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本編 学園中等部編
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しおりを挟むゲイブが持ち場に戻った後、ルーカスは荷物を広げていく。
まだ殆ど何も無い部屋。けれど綺麗に掃除されている。ここ数日ではなく、以前から清潔に保たれていたんだろうね。
服を何着か置いて行ってもいいのかな。……あれ? そう言えばベッドが見当たらない。
ルーカスはリヴァイの部屋と繋がった扉を叩いた。
「リヴ、少しいいかい?」
「……はい」
ルーカスは扉を開き、隣室のリヴァイの部屋に入った。
「ねえ、リヴ、部屋にベッドが見当たらないんだけど、誰に言えばいいかな?」
ルーカスがそう尋ねると、リヴァイは顔を顰めて自身のベッドに目を向け、小さくため息をはいた。リヴァイのベッドは皇城のルーカスの自室にあるベッドと比べても劣らぬ程のサイズのものだった。
「申し訳ございません、殿下。母上方が急いでしまったようです」
「と言うと?」
「私のベッドは、いえ、公爵家の者であっても、1人用のベッドがこれ程大きい事は有り得ないのです……。以前まではこれの半分程の大きさでした……」
「それはつまり、僕と一緒に寝るようにということかい?」
「申し訳ございません……」
ナサニエルでは結婚が決まっている婚約者とは、同じ寝台を使い夜伽を行っても問題は無い。その為グラシアやハドリー達はレイアを養子にする事も決まっているのに気付き、2人のベッドを一緒にするよう指示を出していたようだ。
「リヴと一緒に寝られるんだね。ふふ、嬉しいなあ。沢山話をしようね」
ルーカスが嬉しそうに笑ってそう言うと、リヴァイの鼓動は速まった。
(この方は本当に……)
「あ、それと服を何着か置いて行っても構わないかな?」
「構いません。あそこは貴方の部屋ですから」
「っ、うん、ありがとう」
優しい笑みを零すリヴァイに、ルーカスは照れながらお礼を言うと、そそくさと部屋に戻って行った。
(……可愛らしい)
荷物を片付け終える頃、丁度フレデリックが帰って来たらしい。
コンコンコン
「殿下、夕食の準備が出来たそうです」
リヴァイがルーカスに食事の時間を知らせると、2人は呼びに来たイグネイシャスと共に食堂へ向かった。
「おかえりなさいませ、父上」
「ああ」
食堂には既にムハンマド家の者達皆が集まっていた。レイアはハドリーとグラシアが見ていてくれていた様で、彼も子供用の椅子に座っていた。先月順調に座れる様になっていて、最近は小さく可愛らしい歯が生えてき出している。
ルーカスとリヴァイがレイアを挟んで席に座ると、食事が運ばれて来て食事を始める。レイアも離乳食をイグネイシャスが食べさせる。
そして少し食べ進めると、ルーカスが口を開いた。
「イルゼ、ホリー、改めて言うね。僕とリヴの結婚とレイアを養子にする事を、許し欲しい」
「お祖母様、母上、お願い致します」
「あらまあ、お2人とも本当に律儀で。勿論異論は御座いませんよ」
「お義母様の言う通りです。テオ殿下、リヴをよろしくお願い致します」
2人の快い返答に、ルーカス達の挨拶はすぐ様終了し、皆は食事を続けた。
……これ以上食べると吐いてしまう。殆ど食べていないのに、今日はだめな日かな。
「ガイ、僕もレイアに食べさせても良いかな?」
ルーカスがレイアに離乳食を食べさせているイグネイシャスに尋ねると、彼は少し困惑しながら答える。
「勿論構いませんが、テオ殿下もお食事が……」
ルーカスの前にある食事は、いつもの様にルーカス用に少なめのものだった。しかし食事も後半に差し掛かっているにも関わらず、3分の1も減っていない。
「もう満腹なんだ」
「わ、かりました……」
「テオ殿下、お食事がお口に合いませんでしたか?」
「いや、とても美味しかったよ」
ルーカスがグラシアの問い掛けに答えるが、それでもグラシアは心配そうにする。
「では、お腹の調子が悪かったりは……」
「ううん、平気だよ。明日母様の所にも報告に行くから、恐らく緊張して食欲がないだけだと思うよ」
(今のは殿下の嘘だな。シャーロット様への報告をとても楽しみにしておられた様子。緊張など一切していないだろう……)
「そう、ですか……。何かございましたら直ぐに※メディソンを呼びますのでお教え下さいね」
※メディソンはムハンマド家の医務長で現在学園医をしているが、学園が休暇の為、別邸に戻って来ている。
「うん、ありがとう」
その後ルーカスは食事を終えてイグネイシャスから離乳食を貰うとレイアに食べさせたのだった。
ーーーーーーーーーー
全然間に合いませんでした(இдஇ`。)
今日は後2話出しますので是非読んでいってくださいm(_ _)m
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