転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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本編 学園中等部編

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 そしてリヴァイはまたもや貴族達に取り囲まれてしまう。今度は異様にルーカスを褒めちぎり、素晴らしいお方だとリヴァイに媚びを売ってくる。

 リヴァイは漸くルーカスの元へ戻れると思っていたのにこの有様で、段々と嫌気がさしてくる。


「退け。私は殿下の元へ行く」


 そう言ってリヴァイは移動しようとした時、伯爵家当主の男が娘を連れてリヴァイを引き止めた。


「おやおや、ノア様。せっかくの家族水入らずの空間を壊してしまってはいけません。もう少し私共と話をしましょうではございませんか」


 男はルーカス達のいる方へと視線を向けて言った。視線の先には、確かに皇子、皇女、そしてティファニーの姿があった。


「ならば友の所へ向かう。道を開けろ」


「そんな冷たい事をおっしゃいますな。皆ノア様とお話したいのですよ」


 そう言って食い下がる伯爵や女性達に、リヴァイは当分食い止められるのであった。




◇ ◇ ◇


 貴族達がアーサーの元へ移動した後、ルーカスの元へ、エドワード、ウィリアム、ソフィア、リリアン、ティファニーがやってくる。


「大丈夫かい、ルーク。貴族達の挨拶がようやく終わってね」


「ウィル兄さん、平気。父様の方へ押し付けてしまったけどね」


「では皇子、私はこれで失礼致します」


「うん。一緒にいてくれてありがとう」


 ルーカスに挨拶をすると、コックス男爵は家族や他の貴族の所へと向かって行った。


「エド兄さん、ティファニー、婚約おめでとう」


「「ありがとう」」


 ルーカスが祝福の言葉を伝えると、2人は少し気恥ずかしそうにしながら笑ってお礼を言った。


 ふふ、2人とも本当に嬉しそうだね。


「ルーカス、君はいいのか?」


「ん?」


 エドワードに突然問い掛けられ、ルーカスは思わず聞き返した。


「私はもう、皇太子になったぞ。君はいいのか?」


「っ! 良いのかい? 今は君達の立太子と婚約のパーティー中だよ?」


 もう伝えてきても構わないの? 全て終わった? ああ、リヴの元へ行きたい……!


「ふっ、伝える前から溢れているな。早く行ってこい」


「ええ、あの子も待っているわ」


「エド兄さん、ティファニー、ありがとう!」


 ルーカスは心の底から嬉しそうな笑みで2人にお礼を言うと、リヴァイのいる方へ急いで向かった。


「もう少し私達と話してからでも良かったと思います……」


「ふふ、あまり拗ねるな、ウィリアム」


「……拗ねておりません」





 ルーカスは急いでリヴァイの元へ向かう。しかしリヴァイは貴族達に完全に囲まれており、人が通れる隙間などない。


 どうしよう……、リヴの顔を見たい。抱きしめたい。……飛んでいってもいいかな?


 ルーカスははやる気持ちを抑えながら、体内に仕舞われている翼をばさりと広げた。そして人の上を飛び、リヴァイを探す。


 いた!


「リヴ!!」


「殿下?」


 ルーカスが大きな声で名前を呼ぶと、リヴァイは声の方へと視線を向けた。するとルーカスはリヴァイの胸へと文字通り飛んでいって彼の首と頭に腕を回し強く抱き締める。翼までもリヴァイを抱き締めるように彼にピッタリとくっ付いている。
 リヴァイもルーカスを抱き留めて慌てて尋ねる。


「どうされ……」


「リヴ、好きだよ。大好き、愛してる! ねえ、僕のものになってよ」


 やっと言えた。リヴ、大好きだよ。


 ルーカスがリヴァイを見下ろすように顔を向けると、ルーカスの瞳からは、感情が昂りすぎたのか、自然と涙がこぼれ落ち、リヴァイの頬へと降り注ぐ。


(殿下が、泣いておられるのか。それも、嬉しそうに……)


 リヴァイはルーカスの涙を拭うように目元に触れると、そのまま後頭部に手を回し、ルーカスの顔を自分の方へと引き寄せた。
 そしてリヴァイは、ルーカスの唇へと口付けをする。

 その光景を見ている貴族達は、一体何が起きたのか、理解が追いつかずにただただ放心状態となる。


「っ、リヴ……」


「……殿下、心の底から、貴方をお慕いしております。どうか、私のものになって下さい」


 唇が離れると、リヴァイは熱のこもった視線をルーカスに向けてそう言った。するとルーカスはもう一度リヴァイをぎゅっと抱きしめて言う。


「うん。リヴのものにして。僕は君のもので、君は僕のものだよ」


「はい……とても、光栄にございます。殿下が一瞬、天使に見えました。やはり貴方は、このまま連れ去ってしまいたいほどに美しいお方です」


 リヴァイは心底嬉しそうな表情でルーカスに言った。その言葉にルーカスは少し恥ずかしそうに耳を赤らめる。


「リヴァイ・ノア・ムハンマド! 高等部までは許さんぞ!! 約束は守らんか!!」


 すると突然アーサーの声が響き、リヴァイははっとしたのだった。





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