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本編 学園中等部編
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しおりを挟むリヴァイの部屋の天井を見上げたまま、ルーカスの瞳からはポロポロと雫が零れ落ちる。そして目覚めたルーカスの脳に、気を失った後の記憶が流れ込んで来た。
ああ、痛い……。こんなに心配してくれる皆が、僕を捨てるはずないだろうにな。…………それにしても、座薬か~。
ルーカスはほんの少しの羞恥心を心に宿し、隣でぐっすり眠っているリヴァイの方へ体を向ける。
リヴの寝顔、可愛い……。
ルーカスが手を伸ばしリヴァイの頬を撫でると、リヴァイの瞼が開く。
「おはよう。ごめんね、起こしたかな?」
「っ! 体調に問題はございませんか……!?」
目が覚めて第一声が僕の心配とはね。
「もう平気。心配かけてごめんね?」
「いえ、良かったです。………悪夢でも見られましたか?」
リヴァイはルーカスの顔に涙の後が残っていることに気付き、心配そうに尋ねた。
「いや、母様に会って、別れるのが悲しかっただけだよ。君が側にいるから、もう平気。昨日はありがとう」
「っ、いえ、、! 私がしたくてしたことですから……。シャーロット様へのご挨拶は、次の休日へと延期致しますか……?」
リヴァイはルーカスの体調を心配し、延期するかどうか尋ねた。
「今日行こう。体調は、僕の勝手な思い込みのせいだったみたいだから大丈夫」
「思い込み、ですか?」
「夢で、前世の母親に父様やリヴは僕を捨てると言われてね。きっと何処かでそう思っている自分がいて、その不安で体調を崩したらしい」
「私は……」
「大丈夫。君達が僕の事が大好きなのは、分かっているつもりだよ」
「殿下、私は貴方がとても大切で愛しております。殿下が不安になられた際は、何度でも伝えます」
「っ、ありがとう。僕も愛しているよ、リヴ」
そう言うとルーカスはリヴァイの額に口付けをする。その行動にリヴァイは少し呆気に取られた。それを見てルーカスは楽しそうに笑ってベッドをおりる。
「今日も鍛錬に行くんだよね。僕も一緒に行っていいかい?」
「……はい」
「ありがとう。着替えてくるね」
そう言ってルーカスは自室に繋がる扉を開けて朝の準備をしに行った。
1人残されたリヴァイは未だに少し呆然としているが、ルーカスの通常運転に頭を搔き自身も朝の支度をし始めたのであった。
支度が終わると、リヴァイが扉を叩いた。
「良いよ」
「メディソンを呼びましたので、先に診て貰いましょう」
「分かった」
ルーカスはリヴァイとメディソンを待つ。
「ねえリヴ、前世の事、誰に伝えたらいいと思う?」
「…………無理に伝えられる必要は御座いません」
「うん、ありがとう。けれど知っていて欲しいんだ。家族になるんだから。彼女達に、何も知らずに心配やもどかしい思いをさせたくないんだ」
ルーカスが困った様な表情でそう言うと、リヴァイは少し躊躇った後、誰に伝えると良いか教えてくれた。
ハドリーとグラシア、医務長のメディソン、それぞれの専属執事・侍女には伝えておくと安心だと。
「そうだね。内容は聞きたいものでもないから、簡単にだけ説明するよ。どんな影響があるのか、それから、今世での寿命の事も伝えなければならない。君を巻き込む……いや、2人の問題だからね」
ルーカスはリヴァイを巻き込んだという言葉を訂正する。それにリヴァイは少し嬉しく思い、そして諦めた様に言う。
「殿下、皆への報告は、私からしてもよろしいでしょうか?」
「構わないけれど、暗い話だから……」
「だからでございます。殿下にはいつでも明るいお気持ちでいて欲しいのです」
そう言って微笑むリヴァイに、ルーカスは少し拗ねたように言う。
「それなら僕だって君にはいつも笑っていて欲しいよ。……言っておくけれど、僕の方が君の事を大好きなんだから! 世界で2人きりになっても、君がいれば寂しさを感じないくらいに!」
「それを言うのでしたら、私は貴方を部屋に閉じ込めて、誰にも会えないようにしてしまいたい程、貴方を愛しております」
そう言ってリヴァイは、先程のお返しだと言わんばかりの笑みを浮かべ、ルーカスの頬に口付けを落とす。
するとルーカスは顔を真っ赤にして、何も言えなくなってしまう。
「どうか私にお任せ下さい」
「…………今のはずるいよ」
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今日は1話のみ投稿になります(*_ _))*゜
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