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本編 学園中等部編
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しおりを挟むルーカスとリヴァイが何曲か続けてダンスを踊った後、エドワードやウィリアム達の元へ戻った。すると少し疲れた様子のアレイルとキャサリンが友人達と一緒にやって来た。
「2人共疲れているね」
「貴族達がなかなか離してくれず、ルーカス殿下やリヴの事を聞き出そうとしつこくて……」
「勿論、一切話しておりませんので、ご安心下さい」
「うん、そこは心配していないよ。ありがとう」
ルーカスとアレイル達が話をしていると、一緒に来たアリッサ達やクライド達が少し困惑しながらこちらを見ていた。
ルーカスはその視線に気付き4人に言った。
「アンダーソンやバリー達は久しぶりだね。元気だったかい?」
「あ、はい。俺とフレーゲルは家の仕事を手伝って過ごしています」
「私とカメリアは成人の儀の準備に取り掛かってます」
成人の儀とは20歳になる年の子が、貴族はエスポワの、平民は各地の神殿で国神ルミナスへ報告を行う催しのことだ。その後貴族達は皇城で大きなパーティを開くのが例年の慣習である。
「キャシーはやっぱりテオ殿下に贈呈をお願いするの?」
カメリアのその言葉にキャサリンはルーカスの方を伺うように見た。
贈呈とは、成人の証として貴族は皇城で行われるパーティーの際に皇帝から直々にブローチを贈られる事だ。しかし既に主人を決めた者や、皇族の側近達は、主に贈呈を任せる事が多い。
皇帝からの贈呈を断わり、他の者に任せるというのは、不敬ではないかと思うだろうが逆だ。成人の儀の贈呈は、主人に生涯の誓いを立てることと同義である。
その為成人前に、既に自身の覆すことの出来ない歩む道を決定している事は、この上ない誉なのだ。
「ルーカス殿下にお願いしてもよろしいでしょうか?」
キャサリンが尋ねると、ルーカスは真剣な表情で彼女を見据える。
「僕の側近だからという理由で頼んでいるのならば、父様から受け取りなさい。成人の儀で贈呈を主に望んだ者は、贈呈を担った者に対して生涯をかける義務がある。君の生涯をかける価値が、僕にあると本当に思うかい?」
ルーカスがキャサリンにそう言うと、キャサリンは迷うことなくすぐさまルーカスに跪いた。
「私は疾うに、ルーカス殿下に生涯を誓っております。私は貴方様の側近です。覚悟は出来ています」
「……分かった。キャシーへの贈呈を引き受ける。君の成人の儀に間に合ってよかったよ」
「ありがとうございます、ルーカス殿下」
ルーカスがそう言うと、キャサリンは嬉しそうにお礼を言った。するとルーカスは、リヴァイとアレイルが隣でうずうずしていることに気付いた。
「君達の意思は来年確認するから待ちなさい」
「「分かりました……」」
リヴァイとアレイルが少し残念そうに返事をすると、クライドとフレーゲルが大笑いをする。
「やっぱりテオ殿下はテオ殿下だな。人柄はそのままだ」
「まあ親しい人と関わる時は本当の殿下の方がしっくりくるけどな」
「そりゃ同感だ。以前は気遣いがあるのが伝わってたのに接し方がぶっきらぼうだったからな」
2人がそんな風に話していると、エドワードやウィリアム達、そして側近達がルーカス達の元へやってきた。
「おっクライドにフレーゲル、しばらくぶりだな~。元気だったか~?」
「お前は相変わらず元気そうだな、メーリン」
「アリッサ、カメリア、貴方達リヴやルーに変な事吹き込んでないでしょうね?」
「やだわ、ティファニー。当人達に知られたら名が廃るわよ」
「でも役立ちそうな情報は沢山あるから、ティファとキャシーには享受してあげるわ!」
皆は久方ぶりに同級生と会い、楽しそうに談笑を初め出した。その様子を見ていると、ルーカスの元へ兄弟達が集まってきた。
「ルーク、よく頑張ったね」
「おめでとう、ルーカス」
「ありがとう、ウィル兄さん、エド兄さん」
2人の祝福の言葉にルーカスは嬉しく思いお礼を言った。
「ルーが飛んでリヴァイの胸に飛び込んだ時は、本当に天使が舞い降りて来たみたいだったわ!」
「それに、お二人の口付けもとても素敵でした!!」
リリアンのその言葉に、ルーカスは驚きリヴァイの方を向いた。するとリヴァイは後ろめたそうに視線を逸らして言う。
「……申し訳ございません」
「まさか私や父様が見ている中で堂々とルークに口付けするとは思いもよらなかったよ。以前はルークからした後だったから許したけど、今回はそうはいかない」
ウィリアムはリヴァイを笑顔で叱ると、リヴァイはもう一度謝罪する。しかしそれはウィリアムの続きの言葉によって遮られる。
「ルークを泣かせたり傷付けたりしたら、許さないから。ちゃんと大事にしなさい。優しいルークは許すかもだけど、私は甘くないからね?」
「っ! 必ず大切に致します」
「ふふふ、ウィルお兄様は素直じゃないですね。ルーが想いを告げた時、あんなに嬉しそうにしてましたのに」
「本当です!」
ソフィアとリリアンがそう言うと、今度はウィリアムが後ろめたそうにしたのだった。
「ねぇ、ルー。私ダンスを踊りたいの」
「では、僕と1曲踊ってくれるかい?」
「ふふ、勿論よ。リヴァイ、ルーを少し借りますね」
ソフィアがそう言うと、ルーカスが手を差し出してダンスを誘った。ソフィアは楽しそうに笑って手を取り、2人はダンスを踊りに行ったのだった。
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