ。私も先にレイアを祝ってやりたいですから」
「本当? ありがとう」
リヴァイの返答を聞きルーカスは安堵し、嬉しそうにお礼を言った。
「貴族のお披露目会は分家の者達を集めて行いますが、よろしければ皆様もご招待致しますか? まだまだ先の話ではございますが」
リヴァイの言う皆様とは皇族やオスカー家の者達、つまりルーカスの家族の事だ。
「いいのかい?」
「勿論です。殿下の御家族は、私にとっても大切な方々ですから」
「うん、ありがとう!」
ルーカスは嬉しそうにお礼を言い、リヴァイにぎゅっと抱きついた。
ルーカス達がそんな会話をしていると、イグネイシャスが戻ってきたようで、馬車の準備をする。そして馬車が動き再出発し、霊園へと向かったのだった。
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