転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

文字の大きさ
上 下
343 / 410
本編 学園中等部編

196

しおりを挟む


 ルーカスが翼と角を仕舞い席へ戻ると、アーサーがこれまでのルーカスの行動の説明をした。ルーカスの口調が固かったり、冷えきった雰囲気を纏っていたのは、謀反を企てる者を自身に引きつけるためだと話した。

 すると反対派の大臣が手を挙げて発言する。


「しかし、第3皇子殿下の口調や言動に対する噂が流れ出したのは、殿下がまだ3歳の頃だと記憶しておりますが」


「確かに、3歳の幼子が大人にも知られずにあれだけの演技を出来るとは考えにくいのですが……」


 皆は、確かにそうだと、大臣達の発言に納得し賛同する。


「ああ。城で教育を受けていたとしても無理な話だろうな」


「では、いったい……」


 皆は、先程トレヴァーが言った、アーサー達がルーカスを庇っているという言葉が頭に浮かんだ。そして少し疑うようにルーカスとアーサーを交互に見る。

 それは以前からルーカスの素を知っているマテウスや、ルーカスに忠誠を誓ったプレストン伯爵も不思議に思っていた様で、アーサーの次の言葉を静かに待っている。

 するとアーサーは、反対派の大臣であるフォレスター伯爵に向けて問うた。


「お前は覚え子という言葉を知っているか?」


「覚え子、ですか? 確か前世の記憶を持って生まれた者のことだと……まさか、、」


「そうだ。ルーカスはここではない世界の、日本という国で生きていたらしい」


 こうなる事が予想されていた為、ルーカスは前世の記憶がある覚え子だということを皆に伝える事にした。それをアーサーにも伝えていた。


「ほんな、ごどが、、あひへる訳が、ない……!! づぐりはなしだ、!」


  トレヴァーは焼け爛れた口で話しずらそうにしながらそう言った。臣下達も、それは同じ思いのようだ。


「ルーカスがこの事を教えてくれたのは、シャーロットの生前の頃の話だ。ルーカスは、前世の生前の記憶から、今世の現在までの記憶を、全て覚えている程記憶力がずばぬけている。疑うのならばこの子にシャーロットの姿絵を描かせよう」


 アーサーはすぐにフレデリックに紙とペンを用意させるように言った。するとマテウスが口を開いた。


「アーサー、第3皇子殿下は絵を描けるのか?」


 それは最もな問い掛けだろう。ルーカスがシャーロットの姿を覚えていたとしても、それを描けるかどうかは別の話だ。


「安心しろ。ルーカスに出来ないことは無い」


 ((……親バカだ!))


 マテウスは不安に思いフレデリックの方に視線をやった。するとフレデリックは肯定するように深く頷いた。

 そしてルーカスが用意された紙とペンで、シャーロットの姿を脳内で見ながら写し出した。


 (あー、こりゃアーサーが絶賛するのも納得だな)


 ルーカスはあっと言う間にシャーロットの姿絵を完成させると、アーサーに絵を手渡した。そしてアーサーが皆に見えるようにそれを差し出すと、それを見て皆は言葉を失った。


「はっ、じょうぞうがの、真似でも、したんだ、、ろ」


 トレヴァーはそう言いながらルーカスの描いた姿絵に目を向けると、顔色が一気に青ざめた。


 そこに書かれていたのは、肖像画にあるような、ふっくらとして健康的な姿のシャーロットではなく、頬が痩せこけ顔色も悪く、床に伏せっている時のシャーロットだった。

 しかしそんな状態でもルーカスを慈しむような瞳と表情のシャーロットが描かれており、皆はこれ以上アーサーの言葉を否定しようと思う気さえ起きなかった。


「ごめん、、もっと、元気な姿を描けば良か、、ぐっ……!!」


「ルーカス……!!」
「っ、殿下!!」


 急激に心が沈み、悲しそうな瞳でそう言おうとした時、ルーカスが急に胸を抑えて苦しみ出した。アーサーとリヴァイは慌ててルーカスに近付いた。


 ああ、これシュオールだ。良かった、魔力封じをしていなければ、近くにいるリヴやクラーク公爵、フレデリックの事を、巻き込み傷つけてしまうところだった……。そうなったら……ゾクッ!!


 シュオールにより活性化した魔力が、魔力封じによって行き場を失い、魔力が胸の辺りでぐるぐると激しく動き回っているようだ。その為ルーカスは突然の衝撃に胸が痛んでいる。
 しかし怪我をさせなくて済んだと安堵したのもつかの間、ルーカスはリヴァイやマテウス、フレデリック達が血を流して倒れている姿を思い浮かべてしまった。すると急激にルーカスの心は冷たい水の中に沈むように不安が心を支配する。


 ルーカスは慌てて近くにいたリヴァイとアーサーに手を伸ばし、両腕で思い切り抱きついた。


「ルーカス?」


「置いていかないで……、、」




しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...