転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

文字の大きさ
上 下
236 / 410
本編 学園中等部編

89

しおりを挟む


 森に入ってから半刻走ると、川辺に行って少し休息を摂る。


「シュー、お水飲むかい? オズも見張りありがとう」


〘ああ。喉が渇いた〙


〘我も水を飲もう〙


 ルーカスはシュバルツとオズワルドを連れて川辺に近付いた。リヴァイもダンカン(愛馬)に水を飲ませているようだ。


「ダンカンも疲れたね。少し休憩しようね」


 ルーカスがそう言うとダンカンはルーカスに頬ずりをして嬉しそうに鳴いた。ルーカスもダンカンを撫でて微笑む。すると、シュバルツが面白くなさそうに言う。


〘ルーカスは俺達の主だ!〙


「えっ、わあっ!」


「殿下っ!!」


 シュバルツがルーカスの服を咥えて引っ張ると、ルーカスは足を滑らせて川に落ちそうになる。
 慌ててリヴァイが腕を引っ張り、自分の方へ引き寄せる。そしてルーカスもリヴァイにぎゅっと抱きついた。


「お怪我は!?」


「ううん、大丈夫。ありがとう、リヴ」


 ルーカスがそう言うとリヴァイは安堵した。


「危ないだろ、ダンカン」


「いや、今のはダンカンは悪くないよ。シュー、危ないから急に引っ張ってはいけないよ?」


〘悪い……。ダンカンも、悪かった〙


 シュバルツは落ち込みながら謝った。するとダンカンが鳴く。どうやら許して貰えたようだ。ルーカスはシュバルツを撫でて慰める。


 そして少し休憩をしてまた1刻程走る。牛の刻の正刻が近付き、ルーカスとリヴァイは開けた場所を探して、愛馬から降りた。


「ここで昼食にしようか」


「畏まりました。私は調理をした事がないので、何をすれば良いのか教えて頂けませんか?」


「そうだね。まずは薪を集めに行こうか」


 2人は焚き火用の薪を拾いに行き、戻ってくると薪を積上げ火を焚いた。
 ルーカスは亜空間から先程買った食材と、持ってきた携帯用調理器具を取り出した。


「調理器具を濯いで鍋に水を入れて焚き火の上に置いてくれるかい?」


「はい」


 リヴァイが準備をしている間に、ルーカスは野菜を洗っていく。


「次は鶏肉を1口大に切ってお鍋に入れて欲しい」


「1口大ですか?」


「うん。食べやすい大きさに。大体でいいよ」


 リヴァイは器用に鶏肉を1口大に切っていく。ルーカスも野菜の皮をむいて1口大に切る。そして玉ねぎと人参をフライパンで炒めてからお鍋に入れ、キャベツも入れる。
 調味料で味付けをして具材を煮込んでいく。


「これで後は待つだけだよ。リヴは器用だね。すごく綺麗に切れていたよ」


「ありがとうございます。殿下はすごく手際が良かったです。よく料理をされていたのですか?」


「前世では毎日自炊していたよ。今は調理場にすら立たせて貰えないけれどね。剣は扱うのに包丁はだめだって」


「ふふ、陛下は殿下がお怪我なさらないか心配しておられるのでしょう」


「うん」


 2人が楽しく会話していると、スープが出来たため、お皿に入れてパンと一緒に用意する。


「すごく美味しそうです」


「だね。いただきます」


 2人はスープを1口食べる。


「っ! とても美味しいです……」


 リヴァイはそう言って目を輝かせながらルーカスの方を見た。ルーカスはすごく嬉しそうになる。


「ふふふ、良かった。沢山食べてね」


 スープとパンを食べ終えると、ルーカスはライチを取り出し、リヴァイにも渡す。


「これ、美味しそうだったから買ってみたんだ。マカイラ家への手土産にスイカも買ったよ」


「ありがとうございます。スイカは今の季節にはピッタリですね」


 2人は食事が終わると、片付けをしてシュバルツ達に食事をさせる。そして少し休憩して未の刻に出発した。


 森には沢山の動物達がいる。小鳥やリスなどの小動物。鹿や魔獣もいくつか見かける。


「賑やかで、豊かな森だね」


「はい。動物も草木もとても豊潤で落ち着きますね」


「ポカポカして眠たくなってしまうね」


 2人は愛馬で森を駆けながら、会話を交わす。


「11の日は城下町に行くのですよね?」


「うん。買い物とカフェに着いてきて欲しくて。果物のタルトが食べたいんだ。男性向けに甘さ控えめのものを多く扱っているみたいだから、リヴも食べられると思うけれど。無理はしないでね」


「ありがとうございます。果物のタルトでしたら、恐らく食べられるかと。とても楽しみです」


 楽しみだという言葉にルーカスは嬉しくなった。そしてルーカスもとても楽しみだと思った。


「ねえ、リヴは何か好きな物あるかい?」


「好きな物ですか? やはり、剣術でしょうか」


 剣術かあ。


 ルーカスは心の中でやはりと納得する。


「成程。他にはあるかい? 食べ物とか」


「食べ物……。あまり拘ったことがないので、そうですね……果物は美味しいと思います。甘過ぎなくて、好きです」


「そっか。果物美味しいよね。僕も好きだよ」


 カフェの話をしたから果物の名前を出したのかもしれないけれど、それでもリヴの事を知れて嬉しいな。






しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...