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本編 学園中等部編
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しおりを挟む当時の事を思い出すと、ルーカスは口を開いた。
「けれど、カフェだと甘い物が殆どだよね?」
「はい。ですが、最近マカイラ領の城下町で人気のスイーツ店が有るのですが、そこでは男性向けの甘さ控えめの物が取り扱われているんです。長期休暇ですし、キャシーも入れて3人で我が領にお越しになりませんか? 部屋の準備もしておきますので」
確かに、それならばリヴと出かけても怪しまれないよね。マカイラまでは馬車で1日程……。
「エイル、それ、お願いしてもいいかな? 5の月中で大丈夫かい?」
「勿論です! 5の月ですね」
アレイルは嬉しそうに返事をする。
「日程はまた決まり次第伝えるよ。あと、僕とリヴは馬で1日かけて行ってもいいかい?」
「遠乗りか」
「分かりました。では、キャシーは私が転移の魔法で迎えに行きましょうか」
「そうだね、ありがとう。日程はまた4人で話そうか。マカイラ侯爵達の都合もあるだろうけれど大丈夫かい?」
ルーカスが尋ねるとマカイラ領は畜産が盛んの為、それに関しての視察や商人との話し合いがあるが、畜産や農業は比較的、気候や土地が安定した領地に任される。その為、災害の対応等の仕事は余りなく、屋敷での書類仕事が殆どらしい。
「ならば、良いけれど。僕の側近は僕に気を使いすぎる所があるからね。特にリヴだよ。彼は僕に甘すぎると思うのだけど。僕が一緒に死んでと言えば、本当に死にそうだし」
「いや、確かにルーカスが死ねと言えば、あいつは死にそうだが、お前が一緒だと絶対やらねえだろ」
アドルフの言葉に皆が共感する。
少し話をすると、取り敢えずはルーカスのリヴァイをお出かけに誘う計画は整ったのだった。
「なんか、俺達要らなかったな」
「ん? どうして? ラルフ達のおかげで良い案が出たんだ。何より、僕は君達と過ごせて凄く嬉しいよ」
ラルフの言葉にルーカスが微笑んでそう言うと、ラルフはむず痒そうな表情をする。
「((ボソッ…天然人たらし」
ルーカスには聞こえなかったようだが、ラルフの隣にいたアドルフとメーリンには聞こえた様で、共感した顔をしている。
「では、アドルフ達はまだ時間もあるし、兄さん達もここにいるということは暇の様だから、皆でお話しようか」
ルーカスの言葉にエドワード達は少し苦笑いをしながら賛同した。
「今週末の剣術大会はルークも出るのか?」
「うん、出るよ」
ラルフが剣術大会の話を出すと、話題は専らそれになった。
「生徒会からは誰が出んだ?」
「アドルフ、リヴァイ、ルーカス、グレース、それから私の5人だ」
「おっ、今年もグレースは出場するのか~。去年は即効私と当たったからな~」
予選の2、3回戦目で兄弟が当たることは偶にあるらしいが、去年、メーリンとグレースは予選の1回戦目で当たってしまったらしい。
「今年はお兄様と当たっても絶対に負けませんって言われたんだよ~。グレースは努力家だから私も負けてられないんだよな」
メーリンは少し嬉しそうにそう言った。
「メーリン達は今年も出るのだね」
「ああ。あとオーランドも出るって言ってたな。今年からはルークもいるからいつもよりも大変だな」
「そうだな。私もリヴァイとルーカスに負けないように頑張らなければいけないな」
「私達は眼中に無いってか~?」
エドワードの言葉にメーリンが冗談めかしてそう言った。
「無論、油断はしない」
「はぁ~、相変わらずかっこいいな」
メーリンがそう言うと、皆は楽しそうに笑った。
「そういえば、ルー。オスカー家のリタ様とカーソン公爵の嫡男の方がご結婚為さると聞いたのだけど、本当なの?」
ティファニーが不思議そうな表情で尋ねてきた。
「そうみたいだね。この間、その内容の手紙が届いたんだ」
「そうなのね。社交界ではその話で持ち切りみたいなの。カーソンとオスカーの人達が結婚するとは思わなかったわ」
「ルーが2人を合わせたんでしょう?」
「うん。イーサンと前カーソン公爵の謝罪を受け取る代わりにトリー叔母さんのお店に出す果物を安く売って欲しいと言ったんだよ。その担当がイーサンだったんだ」
あれから2人は仕事を一緒にする様になって、仲良くなったようだ。
「巡り合わせって凄いのね」
「そうだね」
その後も色んな話をして時間いっぱいを過ごし、皆が帰る時間になった。
「じゃあ、皆剣術大会、頑張ってね。観覧席から応援しているわ」
「私もティファと一緒に応援しますね」
「「ありがとう」」
ティファニーとソフィアがそう言うと、みんながお礼を言って解散した。
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