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本編 学園中等部編
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しおりを挟むルーカスがリヴァイ達と教室へ行くと、いつもの様にヨハンやフランク達がやって来た。
「ルーカス、おはよう」
「おはようございます、ルーカス様。……体調が優れませんか?」
「確かに顔色悪いな」
ヨハンが尋ねるとマルセルも同意する。
「いや、ただの寝不足だ。問題ない」
ヨハン達は心配そうな表情ではあるが納得した様だ。
「リヴ、私は昼休憩に仮眠する。昼食は交代で取ってくれ」
「殿下の昼食はどうなさるのですか?」
「プレストンに貰った携帯食が残っている」
ルーカスの言葉にリヴァイ、アレイル、キャサリン、ヨハンの4人は疑わしげにルーカスを見た。
「本当だ。昼食はしっかり取る」
「……分かりました。昼休憩は交代で昼食を取る事にします」
リヴァイは仕方なくそう言うと、側近達は教室の後ろの方へ行き待機する。
そして少しするとイライアス先生がやってきて授業が開始された。
そして昼休憩前の授業中。ルーカス達のクラスはガラシア語の授業を受けている。
イライアス先生が前で教鞭を執っている。しかしルーカスは猛烈に襲い来る眠気と戦っていた。
眠い……。流石に1晩中シューに乗っての移動は翌日への影響が凄いね。ガラシア語はアルフィーの授業で完璧に出来るから……寝ていいかな?
ルーカスは極限まで迫る眠気に身を任せ、綺麗に保たれた姿勢を少し崩してそのまま寝落ちたのだった。
そして授業が終わり昼休憩に入った。イライアス先生が教室を出ていくとルーカスの側に側近達と友人達が集まって来た。
「ルーカス様は寝ていますね」
「早くないか?」
「授業の後半からもう寝ておられた」
フランクの言葉にリヴァイが応えると皆は少し苦笑いをする。
「真面目な方ですから、授業中とかは起きていそうなのに」
「ルーカス殿下はガラシア語、と言うよりナサニエルの周辺国の言語は全て話せますからね。他にも離れた国であっても比較的大きい国の言語も習得されてますし」
「授業を聞いていてもいつも暇そうだものね。問題なんて直ぐに解いているわ。それでも毎度集中しておられるのだから、本当に凄い方よ」
アレイルとキャサリンの言葉に皆は心底驚いている。
「リヴだったら授業をさぼって剣を振っているんじゃないかしら」
「ルーカス殿下が入学される前はよく授業に出ずに剣術の鍛錬をしていたからな」
「そう言えば、私達が初等部の時はよく噂になっておられましたね」
「そういやそうだな」
リヴァイは少しだけ罰の悪そうな表情をした。
「……早く昼食を取ってこい。殿下は私が護衛しておく……」
「逃げたな」
「逃げられましたね」
アレイルとフランクがそう言うと、リヴァイは皆に早く行ってこいと言って教室から追い出したのだった。
皆が交代で昼食を済まし教室へ戻ってきた。ルーカスは昼休憩が終わるギリギリの今もぐっすりと眠っている。
「さっきから微動だにしないな。どんだけ寝相良いんだ?」
「殿下を起こした方が良い」
「そうですね。午後は実技の授業でもうすぐ移動ですから」
「しかし、どうやって起こすかだな」
「ああ」
アレイルの言葉に、リヴァイが返答したが、他の皆は意味が分からず不思議そうにする。
「普通に起こすのではいけないんですか?」
「殿下は寝起きの機嫌が悪い」
「……下手な起こし方をすれば本気で殺気を飛ばされるくらいです」
「ルーカス殿下に本気の殺気なんて向けられたら……」
アレイルが思い出して青い顔をしながらそう言うと、キャサリンも顔色を少し青ざめながら言った。
その様子にヨハンやフランク達が息を飲んでいると、教室にイライアス先生がやってきた。
「なんだ? テオのやつまだ寝てんのかー? 早く起こしてやれよ」
「っ、待ってくださ……!」
アレイルの制止も虚しく、イライアス先生がルーカスに手を伸ばすと、ルーカスが起きて思い切り手を払い除け、物凄い殺気を出しながらイライアス先生を睨み付けた。
イライアス先生だけでなく、その場にいた全員の表情が青ざめ背筋が凍る。
するとルーカスは頭を抑えて少し呻いた。
「申し訳ございません、殿下。昼休憩がもうすぐ終了致しますので……」
「……顔を洗ってくる」
「っ、お供を……!」
「1人で良い」
そう言うとルーカスは教室を出て行った。
「イライアス先生、大丈夫ですか?」
「……本気で殺されるかと思った。いったいなんなんだ……?」
「ルーカス殿下は寝起きに寝ている間の記憶が脳に流れてくる為、起きて強烈な頭痛がして半刻程は機嫌が本当に最悪なんです。私もリヴが不在で同室で寝た際、朝起きるととても不機嫌なルーカス殿下がいらして……」
基本的にはいつもルーカスの方が起きるのが早いから良いが、1度だけアレイルと同じ部屋で寝ている時にルーカスが少し寝過ごした事があった。
その時にアレイルがルーカスを起こすと、今よりもっと機嫌の悪いルーカスに思い切り殺気を向けられ睨まれたのだった。
「あの時は生きた心地がしませんでした……」
「……おっかねぇな。まぁ、テオが戻って来たら訓練所に移動してこいよー?」
そう言ってイライアス先生は教室を出ていった。そして少しするとルーカスが戻ってきて携帯食を食べると、皆で訓練所に移動し実技の授業が開始した。しかしルーカスの機嫌は依然悪いままで、直るまでに授業一限分かかった。
機嫌の悪いまま剣を振るうルーカスの姿に、皆は悪寒を感じながら授業を受けたのだった。
そして漸く機嫌が直ると、ルーカスは皆に申し訳なさそうに謝ったのだった。
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