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本編 学園中等部編
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しおりを挟むテストが終わった週の土の曜日21の日。アレイルがアドルフ、ラルフ、メーリンの3人の予定を聞き出し、今日集まることになった。その為ルーカスは、皇城の一室に簡単なお茶会とお茶菓子の用意をして、4人を待っている。
皆の予定が空いていて良かった。エイルにお礼を言わないとだね。
ルーカスがそう思っていると、扉の叩く音がなり、モニカがアレイル達の到着を知らせた。
ルーカスが扉を開けようとすると、扉の向こうにある気配が4つ以上あった。
……どうして兄さん達もいるのだろう。
ルーカスが扉を開けると案の定エドワード、ウィリアム、ソフィア、リリアン、そしてティファニーもいた。
「……エイル、偶然かな? それとも教えてしまったのかい?」
「全くもっての偶然です!」
アレイルはルーカスから目を逸らして言う。
「嘘つき」
「申し訳ございません。アドルフ達と話しているところをルカ殿下に知られてしまいました」
「リヴァイの事に対する相談ならば、ティファがいた方が良いだろ?」
それはまあ、そうだけど。
「けれど、どうしてウィル兄さんや姉さん、リリーまでいるんだい?」
「成り行きだ」
「エド兄さんが誘ったのだよね? 恥ずかしいからこっそりとアドルフ達に相談しようと思ったのに……。まあ、取りあえず中に入ろうか。モニカ、悪いけどティーカップを5つと茶葉をいくつか持ってきてくれるかい?」
「畏まりました」
ルーカスが頼むと、モニカは笑って返事をして、調理場へ向かった。そして皆は部屋に入り各々席に座った。
「で、ルーク。私はまだ君の口から報告を受けてないのだけど?」
……ウィル兄さん、何か怒っている?
「僕はリヴに対して恋情を抱いています!」
「はぁ~」
ルーカスがいつも通りの態度で報告をすると、ウィリアムはとても大きなため息をついた。
「え、だめ?」
その反応にルーカスは困った表情で首を傾げる。
「あぁ~、だめじゃないよ。ただルークがノアちゃんに取られるみたいで、嫉妬しているだけ。おめでとう、ルーク」
「おめでとう、なのかな?」
「成長したのだから、おめでとうであっているよ」
「ふふ、そっか」
そんな話をしていると、モニカがティーカップと茶葉を持ってきてくれた。そして、それぞれ好きなお茶を入れて本題に入る。
「それで、相談したいのだけど、リヴァイの好きな物がなにかわかるかい?」
「剣術」
「馬術」
「ルーちゃん」
アドルフ、ラルフ、メーリンがリズム良くそう言った。
「メーリンふざけない」
(ふざけてね~んだけどな)
ルーカスが注意すると、メーリンだけでなく、他のみんなもそう思ったのだった。
「僕がリヴの事を好きだと知ってネオがデートに誘ってみるのはどうかと言ってくれたんだ。楽しそうだから誘ってみようと思ったのだけど、何処がいいのか分からなくて。ティファニー、何かないかな?」
「そうね、あの子衣食住に本当に興味無いのよ。出されたものを食べて、着て、過ごす。こだわっているものと言えば、さっき出た剣術や馬術くらいかしら」
ティファニーは家でのリヴァイの暮らしを思い出し、困ったように言った。
「ルーはどうなの? 最近寮で話をするようになったのよね?」
その言葉にルーカスは寮での会話を思い出す。
「学校や生徒会、剣術、体術、魔法の話が殆どだね。たまに僕の読んでいる本の事やリヴの小さい頃の話を聞くくらいだよ。好きな物の話は出てこなかったよ」
「リヴァイの小さい頃の話? どんな話だ?」
皆がそこに食い付いた。
「ん? リヴのお披露目会や仮名を貰いに行った時の話などかな。幼少期の話を聞きたいと行ったら教えてくれたんだ」
「へぇ、あのノアが」
「ノア様の幼少期は想像が付きませんね」
「確かに、リリーからすればそうだろうな」
リリアンがそう言うと、皆も今のリヴァイからは絶対に想像できないなと思ったのだった。
「うーん、エイルはない? 長年の友人として」
「リヴの好きな物ですか。そうですね、甘いものは苦手ですから……あ!」
アレイルが真剣な表情で考えていると、思い出した様に声を上げる。
「何か良い物があったかい?」
「1番初めに皇族の方々と側近達でお茶会をした日、果物のタルトや甘さが控えめなクッキーがありましたよね。
そのタルトやクッキーをリヴは普通に食べていたんです。いつもは小さい物を1つだけ食べて口を付けていなかったんですが、あの日はむしろ美味しそうに食べておりました!」
……確かに、ショートケーキ等は手を付けてなかったけど、タルトやクッキーは食べていたね。
ルーカスがお茶会の日の記憶を覗いていると、アドルフがこっそりとアレイルに問う。
「((コソッ…あれってルーカスが用意したんだろ? ルーカスに気を使って食べたって事はないのか?」
「((コソッ…いや、さすがのあいつも自分の分でもない嫌いな物を、率先しては食べないだろ。ルーカス殿下に頼まれれば別だろうが……」
アレイルの言葉に、アドルフは納得する。
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