転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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本編 学園中等部編

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「ルーク、どうかしたか?」


 試合を鑑賞していたルーカスは険しい顔をしている。それに気付いたラルフが尋ねた。


「……試合を中止した方が良い。エド兄さん、今は試合に集中しているから意識は正常だけど、試合が終われば倒れると思う」


「だが、あの程度の怪我ならいつも続行の判断だろ」


 アドルフの言う通り、審判員の判断は間違っていない。あの出血量なら内蔵も損傷はしていないはず。けど……。


「私も殿下と同じ意見です。エドワード殿下は体力が多いのであの運動量ならば、息もそこまで上がらないはずです。しかし、殿下の対戦相手は例年と比べても実力のある方々ばかりでした。
 怪我の量も度合いも高く、試合時間も長い。今日一日で蓄積された体力の消耗量と出血量が他の方々に比べても段違いなのです」


「このまま長時間試合を続けると、今日一日での出血量が致死量に達する可能性がある」


 その言葉に、アドルフ達は驚いた表情になる。
 すると、急に観客席から地面が揺れるような歓声が上がった。外を覗くと、リヴァイがエドワードを圧している。

 リヴァイはエドワードをねじ伏せるほどの強い攻撃を何度も入れていく。
 そしてエドワードの剣に渾身の一撃を入れると剣が折れ、吹き飛ばされる。


 審判員がリヴァイの勝利を告げた。


「アドルフ、ラルフ、メーリン。今すぐ兄さんの所に行きなさい。腹部を治療してもらった後、急いで果物を食べさせて」


「分かった。だが果物は持ってないぞ」


「私が買ってくる。ルーカス殿下、少しの間お傍を離れる事をお許しください」


「分かった。お願い」



 そう言うとアレイルは転移の魔法で果実を買いに行き、アドルフ達は急いでエドワードの元へ向かった。
 すると、ルーカスが少し殺気立って口を開いた。


「アレクサンダー、おかしいと思わないかい? どうしてエド兄さんの1、2、3回戦目の対戦相手だけ、実力のあるものばかり集まっていたのだろうね? おかげで、僕の方はすんなり勝てたよ」


 決勝トーナメントに残っているもの達のため、1、2、3回戦目の対戦相手が強い者達である事は何も珍しくない。しかし、エドワードと2、3回戦目に当たる可能性のある者達全員が去年の上位成績者や辺境出身の者達だった。そして、ルーカスがアレイルに当たるまでは、ルーカスの対戦相手は、昨年の下位成績者だけだった。
 普通ならば、もっと実力がばらけるようにトーナメントが作られる。


「誰かが故意に、エドワード殿下の所に実力者を埋め込んだ……。エドワード殿下の成績をどうにか下げようとしたということでしょうか」


「しかし、誰が何の為に……」


 ゾクッ!!


「「っ……!!」」


(っ、凄い殺気だ……)


「どうせ、兄さんを貶めて、僕の株をあげたかったんだろうね? そうすれば民が僕を支持するとでも思ったんだろう。ほんと、反吐が出るよ」


 ルーカスは大量の殺気を放出させ、冷たい表情で胸の中の憎悪を表した。


「……テオ様は不当な反対派の仕業だと考えますか?」


「十中八九そうだろうね。だから、アレクサンダー、ユン、頑張って調べてね?」


 ルーカスはアレクサンダーとパーシヴァルに脅迫めいた命令をする。


「お約束致します」


「絶対に捕まえます」


 2人が返事をすると、エドワード達が控え室に戻って来た。


「おかえり、皆」


「……何か空気が殺伐としてないか?」


「エド兄さんのことが心配だったからね」


 アドルフが尋ねるとルーカスが微笑んで答えた。


 恐らく先程の話が聞こえていたはず。それでも掘り返さないと言うことは、アレクサンダー達に任せていいと言う事だね。


「体調管理が出来ないとは、私もまだまだだな」


「傷が治っていれば、出血量は余り気にしないよね。兄さんの顔色を見るまで気付かなかった。
 表彰式まで時間はあるから、少し休んでおくといいよ」


「ああ。そうさせてもらおう」


 そう言うとエドワードは、座席に座って体を休める。それにアドルフ達が付き添った。


「エイル、果物を買いに行ってくれてありがとう」


「いえ。私が適任でしたので」


 アレイルは微笑んで答えた。


「リヴ、優勝おめでとう」


「ありがとうございます。必ず来年に、私から奪って下さい」


「ふふ、うん。頑張るよ」


 ルーカスが嬉しそうに返事すると、リヴァイも嬉しそうに微笑んだ。




 その後、表彰式と閉会式が行われる。そしてリヴァイ、エドワード、ルーカス、アドルフは表彰され、制服に付ける襟章バッチが贈られた。


 明日は振替休日の為、ルーカス達は馬車に乗って皇城へ向かった。
 そしてルーカスは馬車の中で、アドルフとの試合の事を、ウィリアムにこっぴどく叱られ、アーサーにも伝えられ沢山怒られたのだった。






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