転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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本編 学園中等部編

80 sideリヴァイ

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 その日の放課後、ルーカス達は生徒会室で会議を行っている。


「7の月19の日にある体術大会について話し合う。この中で、大会に出る者は名を上げろ」


 生徒会では、エドワード、アドルフ、アシェル、ルーカスが出るようだ。


「1週間前からは他の者達で仕事を回してくれ。配分は──……」


 そして会議が終わると、エドワードがルーカスの元へ行く。


「ルーカス、アレイルは大会に出場するのか?」


「いえ、出ないと言っておりました」


「護衛はどうするのだ? リヴァイに頼むか?」


 エドワードが尋ねると、ルーカスはリヴァイの方を一切見ずに、答える。


「リヴとキャシーは生徒会の仕事があるので、エイルに頼もうかと」


「そうか。護衛だけはしっかり付けておけ。最近馬鹿な者達が多いようだからな」


「はい」


 そういうとエドワードもルーカスも自分の仕事に戻った。


 ……今日は朝から一日、殿下とは全くと言って良いほど目が合わない気がする。


 ルーカスは無意識のうちにリヴァイと話す頻度を減らしていた。
 その後も仕事の事でルーカスに質問に行っても、何時もより簡潔に答え自分の仕事に戻って行く。
 しかし、リヴァイから見ても機嫌が悪そうでもなく、いつも通りのように思えた。


 ……私の勘違いだな。


 その後、見回りを終えて寮にルーカスを送りに行こうとした時、リヴァイはソフィアに呼び止められた。


「リヴァイ、少し良いですか? キャシー、ルーを寮まで送って貰えますか? 私は後でリヴァイに送って貰うので、ティファとグレースも先に帰っていて下さい」


 それを見た皆は不思議そうにしたが、真剣な面持ちのソフィアに邪魔をしまいと直ぐに帰って行った。そしてキャサリンもソフィアに了承の返事をして、ルーカスと共に帰って行った。
 生徒会室にはソフィアとリヴァイだけとなる。


「どうされましたか?」


「単刀直入に言います。リヴァイ、どうしてルーの誘いを断られたのですか?」


 ソフィアが真剣な表情で尋ねると、リヴァイは少しだけ後ろめたそうな表情をして言う。


「……私は口下手なので、殿下と出掛けたとしても、殿下に楽しんで頂けないと」


「ええ、そうですね。それはルーから聞きました。しかし、それは建前ですよね?」


 ソフィアの言葉に、リヴァイは目を見開く。
 ソフィアはルーカスにリヴァイが断った理由を聞いた時から、建前であると確信していた。


 ルーカスが自分との会話を楽しんでいることをリヴァイが分かっていると、ソフィアは知っている。
 その為、ルーカスが自分といて楽しくないと思うのは、絶対に有り得ないと思った。


「私は貴方の本心を尋ねているのです」


 その言葉を聞き、リヴァイはソフィアから目を逸らした。


 わかっている。殿下は、私との会話の時間をいつも楽しそうに過ごしてくださる。だが、それは……


「私は殿下を愛しているのです。しかし殿下は、私の事など眼中にありません。私はそれが耐えられません。
 殿下と遠乗りをして、出掛けて楽しく過ごした後、私はまた現実に戻される。殿下は、私を側近や友人としてしか見ていない……」


 リヴァイは苦しそうにそう嘆いた。


「ルーが貴方に恋情を抱えているとは思わないのですか?」


「有り得ません。殿下は、私の恋路を全力で応援すると仰られました。ソフィア様は、好いた相手が自分でない誰かに与える愛情を応援する事が出来ますか?」


「それは……」


 ソフィアは言い淀む。ルーカスがリヴァイに恋路を応援すると言ったのは、ルーカスが自分の恋情に気づく前の事であった。
 しかしルーカスの性格上、リヴァイに対する恋情に気付いた今でも、彼はリヴァイの恋路を全力で応援するのだろう。


「私は、応援など出来ません。殿下が私以外の者を愛するのならば、殿下を傷付けてでも私のものにしてしまいたい。
 こんなにも醜い感情を、殿下に知られてしまったら……」


 自分の気持ちを伝えられず、こんなにもうじうじと悩む臆病者の私には、恋愛など向いていないのだろう。


 2人は互いに想いあっている。一方は重く独占的な黒い愛情を。もう一方は独占欲の無い、白い愛情。両極端な想いがある事をリヴァイもルーカスも気付かない。

 ルーカスの想いを知っていても告げられない、そんな状況にソフィアはもどかしく思う。


 そんな状況の中、生徒会室の扉がガチャリと音を立てて開いた。話に集中していた2人は、扉の向こうに人がいた事に気付かなかった。


 側近達は皇族を守る為に、学園内での帯剣が許されている。リヴァイは急いでソフィアの前に立ち、剣の柄を握った。





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