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本編 学園中等部編
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しおりを挟む森に入ってから半刻走ると、川辺に行って少し休息を摂る。
「シュー、お水飲むかい? オズも見張りありがとう」
〘ああ。喉が渇いた〙
〘我も水を飲もう〙
ルーカスはシュバルツとオズワルドを連れて川辺に近付いた。リヴァイもダンカン(愛馬)に水を飲ませているようだ。
「ダンカンも疲れたね。少し休憩しようね」
ルーカスがそう言うとダンカンはルーカスに頬ずりをして嬉しそうに鳴いた。ルーカスもダンカンを撫でて微笑む。すると、シュバルツが面白くなさそうに言う。
〘ルーカスは俺達の主だ!〙
「えっ、わあっ!」
「殿下っ!!」
シュバルツがルーカスの服を咥えて引っ張ると、ルーカスは足を滑らせて川に落ちそうになる。
慌ててリヴァイが腕を引っ張り、自分の方へ引き寄せる。そしてルーカスもリヴァイにぎゅっと抱きついた。
「お怪我は!?」
「ううん、大丈夫。ありがとう、リヴ」
ルーカスがそう言うとリヴァイは安堵した。
「危ないだろ、ダンカン」
「いや、今のはダンカンは悪くないよ。シュー、危ないから急に引っ張ってはいけないよ?」
〘悪い……。ダンカンも、悪かった〙
シュバルツは落ち込みながら謝った。するとダンカンが鳴く。どうやら許して貰えたようだ。ルーカスはシュバルツを撫でて慰める。
そして少し休憩をしてまた1刻程走る。牛の刻の正刻が近付き、ルーカスとリヴァイは開けた場所を探して、愛馬から降りた。
「ここで昼食にしようか」
「畏まりました。私は調理をした事がないので、何をすれば良いのか教えて頂けませんか?」
「そうだね。まずは薪を集めに行こうか」
2人は焚き火用の薪を拾いに行き、戻ってくると薪を積上げ火を焚いた。
ルーカスは亜空間から先程買った食材と、持ってきた携帯用調理器具を取り出した。
「調理器具を濯いで鍋に水を入れて焚き火の上に置いてくれるかい?」
「はい」
リヴァイが準備をしている間に、ルーカスは野菜を洗っていく。
「次は鶏肉を1口大に切ってお鍋に入れて欲しい」
「1口大ですか?」
「うん。食べやすい大きさに。大体でいいよ」
リヴァイは器用に鶏肉を1口大に切っていく。ルーカスも野菜の皮をむいて1口大に切る。そして玉ねぎと人参をフライパンで炒めてからお鍋に入れ、キャベツも入れる。
調味料で味付けをして具材を煮込んでいく。
「これで後は待つだけだよ。リヴは器用だね。すごく綺麗に切れていたよ」
「ありがとうございます。殿下はすごく手際が良かったです。よく料理をされていたのですか?」
「前世では毎日自炊していたよ。今は調理場にすら立たせて貰えないけれどね。剣は扱うのに包丁はだめだって」
「ふふ、陛下は殿下がお怪我なさらないか心配しておられるのでしょう」
「うん」
2人が楽しく会話していると、スープが出来たため、お皿に入れてパンと一緒に用意する。
「すごく美味しそうです」
「だね。いただきます」
2人はスープを1口食べる。
「っ! とても美味しいです……」
リヴァイはそう言って目を輝かせながらルーカスの方を見た。ルーカスはすごく嬉しそうになる。
「ふふふ、良かった。沢山食べてね」
スープとパンを食べ終えると、ルーカスはライチを取り出し、リヴァイにも渡す。
「これ、美味しそうだったから買ってみたんだ。マカイラ家への手土産にスイカも買ったよ」
「ありがとうございます。スイカは今の季節にはピッタリですね」
2人は食事が終わると、片付けをしてシュバルツ達に食事をさせる。そして少し休憩して未の刻に出発した。
森には沢山の動物達がいる。小鳥やリスなどの小動物。鹿や魔獣もいくつか見かける。
「賑やかで、豊かな森だね」
「はい。動物も草木もとても豊潤で落ち着きますね」
「ポカポカして眠たくなってしまうね」
2人は愛馬で森を駆けながら、会話を交わす。
「11の日は城下町に行くのですよね?」
「うん。買い物とカフェに着いてきて欲しくて。果物のタルトが食べたいんだ。男性向けに甘さ控えめのものを多く扱っているみたいだから、リヴも食べられると思うけれど。無理はしないでね」
「ありがとうございます。果物のタルトでしたら、恐らく食べられるかと。とても楽しみです」
楽しみだという言葉にルーカスは嬉しくなった。そしてルーカスもとても楽しみだと思った。
「ねえ、リヴは何か好きな物あるかい?」
「好きな物ですか? やはり、剣術でしょうか」
剣術かあ。
ルーカスは心の中でやはりと納得する。
「成程。他にはあるかい? 食べ物とか」
「食べ物……。あまり拘ったことがないので、そうですね……果物は美味しいと思います。甘過ぎなくて、好きです」
「そっか。果物美味しいよね。僕も好きだよ」
カフェの話をしたから果物の名前を出したのかもしれないけれど、それでもリヴの事を知れて嬉しいな。
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