転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

文字の大きさ
上 下
194 / 410
本編 学園中等部編

47

しおりを挟む


 ルーカスは皆の見送りを終えると、アーサーの自室に来た。


 コンコンコン


「ルーカスだよ」


「入れ」


 ガチャリ


 ルーカスが中に入ると、少し落ち込んだソフィアとアーサーがいる。


「ルー、お見送りありがとう」


「ううん」


「ルーカス、こちらにおいで」


 アーサーがルーカスを呼ぶと、ルーカスは2人の方へ行きソファに座った。


「ルーカス、ソフィから事の発端を聞いた。君は皇子だからと政略結婚を選ぶつもりだと。だが、ノアの事を慕っているのだろう?」


 アーサーとソフィアはルーカスが来る前に、何があったのかを話していた。


「君は嫉妬心や欲が少ないのかもしれないな」


「僕はリヴと過ごせるのが楽しくて好きだよ。だから一緒にいたいと思う。これは欲では無いのかな?」


「いいや、それもれっきとした欲だな」


 アーサーは優しく微笑んで言う。


「ルーカスの欲が、一緒にいたいというものならば、恋人になったり、結婚したりしなくても友人のままで良い。だが、君はノアを恋い慕っているのだろう? 何故そう思ったのだ?」


 どうして、恋だと思ったのか……。


 ルーカスは少し考える。そして口を開いた。


「姉さんが、リヴには好きな人がいると言っていて、気になってリヴに誰なのか尋ねたんだ。名前は教えてくれなかったけれど、その人の話をする時に凄く愛おしいと瞳に現れていた。その瞳に、僕は心臓が大きく弾んだ。その人が少し羨ましいと思った」


 ルーカスの表情に特に変化はなく、いつも通りの表情で思い出すように話した。


「それで気付いたのか?」


「ううん。その時は、どうしてか分からなかった。けれどこの間、ヘーゼルに体を触られた時、僕は無意識に、どうせ痛い事をされるのなら、リヴとしたいと思ったんだ。そしたら、リヴが好きな人の話をする時の瞳が浮かんだ。その時にどうして胸が弾んだのか、羨ましいと思ったのかを理解した」


「そうか。きっかけがあの屑というのは解せないが、それで恋だと気付けたのか。ルーカス、君が思ったノアとしたいというのも君の欲だ。
 そしてその欲を満たすために私達は相手に好いてもらおうとする。しかし、君はそうでは無い。君はその欲を隠し、相手を他人を尊重する。自分の気持ちを優先させない。ソフィはそれが辛いのだ」


 アーサーがそう言うと、ソフィアは拳をぎゅっと握って俯いた。


「相手や他人を尊重するのは良い事だ。美徳だ。だが、それで君の気持ちを殺してしまうのならば、私は他人など捨ておけと思う。ルーカスはソフィが君の為に自分を押し殺す事をどう思う?」


「……それは嫌だ。僕なんか放って自分の事をして欲しいと思う」


「それが、今ソフィが君に思っている気持ちだ」


 姉さんも同じ気持ち……。


「ルーは、今までずっとそうやって生きてきたから、すぐに変えるなんて出来ないと思うわ。それでも、私は貴方に自分を優先して欲しいの。リヴァイの事だけでなく、日常生活の事も」


 姉さんの言いたいことは分かる。僕も姉さんの立場なら、姉さんに自分を優先させて欲しいと思うから。けれど……。


「分かった。けれど、自分を優先するというのは、何をすれば良いのかな?」


 ルーカスの言葉に、アーサーとソフィアは嬉しそうにしたが、そこからだったか、と思ったのだった。


「君の好きなようにすればいいんだ」


「好きなように?」


 ルーカスは少し首を傾げて聞き返した。


「そうだ。君のしたい事をするんだ」


「読書をしたいのなら読書をする。お出かけしたいならお出かけする。リヴァイに告白する!」


 ソフィアが満面の笑みでそう言った。


「リヴへの告白以外はいつもしているよ?」


「あら、貴方は私達を誘ってお出かけしてくれないでしょう? 私達と行くのはいやかしら?」


「行きたいよ。けれど、姉さん達にだってしないといけない事があるし、演技のこともあるから」


 ルーカスはすぐに否定してそういった。


「それだ、ルーカス。それを考えないで1度誘ってみれば良い。どうしても無理ならば、ソフィ達もきちんと断る。だから、したいならしたいと伝えて欲しいのだ」


「……うん、分かった。そうしてみる」


「ああ」


「ルー、さっきは怒ってごめんなさい」


「ううん。僕の事を思って言ってくれたんだよね。ありがとう、姉さん」


 ルーカスがそう言うと、ソフィアは勢い良くルーカスに抱き着いてお礼を言った。そしてルーカスもソフィアを抱き返した。


「ルーカス、ソフィアと話したいことがあるから先に部屋に戻りなさい」


「うん。父様もありがとう」


 そう言うと、ルーカスは部屋を後にした。






「お父様、先程は急に押しかけてしまい申し訳ございません」


「ああ。君が急に執務室へ来た時は、すごく驚いたよ。ソフィ、あまり自分を責めるな」


「っ、しかし私は、ルーに自分の意見を押し付けてしまいました……」


 ソフィアはすごく申し訳なさそうにそう言った。


「そうだな。だが、君の気持ちも分かる。ルーカスは他人を優先しすぎた。あの子には幸せになって欲しいのだ」


「はい」


「そういえば、ノアも自覚したのだそうだな?」


 アーサーは悔しそうにそう言った。


「ふふふ、はい。リヴァイが自覚したと知って、私達はお茶会で彼とその話をしました。そしたら彼は、自分がルーに向けている感情に心底嫌悪していたのです」


 ソフィアはあの時のお茶会の事を詳しくアーサーに話していく。


「あの時、ティファがリヴァイに怒った理由が分かりました」


「まったく、だからノアは憎めぬのだ。誰よりもルーカスを大切にするやつだからな」


「はい。ウィルお兄様も認めておられました」


「ノアにはルーカスを誰よりも幸せにしてもらわなくてはならんな」


「そうですね」






しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...