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本編 学園中等部編
81 sideリヴァイ?
しおりを挟むリヴァイが警戒していると、扉から顔を出したのはイライアス先生だった。
「すごい独占欲だな」
「イライアス……」
引き攣った表情で言いながら、イライアス先生は扉を閉めて部屋の中に入る。
「悪いな。いつもの時間になっても鍵を返しに来ねーから、様子を見に来たんだ」
「いつから聞いていた」
「ルナが本心を聞いてるって言ったあたりだ」
殆ど聞かれていたのか。入ってくれば良いものを。
イライアス先生はバツの悪そうな表情をして答えた。
「しっかし、お前は相変わらず現実主義だなー。良いじゃねぇか夢見たって。今テオがお前を好いてなくたって、来年、再来年、あいつの気持ちが変わるかもだろ。俺なんて、何年恋人に嫌われてたか……」
真面目な表情でそういうと、最後は思い耽るような表情をする。
すると、ソフィアが意外とでも言うような表情で言う。
「ベニーは恋人がいたのですね」
「失礼だな。まあ、だから頑張ってみろよ。せっかく一緒に出かけれんだろ? 断るなんて勿体ねーだろ」
イライアス先生は励ますようにリヴァイの肩をポンと叩いた。しかしリヴァイが目を逸らして言いずらそうにする。
それに気付いたイライアス先生が不思議そうな顔をすると、リヴァイが口を開いた。
「……もう、断っている」
「……まじか。じゃあ誘い直せ」
「2人で行きたいと言うのか?」
1度断ったくせに、誘ってしまって良いのか……?
リヴァイがそう思っていると、イライアス先生は理解が出来ずに呆気に取られた。
「……2人?」
それを見てソフィアが話の内容を簡潔かつ分かりやすくイライアス先生に説明する。
「誘われたって、デートにかよ! お前なんで断ったんだよ! 馬鹿か!?」
「デートではない。理由は聞いてたのだろ」
「いや、お前の気持ちも分かるが……」
(それだってお前の勘違いの可能性が高いわけで……)
イライアス先生は、自分も相手に嫌われていた時期があった為、リヴァイの気持ちはとても理解出来る。
しかし、ソフィアに話を聞いて、イライアス先生はルーカスがリヴァイの事を好きな可能性がある事に気づいた。その為、とても複雑な気持ちになったのだった。
「まあ、取り敢えず誘い直して一緒に出かけて来い。チャンス逃すなんて勿体ねぇからな。それからお前、顔怖ぇんだから笑え。じゃあ戸締り確認して来い」
「分かった」
返事をすると、リヴァイは戸締りを確認しに窓の方へと行った。
◇ ◇ ◇
そしてイライアス先生はソフィアに確認する。
「ルナ、テオはノアのことが好き、なのか……?」
ソフィアは正直に答えるべきか迷ったが、イライアス先生はここまで話を聞いている為、肯定する。
「じゃあお前今、すげぇもどかしいだろ」
「そうですね。しかし、2人が自分で気付かないと、意味が無いと思っておりますので」
「ま、そうだよなー。特にノアはこっち側から言ったところで、信じねぇだろうしな」
ソフィアはルーカスとリヴァイの事でやきもきしてしているイライアス先生に、少し嬉しそうな表情になった。
「それにしてもテオがなぁ~。あの態度でノアが好きって、絶対に伝わんねぇよな。偏屈だな」
「ふふ、そういう訳では有りませんよ」
ソフィアはルーカスの素を知らないイライアス先生が、意外そうにしている事に可笑しくなり笑った。
「ですが、まあ皇族には色々と事情があるのですよ」
ソフィアが尊厳な態度で、イライアス先生に他言するなと言わんばかりに威圧すると、彼は背筋に冷や汗を感じた。
(怖っ、流石は皇女。しかし色々なぁ……。……いや、まさかな。違う、よな……?)
イライアス先生はソフィアの色々という言葉に、深く考え込んでしまう。そして辿り着いた1つの思い付きに、全身が震えるような恐怖が走った。
他言するなと言うのならば、わざわざあの言い回しをする必要は無い。ソフィアは意図して、イライアス先生に伝わるかどうか、ぎりぎりの発言をした。
それに気付いたイライアス先生は、ソフィアの思惑通り、考えを巡らせた。
ルーカスの恋情と性格の話。イライアス先生の偏屈という言葉のソフィアの否定。皇族の色々な事情という発言。
イライアス先生は考えれば考える程、自分の思い付いた事への心当たりが思い浮かんでくるのだった。
その後、リヴァイが戻ってくると、3人は生徒会室を後にした。
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