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本編 学園中等部編
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しおりを挟むあれから1週間、ルーカスは寝る前に薬を飲んで、しっかりと睡眠が取れる様になった。
そして今週からは授業もなくなり生徒会も休みになり、完全にオリエンテーションに向けての準備期間に入った。
ルーカス達は朝から準備を行っている。
「ルー、少しいいかしら? コンテストでの動きを確認するわ」
「分かりました」
ルーカスはソフィアに呼ばれる。
ミス・ミスターコンでは、クラス代表の男女が舞台の上を歩き、アピールする時間がある。その為、2人はその確認をする。
「ルー、少し背が伸びたんじゃない?」
「そうでしょうか?」
「ええ。目線が殆ど同じだわ」
確かに、以前よりも目線の高さが高い気がする。
そして2人はアピール時間の確認と修正をした後、自分たちの作業に戻った。
あれからルーカスは昼休憩の時間まで作業をして、時間になると、リヴァイ達が来るのを教室で待つ。
教室にはソフィア達とヨハン、そしてフェイスとジェイダが残っている。ソフィア達もティファニー達を待っているのだろう。
すると、フェイスとジェイダがルーカスの元へ来て言う。
「少しだけ時間を貰えませんか?」
「仕上げ前に仮装用の衣装をもう一度着て頂きたいのです」
「ああ、分かった。着替えてくる」
ルーカスは殆ど完成に近い衣装をフェイスから受け取り、カーテンのついた着替えスペースに行き着替える。
……あれ? 以前よりも短いような……。
ルーカスはブラウスとスカートに着替えると、カーテンを開けてフェイス達の元へ行く。
「少し短すぎないか?」
「本当ですね……。縫い間違えたかしら……?」
2人もこのスカートの長さは予想外だったらしく、困った表情でそう言った。
フェイスとジェイダが話をしていると、リヴァイ、アレイル、キャサリンの3人がルーカス達の教室にやってきた。
ルーカスが気付きそちらに振り向くと、3人は目をこれでもかと言う程見開いて驚いていた。
そしてリヴァイが制服の上着を脱ぎながらルーカスに近付き、彼の腰にそれを巻いて言う。
「なんて格好をなさっておられるのですか!」
「ルーカス殿下、早くお着替えください」
リヴァイとキャサリンが驚きと怒りが隠せない声でそう言う。そしてアレイルが怒りを含んだ声色で尋ねる。
「これを作ったのはどなたですか」
その言葉にフェイスとジェイダは、顔を真っ青にして名乗り出て謝罪をする。
(2人が嫌がらせで作ったと思っている……?)
「待て、エイル」
「ルーカス殿下、早く着替えてきてください」
「そうです。こんな格好でいたら危険です」
ルーカスが誤解を解こうとアレイルを止めたが、アレイルもキャサリンも、ルーカスに早く着替えるよう促すだけだ。
怒りで気が立って話を聞いてくれない……。
すると、リヴァイが地響きのように低く、ドスの効いた声で怒った。
「何故このような物を作った? 殿下に対する冒涜か?」
「ひっ……! 決してそのような事は……!」
フェイスがリヴァイの圧力に押されながらも必死に否定する。しかしリヴァイ達は全く聞く耳を持たない。
「ならばこのふざけた物を今すぐ作り直せ!」
「っ、リヴァイ!!」
リヴァイの言葉に、ルーカスは彼に怒りを向ける。その呼び掛けに、リヴァイ達はハッとした。どうやら頭に上っていた血が下がったようだ。
「リヴァイ、アレイル、キャサリン、口を慎め!」
ルーカスはそう言って腰に巻かれた上着を外してリヴァイに突き返した。
「衣装は間に合わないのであればこのままで構わん。そなたらが何を危惧しているか知らんが、そなたらが私を守れば済む話だろう。それともなんだ。自分達が実力不足だった際の予防線でも張っているつもりか?」
ルーカスの言葉と怒りを聞き、リヴァイ達はフェイスとジェイダが嫌がらせをしたのでは無いことに気が付く。
「申し訳ございません。我々の誤認でした」
リヴァイ達がルーカスに頭を下げて謝るが、ルーカスはそのまま着替えスペースに行ってしまった。リヴァイ達はフェイス達にも謝罪する。
「申し訳ない」
「頭をお上げ下さい! この様な物を作ったのです。嫌がらせをしたと思われても仕方がございません」
「そうです。これは我々の落ち度です。皆様がお謝りになる必要などございません」
2人がそう言うと、着替えを済ませたルーカスが出て来て言う。
「2人とも受け取っておけ。今回の事はそなたらには全く非は無い。それに、受け取らないとこの者達はずっと謝ってくるぞ」
「……分かりました。謝罪を受け取ります」
「私も受け取ります」
ルーカスの言葉に2人は仕方なく謝罪を受け取った。
「それで、衣装は直せそうか?」
「はい。裾を余分に作っておりましたので、長さ出しをすれば大丈夫かと」
「ならばそれで頼む。寮の部屋に行く。3人共着いてこい」
そう言うと、ルーカス達は寮の方へ向かっていった。
「ノア様達、怒られてしまうのかしら」
「テオ殿下、凄くお怒りだったわ。私達の事を庇ってくださったのよね」
「ええ。けど、あれは私達にも非があるわ……」
そんな風に2人が落ち込んでいると、一部始終を見ていたソフィアがやって来て言う。
「大丈夫ですよ。確かにルーは、この後リヴァイ達を叱ると思いますが、ちゃんと最後に彼らを労ります。なので責任を感じる必要はございませんよ」
ソフィアの言葉に、全て吹っ切れるわけではないが、2人の心は少しだけ軽くなったのだった。
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