211 / 410
本編 学園中等部編
64
しおりを挟むルーカス達が控え室に戻ると、アレイルとヨハン達の試合が始まろうとしていた。
ネオの2回戦目を見逃してしまった。エイル達の試合ということは、エド兄さん達ももう試合が終わったんだ……。
ルーカスとリヴァイは長いこと話をしていた為、ヨハンとグレースの2回戦目と、エドワード、メーリンの3回戦目を見逃してしまったようだ。
「前の席に行きますか?」
「ああ」
2人は試合が見えるように前の方へ行った。控え室や観客席は階段状になっている為、後ろからでも見えないことは無い。だが、やはり前の席の方が良く見える。
前の方へ来て試合を見ると、アレイルは優勢の様だ。すぐに決着が着くだろう。
しかし、ヨハンの方は相手に圧されている。ヨハンの相手は中等部の4年生で体格がよく力もあるようだ。
「おっ、ルーちゃん達戻ってきたのか。遅かったな~」
ルーカス達が試合を見ていると、エドワード達やグレースがやって来た。オーランドは招集場所にいるらしい。
「((コソッ…なんだノアちゃん、もう逢い引きは良かったのか~?」
メーリンはリヴァイにだけ聞こえるように耳元で小声でそう言った。するとリヴァイはメーリンを鋭く睨み、違うとだけ言う。
「何言ったんだよ、お前。ノアすげぇ怒ってんぞ」
「別に~」
メーリンがいるだけで凄く賑やかだね。
「ルーカス、君の友人は先程の試合は負けた」
「そうですか。お教え頂きありがとうございます」
2回戦目の相手も確か1つ上の子だったね。この試合も恐らく……。
「兄上、ネオは長期休暇にアレクサンダーの授業を受けに来ます」
「そうか」
「あとリヴ達とアドルフ達も来るそうです。それから、オーランドとグレースもです」
「分かった。アレクサンダーには私から伝えておこう」
ルーカス達が話していると、観客席から歓声が上がる。アレイルが勝ったようだ。そして、ヨハンの方はまだ続いている。
相手に比べて息の上がりが激しい。ネオの目標は経験値と体力作りだね。
相手の剣がヨハンの剣に強く当たり、そのまま大きく弾かれた。ヨハンの試合も決着が着いた。
ヨハンは3戦1勝、決勝トーナメントには上がれなかった。
少しすると、アレイルとヨハンが控え室に戻ってきた。
「ルーカス殿下、戻られていたのですね」
「ああ」
「テオ殿下、勝てませんでした。2試合とも相手の方にすぐに圧倒されてしまいました。ですが、来年はもっと粘れるように、勝てるように強くなりたいです。
なので、長期休暇の際はよろしくお願いします」
「ああ。授業が楽しみだな」
ヨハンからは悔しさは勿論伝わるが、強くなるという固い決意が感じ取れた。
その後、オーランドとルーカスの2回戦目、アドルフ、ラルフ、グレースの3回戦目が行われた。
グレース以外は皆試合に勝った。
グレースは3回戦目の相手に負けてしまったが、2勝している為、決勝トーナメントへ進出出来る。
「後はルーカスとオーランドの試合のみだな」
「ルーカス様の相手はエルヴィスだったよな?」
「ああ。リオ兄上達の友人らしいな」
ルーカスの3回戦目の相手は中等部4年のエルヴィス・グレン・ハーヴィー。ハーヴィー子爵家の嫡男で、ウィリアム達の友人だ。
他の試合を見た感じだと、細身の為か力技というよりも剣術で攻めるタイプだった。けれど、僕相手ならば、力技も入れてきそうだね。
「オーランド、ハーヴィーはどんな奴だ?」
「アレイル様みたいな感じだ。品性があるから、きっとルーカス様も気に入るはずだ」
「そなた、わざとだな?」
ルーカスはオーランドにエルヴィスの剣術について尋ねたが、オーランドはわざとはぐらかした。
「友人は売れねぇからな。許してくれ」
「((ボソッ……けち」
ルーカスがオーランド達にしか聞こえない声量でそう言うと、皆が慌ててルーカスの方を見た。
「ルーカス殿下、心臓に悪いので辞めてください!」
「……なんの事だ?」
アレイルの言葉にルーカスはわざとらしく尋ねる。すると、皆は小さくため息をついたり、苦笑いしたりする。
「オーランド、そろそろ招集場所に集まる時間だ。ルーカスも次だろう。準備をしておけ」
「はい」
エドワードがそう言うと、オーランドが招集場所に向かった。そしてルーカスも試合の準備をする。
21
お気に入りに追加
727
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。


【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる