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本編 学園中等部編
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しおりを挟むルーカスが暗い表情でいると、ウィリアムが明るい声で言う。
「じゃあ、聞きたいことも聞いたし、お茶でも飲もうか。クッキーもあるよ」
そう言うとウィリアムはお茶を入れに行く。それをルーカスが追いかけて言う。
「僕も手伝うよ」
「ありがとう。もうすぐセドも出てくるだろうから、カップを3つ用意してくれるかい。そこの棚に入っているから」
「分かった」
2人がお茶の準備をして少し待つと、セドリックが浴室から出てきた。
「話し合いはもういいのかい?」
「もう終わったよ。少し休憩したら、ルークを部屋まで送ってきて」
「ああ、分かった。ルーとこうやってゆっくり話すのも久しぶりだね。オリエンテーションは楽しかった?」
セドリックはルーカスに質問しながら、ウィリアムの隣のソファに座った。
「うん。準備は大変だったけれど、沢山遊んで楽しかったよ。セドリックのクラスも、ウィル兄さんのクラスも凄く楽しかった」
「それは頑張って準備したかいがあったね。私も久しぶりにルーの女装姿を見れて楽しかったよ」
セドリックが楽しそうにそう言うと、ウィリアムも頷いた。
2人とも午前の間に、ルーカス達の教室へ来ていたのだ。因みにエドワード達も来ていた。
「明日は観劇とコンテストだね。ソフィからルークの晴れ舞台を間近で見れると自慢されたよ」
「ふふふ、それでコンテストに出ることが決まった時、姉さんは楽しそうだったんだね」
「ソフィらしいね」
それを聞き、3人は楽しそうに笑った。
「では、時間も遅いからそろそろ部屋に戻るよ。セドリック、送ってくれるかい」
「それは勿論送るけど、もう帰るのかい?」
「湯浴みをしていないし、僕とリヴ、亥の刻正刻には明かりを消して寝ているからね」
もうすぐ亥の刻に入るため、寝るのが遅くなってしまうのだ。
「亥の刻正刻とは、2人とも健康的だね。ルー達は朝も早いのだよね?」
「そうだね。卯の刻に起きるよ」
ルーカスがそう言うとセドリックはすごく驚いた。
「じゃあ早く戻らないと起きれなくなるね。ウィル、送って来るから少し待っていて。直ぐに戻って来るよ」
「分かった。ルークをお願い」
セドリックはそれを聞くと、ルーカスと一緒に部屋を出た。
「急ごうか、セドリック。兄さんを1人で残すのは不安でしょ?」
ルーカスがセドリックに尋ねると、セドリックは少しだけ驚いた。
「ふふ、君達も、しっかりと主と側近だね」
その言葉にセドリックは少し不思議そうにする。
「前にメーリン達に僕とリヴ達は、主と側近という感じが強いと言われたんだよ。メーリン達は友人なのにと。セドリック達も仲が良くて気さくに接するけれど、やはり主と側近なんだと思って」
ルーカスが微笑んでそう言うと、セドリックは少し照れて言う。
「まぁ確かに、私達の所も友人寄りではあるけど、ウィルは私達にとって護るべき存在だからね」
セドリックの言葉にルーカスは嬉しく思う。そして少しすると、ルーカスの部屋に着いた。
「ありがとう、セドリック。明日も頑張ろうね」
「そうだね。じゃあおやすみ、ルー」
「おやすみ」
そう言ってセドリックは自分の部屋に向かっていった。
そしてルーカスは扉を開けて部屋に入る。リヴァイは就寝の準備を終えて、この間ルーカスがおすすめした本を読んでいた。
「……ただいま、リヴ」
「お帰りなさいませ」
「直ぐに湯浴みをしてくるね。もう寝るんだったら先に明かりを消していて構わないよ」
「……分かりました。おやすみなさいませ」
ルーカスはそのまま着替えを持って浴室へ向かった。
(……質問の時間もないのか。あれからずっと、殿下との間に距離がある。もう、私には興味がなくなったのだろうな……。ただそれだけで、気がおかしくなりそうだ)
リヴァイはそんな風に思いながら、明かりを消して眠りについた。
ルーカスは服を脱いで浴室に入ると、頭や体を洗った。そして浴槽に入ると、お湯がまるで溜めたての様に暖かいことに気付く。
僕が帰るのを入らずに待っていた……? それとも湯を張り直してくれたのかな……? どちらにしても、本当にリヴは優しいなあ。
ルーカスはその後暫く暖かいお湯に浸かり、湯浴みを終えた。そして服を着て部屋に戻ると、明かりが消えている為、リヴァイが寝ている事に気付いた。
ルーカスは起こさないようにそっとリヴァイに近付いた。
「((ボソッ…お湯、ありがとう。凄く温まったよ」
ルーカスはそう言ってから、自分のベッドに入っていき、少しすると眠りについたのだった。
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