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本編 学園中等部編
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しおりを挟むヘーゼル王家の処分が言い渡されてから、初の登校日。寮のオーウェンの部屋は、半分がすっからかんになり、彼の同室の生徒が1人で使うようになった。
そして、教室に行くとオーウェンの席は綺麗に整頓され、机上には物が1つも無かった。
「((ヒソッ…退学というのは少し可哀想よね」
「((ヒソッ…まあ、自業自得じゃないかしら?」
学校中でオーウェンの噂が流れている。教室にイライアス先生が入ってくると、ヒソヒソと話していた生徒達はすぐに静まった。
イライアス先生はいつも通り授業を始めて行った。
それから1週間後、4の月3の日。テストの丁度2週間前となった。
「お前ら再来週からテストだからなー。ちゃんと勉強しとけよー」
イライアス先生の言葉を聞き、不平不満を垂らす。先生はそれを聞き流して授業を始めていく。
「んじゃこの授業はここまでだ。休憩時間に暴れんなよー?」
1限目が終わるとイライアス先生はそう言って教室を出て行った。
ルーカスは授業が終わると、片付けて次の授業の用意をする。
するとソフィアの所に、クロエが教科書を持ってやってきた。
「あの、ソフィア様、先程の授業で分からない所があったので教えて頂けませんか?」
ステラは真面目だね。
ルーカスはそう思いながら準備を終わらせて、本を読み始めた。しかし、ソフィアがルーカスに話しかけてきた。
「ルー、読書中ごめんなさいね。少しいいかしら?」
珍しいね。どうしたんだろう?
「構いません。どうされましたか?」
「クロエに質問をされた所があるのだけど、私も分からなくて。教えて貰えないかしら?」
もうすぐテストだからね。
「わかりました。どの問題でしょうか」
「これよ」
ソフィアは数学の教科書の問題を指さした。
「どの様に解かれたのですか?」
「どの形の数式を使ってどの様に解けば良いのかも、分からないの」
「この問題は先にこの数式を使います。そして──……」
ルーカスはソフィアとクロエに丁寧に教えていく。
「あっ、答えはこうかしら?」
「はい、そうです。解けましたね」
ソフィアとクロエが嬉しそうに問題を解き終えると、ルーカスもつられて少し雰囲気が柔くなってしまった。
あ……。まあ、大丈夫だよね。
「ありがとう、ルー」
「ありがとうございます、テオ殿下」
2人がお礼を言うのと同時に、扉が開きイライアス先生が入ってきた。
「よーし席つけー」
その日の昼食の時間。ルーカスはリヴァイ達とヨハンと一緒に食べている。すると、ヨハンが少し躊躇しながら、ルーカスに話しかけた。
「あの、テオ殿下。私に勉強を教えて頂けませんか? 苦手な教科がありまして……」
「ん、構わない。12の日の放課後でいいか? 生徒会の仕事が休みになるから」
「はい、ありがとうございます!」
ルーカスとヨハンが勉強の約束をする。そしてどこでするかを考えているとリヴァイが口を開く。
「殿下、私がいてもよろしければ、寮の部屋をお使いください」
「そうだな。どうせ護衛も必要だからな。部屋が良いか。ネオもそれで良いか?」
「はい。ノア様、ありがとうございます」
そしてルーカス達は12の日の放課後にルーカスの寮部屋で勉強をする約束をした。
1週間後の4の月12の日。ルーカスとリヴァイの部屋に、ヨハンがやってくる。
「失礼致します」
「うん。ネオはどの科目が苦手なんだい?」
「数学とリトグシア語です」
今回のテストの科目は、数学、地理、歴史、法律学、ナサニエル語、リトグシア語の6科目と魔法。
その内、地理、歴史、法律学、リトグシア語は100点満点。数学とナサニエル語は150点満点、それと魔法の300満点の合計1000点だ。
「では、先に数学を勉強しようか」
「はい」
それから半刻程数学の勉強をしていった。すると、リヴァイがルーカスとヨハンに紅茶を入れてくれた。
「少し休憩されてはどうでしょうか」
「わあ、ありがとう、リヴ」
「ありがとうございます、ノア様」
ヨハンが1口紅茶を飲む。
「っ、とても美味しいです。ノア様はお茶を入れるのが上手なんですね」
「でしょう? リヴの入れた紅茶は凄くコクがあって美味しいんだ。リヴはなんでも出来て凄いよ」
ルーカスが嬉しそうにリヴァイを褒めると、リヴァイは少し照れて言う。
「多く練習しただけです」
「努力出来る事も凄いことなんだよ。お茶菓子があったよね、取ってくるね。リヴも一緒に食べよう」
そう言ってルーカスは棚の方にむかった。
「((コソッ…テオ殿下に飲んでもらおうと練習されたのですか?」
「((コソッ…見逃してくれ」
ルーカスがお茶菓子を持ってくると、皆で一緒に休憩をした。
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