転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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本編 学園中等部編

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 翌日の早朝。ルーカスは遠乗り様の動きやすい服に着替え、髪を1つに高く結った。そして辰の刻になると、荷物を亜空間の中に入れ白色のローブを着てから、アーサーの執務室へと向かう。


 最近、アーサー達は執務で忙しくしており、早朝から仕事を行い、何度も会議を開いていた。今日も朝早くから執務のため机に向かい、昼からは会議を開く予定だ。


 ルーカスがアーサーの執務室に着くと、部屋の前でリヴァイが待機していた。
 ルーカスが来たことに気付くと、リヴァイは挨拶をしてから、執務室の扉を叩いた。
 中から返事が聞こえ、扉を開いて中に入る。


「もう出発するのか」


「うん。行ってくるね。15の日の夕方には戻って来るよ」


「ああ。行ってらっしゃい。ノア、ルーカスを頼んだぞ」


 アーサーはルーカスに優しい表情でそう言うと、リヴァイに真剣な表情で念を押した。それをリヴァイも真剣な表情で受け取る。


「誠心誠意努めさせて頂きます」


「リヴァイ、大丈夫だとは思うが、羽目を外しすぎるなよ」


「……肝に銘じます」


 ……返答が固くないかな?


 リヴァイがフレデリックの言葉をしっかりと頭に刻むと、フレデリックは困った表情になり、アーサーは少しだけリヴァイを睨んだ。


 フレデリックの言った羽目を外しすぎるなという言葉は、心を抑えてルーカスの事を配慮しろ。つまり、ルーカスに手を出すなよという意味だ。

 ルーカスはまさかそんな意味が含まれているとは露ほども思わず、アーサー達に出発の挨拶をして、執務室を後にした。




 そして2人は、厩に行き愛馬を連れ出した。ルーカスはシュバルツとオズワルドも連れている。


「出発しようか」


「はい」


 2人は馬に跨り皇城を出発した。
 帝都を出ると大きな森に入る為、その前に市場に昼食の食材を買いに行く。


「リヴ、パンと鶏肉を買ってきてくれるかな。僕はスープの材料を買ってくるよ」


「かしこまりました」


 ルーカスがそう言うと、2人は市場に入り、それぞれ食材を調達しに行く。
 ルーカスはシュバルツを引いて八百屋に向かった。


「いらっしゃ……第3皇子殿下!?」


 ルーカスが店の前に行くと、店主が驚いて声を上げた。ルーカスは気にせずそのまま話しかける。


「人参、玉ねぎ、キャベツを頼む」


「は、はい! キャベツは1玉で?」


「半玉にできるか?」


「勿論です。第3皇子殿下、お付の方はいないのですか?」


 店主は野菜を包みながらルーカスに話しかけた。
 基本的に、貴族は使用人に買い物をさせる為、自ら買いに来る事は殆どない。その為、店主も皇族であるルーカスが自ら買い物をしている姿に驚いただろう。

 しかし、市場で店を出している者は殆どが旅商人達だ。その為、色んな者達の相手をして商品を売ることに慣れている。ルーカスが皇帝と仲が悪かろうが、横暴だろうが、代金さえ払ってくれれば、普通に接客をする。


「遠乗りに行くから今日はおらん。護衛はいるが」


「遠乗りですか。では、沢山料理が必要なのでは? こちらなんて今が最も旬で美味しいですよ」


 そう言って店主は瑞々しいスイカを指した。


 スイカ……。手土産に持っていこうかな。


「確かに美味しそうだ。1玉貰おう。それからライチを3つ貰えるか?」


「毎度あり!」


 ルーカスはお金を払ってから、亜空間に食材を入れて、調味料を買った後にリヴァイと合流した。


「ありがとう。荷物貰うね」


「ありがとうございます」


 リヴァイの買ってきた食材も亜空間に入れて再び馬に乗って森に向かった。




 そして半刻走ると大きな森に入った。時刻は巳の刻前だ。それからはオズワルドを飛ばして森の獣道を走る。


「リヴはマカイラに行ったことがある?」


「何度かございますね。エイルの屋敷に滞在したり、父上と視察にも来たことがあります」


「そうだよね。リヴは大人になったら宰相になるんだもんね。忙しくなるね」


 リヴァイは宰相の仕事を学ぶ為に、少しずつフレデリックと共に帝国内を視察したり、仕事内容を教えて貰ったりしている。
 卒業してから、本格的に学び、引き継ぎが出来るように準備に入る。


「陛下も父上も、まだまだ現役ですので随分と先な気もしますが。殿下は将来、何をなさりたいですか?」


 将来か。学園を卒業してから……。


「……他国との交流を広めてみたいかな」


「他国との交流ですか?」


「うん。ナサニエルは自給自足で、他国と交流があるのは国境近くの領地だけでしょう? 色々な国と交流がある事はナサニエルにとっても利点があるからね。貿易だったり、異文化交流だったり」


「確かに、他国の政治や文化には興味を引かれるものも多く存在しますね。殿下は様々な国の言語を話せますので、天職かもしれませんね」


「まあ、まだ先の話だけれどね。まずはリヴの身長を抜かさないとだね。……今、それは無理だと思ったでしょう?」


 ルーカスがジト目でリヴァイの方を見ると、リヴァイは慌てて否定する。


「い、いえそのような事は……」


「ふふふ、冗談だよ。まあ、170cmは欲しいかな」


 そう言ってルーカスは楽しそうに笑った。





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