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本編 学園中等部編
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しおりを挟むルーカスとアレイルが話をしていると、エドワードが2人の所に近付いて来る。
「ルーカス、落ち着いたか?」
エドワードがルーカスの頭を撫でながら尋ねると、ルーカスが頷く。
「エドワード殿下、申し訳ございませんでした」
「戦場でならば、お前は死んでいた。ルーカスと戦う時は、戦場にいると意識しろ」
「肝に銘じさせて頂きます」
アレイルは真剣な表情でそう言った。
「ルーカス、アレイルに古琴を弾いてやれ。君も少し心を癒さなければ、次は私との戦いだからな。手加減はしないぞ」
「うん、分かった」
ルーカスは微笑んで返事をした。
先程のエドワードとラルフの試合はエドワードが勝利した。
2人とも隙がなく、素早い剣で何度も攻撃を繰り広げる。2人の体には防ぎきれなかった剣があたり、至る所に切り傷が着く。
何度も剣がぶつかり合い、終わりが見えなく思えた戦いは、意外にも急に戦況がガラリと変わり、試合が終わった。
エドワードとラルフが剣を打ち合っていると、途端にラルフの力が弱まった。どうやら切り傷により体に力が入らなくなってきたようだ。
2人の傷の数は同じくらいに見えた。しかし、ラルフの体に着いたものの方が傷が深かった。その分エドワードよりも多く血が流れ、筋肉に与える負担も大きい。
エドワードは力の弱まったラルフに気付くと、込める力を強めてラルフの剣を吹き飛ばしたのだった。
準々決勝の勝者はリヴァイ、アドルフ、エドワード、ルーカスだ。お昼休憩後の準決勝はリヴァイ対アドルフの戦い後、エドワード対ルーカスの戦いをする。
「リヴァイ達が昼食を買いに行っている。先に控え室に移動するぞ。古琴もそこで弾くと言い」
ルーカスはエドワードの言葉に返事をするとウィリアムの所へ向かう。
「ウィル兄さん、結界ありがとう」
「うん。今度からは忘れないようにね。まあ、私は素がバレても良いと思っているけど。反対派はもう殆どが分かっているのだろう?」
「うん。けれど、頭首が分からなくて。まだ会わせてくれないんだ。もう少し待っても会わせてくれなければ、幹部の後を付けてみるよ」
「余程慎重なのか、ただの臆病なのか。あまり無理はしないようにね」
「うん」
ウィリアムは結界を外し皆で控え室に移動した。この時にはもう観客席に残っているものはいなかった。
控え室に着くと、ルーカスは古琴を出してリヴァイ達が戻ってくるまでの間、癒精音を弾いた。そして買い物組が戻ってくると皆で食事を取ったのだった。
お昼休憩が終わると、いよいよ準決勝だ。リヴァイとアドルフは準備をして試合場所に移動した。
控え室にはルーカス、エドワード、ラルフ、メーリン、アレイルだけが残って他の生徒達は観客席にいる。
そこにアレクサンダーとパーシヴァル、マテウスとイライジャがやって来た。
「エドワード殿下、ルーカス殿下、準決勝進出おめでとうございます」
「アレクサンダー、他の者達もどうしたのだ?」
ルーカス達は、4人がやって来た事に驚いた。
「特別席で見ていたのですが、教員の者が控え室からの方が見やすいと教えてくれたのです」
「今は準決勝出場者意外いないから、控え室に行ってもいいと言われて」
招待者用の特別席は、何かあった時の為に見晴らしの良い1番高い所に位置する。
その為、危険度は低いが如何せん試合を鑑賞するには少し遠いのだ。
「では、あそこの席に座ると良いよ。1番見えやすいからね」
「「ありがとうございます」」
ルーカスがそう言うと、アレクサンダーとイライジャがお礼を言った。しかしパーシヴァルとマテウスは少し居心地の悪そうな表情をした。
「ふふ、まだ慣れないかい?」
ルーカスが楽しそうに言うと、2人は困った顔をする。
「それは、7年もの印象がございますので」
「俺は久しぶりに見ましたから」
「それもそうだね。では僕と兄さんはそろそろ試合場所に行くよ」
「はい。行ってらっしゃいませ」
アレクサンダーがそう言うと、ルーカスは演技を初めて部屋を後にした。その後にエドワードも部屋を出る。
「……あんなにすっと入れるものか?」
「ふふ、私なら無理ですね」
ルーカスの演技に入った姿を見て、マテウスが少し驚いたように言うと、イライジャが可笑しそうに返答した。
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