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本編 学園中等部編
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しおりを挟む「リヴァイ・ノア・ムハンマド! 高等部までは許さんぞ!! 約束は守らんか!!」
突然のアーサーの言葉に、リヴァイははっとする。そして他の呆然としていた貴族達も、漸く正気を取り戻す。
……高等部? 約束? なんの事だろう?
ルーカスはアーサーの言葉が理解出来ず、不思議そうに頭を悩ませる。するとリヴァイがルーカスを下ろしてアーサーに向けて口を開いた。
「……申し訳ございません、陛下」
「ルーカスが可愛くてキスを送りたいのは分かるが、自重しろ」
(((……気持ちはわかるのね)))
アーサーの言葉に会場にいる皆は全員一致でそう思ったのだった。
「父様、約束とか、高等部までとかはどういう事なんだい?」
その問いかけに、アーサーは少しぎくりとして目を逸らした。するとジェシカが変わりに答える
「ふふ、女性も多いからパーティーの後で話しましょうか。人に聞かせる話でもないわ。ルーカスはせっかく想いを告げれたのだから、ノア君とダンスを踊るのはどうかしら? エドとティファちゃんもまだ踊っていないでしょう?」
そう言うとジェシカは、楽士達に指示を出してダンス用の曲を演奏させた。
「母様もそう言っている。皆も踊ると良い。ティファ、私と踊ってくれ」
「ええ、もちろんよ」
ティファニーがエドワードの手をとると、2人は会場の中央に行き、ダンスを踊る。そして皆も後に続き続々と踊り出す。
すると突然、リヴァイがルーカスに向けて跪き、頭を垂れた。
「申し訳ございません、殿下」
その光景に、周りにいた貴族は驚き不思議そうにする。それはそうだろう。想いを告げあって恋人になったのに、その相手に対して跪き頭を垂れているのだ。
しかしリヴァイは、恋人になろうがルーカスに想われていようが、やはりルーカスの側近なのだ。
「それは何に対する謝罪かな?」
「殿下に関することで、陛下と約束を交わしたにも関わらず、私情を挟みお伝えしなかったこと、そして約束を破った事にです。殿下は、私がお伝えしなかった事を、不思議に思われたでしょう」
「だから謝罪をしたと?」
「はい」
「はあ、まったく君は……。リヴ、少し向こうで話をしようか。ほら、立って?」
ルーカスはリヴァイを立ち上がらせると、人のいない会場の隅に行きリヴァイに向き合った。
「一先ず、僕、怒っていないからね? その上で聞くけれど、私情とはなんだい?」
「それは……、殿下に私の醜い欲を知られたくないというものです……」
「君の欲が醜いはずがないのに。それに、君だけが我慢することでもないでしょう?」
「しかし私は、殿下に嫌われたくございません。貴方を怖がらせて、拒絶されるのが怖いのです。そして貴方を傷付けることが何よりも怖い……」
リヴァイは顔を歪ませて苦しそうにそう言った。
「ねえリヴ、もう忘れてしまったのかい? 僕は君が大好きなんだよ。愛おしくて仕方がないんだ。君とキスをしても嬉しさ以外感じなかった。そんな僕が、君を拒絶すると思うかい?
君の欲も、感情も、そろそろ許してあげてよ」
リヴァイは何と答えれば良いのか分からず、黙り込んでしまう。
まあ、はい、そうしますとは直ぐに言えないよね。
「ねえ、リヴ、1度肌を重ねてみようよ」
「っ!?」
ルーカスの突然の言葉に、リヴァイは心底驚いた。そして周りを気にするように見渡した。
「大丈夫だよ、結界を張っているから。僕は君を拒絶しないと分かれば、君も少しは楽になるのではないかな?」
「……しかしそれでは、陛下とのお約束を違えることに」
「平気だよ。学園の寮部屋ならばれないから」
「っ、いけません。私が自身の気持ちや欲に罪悪感を抱かぬ様努力致します。ですのでどうか、陛下とのお約束を守らせて下さい……」
リヴァイはルーカスに頭を下げてお願いする。
「はあ、どうしてそんなに真面目なのだろうね。分かったよ。その代わり、悩んだ時は相談して無理はしないこと! いいね?」
「ありがとうございます」
「ではおしまい! 僕のことをダンスに誘ってくれるかい? それとも、僕が誘おうか?」
「私は女性パートを踊れませんので、ご容赦ください」
「ならば今度教えてあげるよ。僕にも君をリードさせてね」
「畏まりました。殿下、私と踊って下さいますか?」
リヴァイが手を差し出すと、ルーカスが受け取りそのまま2人は広場の中央付近へと向かい、ダンスを始めたのだった。
リヴが理性なんか無くして、ぐちゃぐちゃになってしまえばいいのに。そうしたら、僕に対する気持ちで罪悪感なんて抱かないはず。
……いや、リヴならその後に行動に対して罪悪感を抱いてしまうか。まったく、君はどうすれば自身を許すことが出来るのだろう。
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