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本編 学園中等部編
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しおりを挟むその後、皆の1回戦目と2回戦目が行われ、全員順調に勝ち進んだ。そして3回戦目はアドルフとオーランドが当たった。
この試合はアドルフが勝利した。
オーランドは同学年と比べても体格が良い。そして技量も十分に持っていた。
しかし、やはりアドルフはその体格、技量に加え、圧倒的な経験値を持っている。
貴族達は幼い頃から授業で剣術を習う。しかし対人戦闘の相手は剣術の先生や兄弟が殆どで、学園に入るまで色んな相手との対人戦闘はしたことが無い。
その為アドルフとの2年間の経験値の差が出てしまい、オーランドは負けてしまった。
「だぁー負けちまったぜ。やっぱりアドルフ様は強いな。来年は絶対勝つ!」
「受けて立とう。早く治療班の所へ行ってこい」
「おう!」
そして他の皆の3回戦目は、対戦相手に勝ち次は準々決勝だ。
準々決勝はリヴァイ対メーリン。アドルフ対エルヴィス。エドワード対ラルフ。ルーカス対アレイルだ。
「見事に顔見知りばかりだな」
「昨年は4位が最高学年のやつだったか。その枠にルークが入った感じだな」
「学園の大会とはいえ、350人以上の中からベスト8に残るとは私達の側近は優秀だな、ルーカス」
「……そうですね」
エドワードは少し嬉しそうだ。
「くそぉー、俺もエドワード様に褒められたかったぜ」
「私もです」
「中等部の内に決勝トーナメントに入っただけでも十分優秀だ。来年はもっと強くなっているだろうしな」
何だか、エド兄さんが凄く上機嫌だ。戦いで興奮状態になっているのかもしれない。
エドワードはいつもは口数が少ない。ルーカスの事になると普通に話すが、今はそういう訳でもないのに、口数が多くなっている。
戦う事で気分が高揚し、興奮状態に陥る事はよくある事だ。先程のエドワードの対戦相手は高等部3年の体格もよく技量もある者だった。
激しい戦いで相手側は少し大きな怪我を負い、エドワード自身もいくつも切り傷が着いていた。
激しい戦いだったから、アドレナリンが多く分泌されたんだろうね。兄さんの傷も結構深いものがあったけれど、余り痛そうにしていなかったから。
ベスト16に残っている者達の試合の為、3回戦目はどこも白熱した戦いだった。そして特にエドワードの試合は激しいものだった為、興奮がまだ覚めていないのだろう。
「アドルフ、少し来い」
「どうした?」
ルーカスはアドルフを呼んで皆から少し離れて防音する結界を張る。
「兄さんに冷たい水を飲ませて。それから少し外に連れ出して深呼吸させて欲しい。興奮状態になっているから、次の試合の時にラルフに大怪我を追わせてしまうかもしれない。兄さん自身も怪我を負う可能性もある」
「っ、そうなのか。分かった。あいつを連れて少し外に行ってくる」
「お願い」
そういうとルーカスが結界を消して、アドルフはエドワードを連れて少し外に出て行った。
そしてしばらくして帰ってくると、エドワードはすっかり落ち着いた様子だ。口数も元に戻っている。
エドワードは元々口下手という訳では無い。むしろ話上手だ。しかし時期皇帝として、感情を表に出さないように幼い頃から口数を減らしている。そうやって理性を保つことで、今まで上手く立ち回ってきたのだ。
逆を言えば口数が多くなると、理性が保てていないという事だ。この事を知っているのは家族だけなので、ある程度口数が多くなっても相手に感付かれる事は無いだろう。
いつも共にいる側近と宰相位はこの事を知っておいた方が良いと思うな。今度父様に言っておこう。
エドワード達も戻ってきて、試合のあるリヴァイとメーリン、アドルフとエルヴィスは準備にかかった。
準々決勝は2試合ずつ行われる。その後、準々決勝が終わるとお昼休憩に入る。昼食は昨日と同じく会場横に売店が並んでいるので、そこで買って食べてから次は準決勝だ。
準決勝は1試合ずつ行われ、その後3位決定戦があり、最後に決勝が行われるのだ。
4人が準備を終えて招集場所へ向かう。そして時間になると、それぞれ試合場所に移動して準備が整った。
「やはり緊張感が凄いですね」
「ああ。だが、私達も準備をしておいた方が良いだろう」
「はい。ルーカス殿下との手合わせは初めてですね。全力で行くのでよろしくお願い致します」
「そうだな。私も全力で行く」
2人は真剣な面持ちでそう言うとそれぞれ試合の準備に取り掛かった。
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