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本編 学園中等部編
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しおりを挟むもうすぐ1試合目が始まる。メーリンとグレースが戦い、リヴァイは先程グレースを馬鹿にした男子生徒と戦う。
生徒達の準備が出来ると、審判員が一斉に合図する。
「初め!」
その合図とともに、リヴァイは地面を踏み込み相手と距離を詰める。そして相手の剣目掛けて全力で剣を振るう。すると相手の剣は真っ二つに割れそのまま大きく吹き飛んだ。
その光景に対戦相手である男子生徒や観客達は呆気に取られる。
うーん、怒っていたようには見えなかったのだけど。読み取れなかったかな。
リヴァイの決勝トーナメントの1回戦目は、早々に勝負が決まったのだった。
そしてメーリンとグレースの方は、剣を打ち合い、互いに探りあっているようだ。
その後、探り合いから先に抜け出したのはグレースだった。
グレースは力が劣る為、メーリンに剣を離させることは出来ないだろう。長期戦でメーリンの消耗を狙うはずだ。
グレースはメーリンの剣を打つ力を一気に強めた。するとメーリンは少し剣が外に弾かれ体が開く。
グレースはその機会を見逃さず、メーリンの横腹に剣を振るう。
メーリンは間一髪で剣を避けたが、少し掠めたようだ。メーリンの服に彼の血が滲む。メーリンは少しグレースと距離を取り、息を整える。
次はメーリンが攻撃を仕掛けた。メーリンは先程より強い力で剣を振り、グレースを圧していく。
グレースは何とか受け流しているが、完全に受け身になっている。隙を作らないように徹するので精一杯の様だ。
「メーリンが優勢の様ですね」
「ああ」
「ですが、先程からメーリンはグレースの剣にばかり攻撃をおくっているように思います。やはり、どこか躊躇しているのでしょうか」
メーリンは先程から何度か攻撃が出来るタイミングがあったが、それをいつも見送っている。
「そうだろうな。仕方のない事ではあるが」
妹相手に簡単には剣を振れないよね。僕もリリーに怪我をさせる事なんて出来ないよ。けれど、グレースは悔しいだろうね。
(くそっ! 機会は何度もあった。手は抜かないと約束しただろ)
メーリンは一層強く剣を振るう。するとその勢いでグレースはバランスを崩した。しかしグレースはしっかりと剣を握り絶対に離さない。だが、勝負を決めるには絶好の機会だ。
(ここで攻撃をしなければ、グレースに失礼だ)
そう思いメーリンは剣を構えた。そしてグレースに目掛けて剣を振るう。しかし、メーリンはグレースの顔前で剣を寸止めした。
「続行不可! 勝者、ゼン!」
「くそっ! 悪い、グレース」
メーリンは凄く辛そうな表情でそう言った。
ルール上、メーリンの攻撃はなんら問題ない。
しかし、寸止めは相手に避けられた場合や一定以上の距離がある場合、続行不可判定にはならず、そのまま試合が続く。
そして寸止めは相手に避けられた場合、相手に絶好の機会を与えてしまう。
何よりメーリンは最初、グレースの腕を狙い剣を離させるつもりだった。それを途中で攻撃を変え、不確定な寸止めという手段を選んだのだ。
「まったく。らしくないですよ、兄様。私は兄様が妹を簡単に傷付けられる人間には見えません。寸止めで勝利されたのは凄く悔しいです。なので、来年は絶対に勝ちますから覚悟していてください」
「グレース……」
「今日家に帰っても引きずっていた際は、シェフに夕食をトマトにしてもらいます」
グレースは悪い笑顔でそう言った。メーリンはトマトが苦手で、食事で出た時はいつも残しているらしい。
「なっ、それだけは勘弁してくれ!」
「では、勝ったのですから胸を張ってください! 治療班の元へ行きますよ!」
そう言って2人は治療班のいる所へと向かって行った。
その後1試合目が終わると、リヴァイとメーリン、グレースが控え室に戻って来る。そしてアドルフとエルヴィスが招集場所へ向かって行った。
「リヴは瞬殺だったな。対戦相手や観客の方達が一瞬過ぎて呆気にとられてたぞ」
「そなたが怒っている事に気付かなかったな」
試合から戻ってきたリヴァイがルーカスとアレイルの所へ来た。
「いえ、特に怒ってはいませんでした。殿下があの者に怒っておられたので、手加減する必要はないと思いまして」
リヴァイの想定外の言葉にルーカスは驚いた。
リヴは僕を基準にしているんだ……。
「それで良いのかよ」
「同感だ」
アレイルはリヴァイの言葉に少しだけ呆れた様子になった。
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