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本編 学園中等部編
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しおりを挟むルーカスとアドルフの試合が終わり、いよいよ決勝戦が始まる。エドワードとリヴァイは準備を終えて試合場所に移動すると、互いに向かい合って剣を構えた。
そして審判員の合図で試合が始まった。
先手はエドワードがとる。エドワードは合図と同時にリヴァイに近付いた。そして大きく剣を振るう。
それをリヴァイが受け止めると、力強く鈍い音が会場全体に鳴り響いた。
そしてそのまま2人は何度も剣を打ち続けていく。
「なんだか、リヴとアドルフの時もそうだけど、音から違うよね……」
「そうですね。力強さというか、迫力でしょうか」
控え室で鑑賞しているルーカスとアレイルが話している。
「ルーちゃんはどっちが勝つと思う~?」
「それはリヴだよ。いや、リヴが勝たなければ。約束したからね」
嬉しそうに言うルーカスにメーリン達は不思議そうな顔をする。
「約束って、ノアに勝てって言ったのか?」
「まあ、優勝しなければいけないよ、とは言ったよ。けれど約束は、リヴから奪いに行くからそれまで優勝しておいて、というもの」
ルーカスのその言葉に、アレイルやアドルフ達だけでなく、アレクサンダー達4人までリヴァイを憐れむような表情をした。
「それはまた、大層なプレッシャーをかけたな」
確かにリヴにとってすごいプレッシャーだとは思うけれど……。
「こんなプレッシャー程度に負けるのならば、皇子の側近なんて受けていないよね。君達もそうだと思うけれど」
ルーカスは心の底からそう思っている。皇子の側近がこの程度のプレッシャーに負けるわけがないと。
その重圧的な信頼に、応えなければと思うのだから、アレイルやアドルフ達は、骨の髄まで彼らの側近なのだろう。
「まあ、別に守る必要なんて無いのだけどね。けれど、リヴは勝つだろうね。後は来年だけだから、僕の方が無理だと思うと言ったら、自分から奪えと拗ねられたよ」
「はは、それは見たかったな~」
「凄く可愛かったよ」
ルーカス達は談笑をしながら、試合の観戦を再開した。
「……第3皇子殿下の素を見てから、近付いても威圧感やプレッシャーを感じなくなった。絆されたのだと思っていたが……」
そう言ってマテウスは固唾を飲んだ。それを見たアレクサンダーが言う。
「恐らく、殿下の本質にある威圧感を無意識のうちに感じられていたのでしょう。その為、純粋で強烈な威圧感に、演技で作り出された威圧感が負けてしまったのだと思います」
「ああ。第3皇子殿下は誰よりも皇族らしい、上の立場にあるべき人物なのだろうな」
「……変な事考えないで下さいよ? テオ様はそんな事望んでないんですから」
「考えるか! エドワード殿下も同じ位の資質を持っておられる」
◇ ◇ ◇
エドワードとリヴァイが打ち合いをして、2人の体力は少しずつ消耗していく。
2人は一旦距離を取った。そして互いに睨み合う。するとリヴァイが一気に詰め寄り、凄まじい強打を入れる。
エドワードは何とかそれを防ぐ。そして今度はエドワードが思い切りリヴァイに剣を振るった。それをリヴァイが受け止めると、もう一度距離を取った。
距離を取って息を整え、今度は2人が同時に攻撃をする。剣がぶつかり激しい金属音が鳴り響く。そのまま2人は剣で押し合う。交わる剣から金属の擦れ合う、不快な音が鳴る。
「やはり今年も強いな。簡単には勝たせてくれないようだ」
「殿下から優勝するよう仰せつかっておりますので」
「今年は特に負けられないということか」
エドワードはよりリヴァイの剣を押す力を強める。そして後ろに距離を取ると、もう一度強打を入れる。
リヴァイはそれを防いで攻撃を紡いでいく。
2人の攻撃は止むことなく何度も何度も放たれ、会場には剣のぶつかり合う音が響き続ける。
(……体力の消耗がいつもより激しい。ルーカスとの試合で体力を奪われたからか)
エドワードの息がすごく上がっている。いつもならば、少し息が上がる程度なのだが、怪我の治療や他の試合での体力の消耗が原因だろう。
そのことに気付いたリヴァイは好機だと思い、先程よりも強い力でエドワードに攻撃を入れる。エドワードは何とか防いだが、リヴァイは間髪入れずに2激目を入れる。それに反応出来ず、リヴァイの剣はエドワードの横腹を思い切りぶった切った。
「ぐっ!!」
エドワードのお腹から大量に血が流れ出す。しかしエドワードは休むこと無く攻撃を繰り出しす。2人は激しい戦いを続けていく。審判員はまだ止めない。急所に当たったわけでもなく、これくらいの出血量ならば、続行可能と判断される。
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