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本編 学園中等部編
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しおりを挟む翌日。ルーカス達は朝の支度をしている。
「殿下、私に髪を結わさせて頂けませんか?」
リヴから来るなんて珍しいね。
『私のおかげで殿下はとても綺麗で美しくなられました』
リヴァイから髪を結わさせて欲しいと言われ、ルーカスは昨日のやり取りを思い出した。
「……僕の事を、綺麗にしてくれるのかい?」
ルーカスは少しだけ耳を赤くさせてリヴァイに尋ねた。するとリヴァイも昨日の朝の事を思い出した様だ。
「……殿下は最初からお綺麗ですよ」
「ふふふ、違うよ。君のおかげで綺麗になるんだよ」
「ふふ、はい」
ルーカスが楽しそうに言うと、リヴァイも楽しそうに微笑んで返事をしてルーカスの髪を結っていった。
アレイル達が部屋へやってくると4人で会場へと向かった。
会場へ着くと、決勝トーナメントの対戦相手が書かれた紙が配られていた。
「貰ってきますね」
キャサリンが髪を貰って戻ってくると、1枚ずつ渡された。
どうやら1回戦目でメーリンとグレースが当たってしまったらしい。
「この2人は昨年の大会でも、予選の1回戦目に当たっておりましたね」
「どんな試合になるのか楽しみですね」
「ああ」
その他は3回戦目まで勝ち進めば、皆と戦う事ができる。
その後ルーカス達はキャサリンと別れて控え室に向かった。控え室は昨日とは違い、1階席の4分の1程だけに狭まっていた。
控え室へ行くとメーリンが楽しそうにしている。
「おっ、ルーちゃん達おはよ~。トーナメント表見たか~? いや~またグレースと当たっちまったぜ~」
そう言いながらも、メーリンは嬉しそうだった。
グレースと戦えるのが余程嬉しいみたいだね。
「グレースはまだか?」
「向こうで入念に準備をしてる」
「そうか」
「おいゼン。お前は入念に準備しなくていいのかよー」
誰だろう。メーリンと同学年の者かな。
ルーカス達が話している所に、高等部の男子生徒が2人やってきてそう言った。
「私はいつも通りじゃね~と、調子が崩れんだよ」
「とか言ってどうせ簡単に勝つんだろ? 去年と同じ相手でそれも年下の女とか超羨ましいぜ」
「だよなー。出来レースじゃん。お前もちょっとは手加減してやればいいじゃん」
「ああー、だからここで喋ってたって訳か。俺の相手なんてノアだぞ? 超最悪だろ」
2人は面白そうにそう言った。するとここにいる全員の表情が少し険しくなった。特にメーリンは怒りが表情に完全に出ている。
「私がグレース相手に手を抜く事は絶対にない。そんなくだらない事を言いに来たのなら、今すぐ失せろ!」
メーリンが怒っているところは初めて見たね。いつもチャラいから何だか新鮮だ。
「おいおい、そんな怒んなって」
「そうだよ。冗談だって冗談。分かるだろ?」
メーリンが怒ったにも関わらず、彼らは反省の色も見せずに茶化す。それにメーリン達は凄く怒っている。ルーカスも怒りが湧いているが、ここで明確にグレースを庇う訳にはいかない。
馬鹿にされたのなら馬鹿にし返せばいいか。
「良かったなリヴ。相手がこんな者だとは、そなたの試合は出来レースだな」
そう言いながらルーカスはリヴァイの方を向く。すると、メーリンの大きな笑い声が響いた。
「ははは! 確かにルーちゃんの言う通りだな~」
「なっ!? テオ殿下!」
男子生徒は顔を真っ赤にして怒っている。
「お前ら、何に対して怒ってんだよ? グレースの実力を測れないやつがノアちゃんに勝てるわけないだろ?」
「まあ実力的にも無理だろうがな」
「なっ、うるせぇ!」
図星をつかれた男子生徒達は恥ずかしさと怒りで顔を真っ赤にして離れていった。すると、グレースがみんなの所に顔を出した。
「ありがとうございます、兄様。皆さんも」
「聞いてたのか」
「はい。彼らには、私の戦いを見せて、二度とあんな事が言えないようにします」
グレースは決心した表情でそう言った。
「お~、グレース、かっこいいぞ~。流石は私の妹だな~」
「ふふ、そうですね」
グレースがメーリンの言葉に嬉しそうに返事する。
いつもなら素っ気なく否定される為、メーリンは凄く驚いた表情をしている。そしてとても嬉しそうだ。
「リヴ、もうすぐ試合の時間だ。準備をしておけ」
「分かりました」
「メーリンお前もだぞ。全力出せずにグレースに負けちまうぞ」
「分かってるって~」
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