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本編 学園中等部編
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しおりを挟むルーカスと男子生徒達の揉め合いから1ヶ月が経った。その間も特に問題はなかった。そしてアンジェリーナもリヴァイに話しかける頻度が減り、真面目に仕事に取り組むようになった。
最近は3の月の後半になり、夏が近付き気温も高くなってきた。
ルーカス達のクラスは午後の魔法実技の授業を受けていた。中等部の1、2年は主に魔力操作を習う。2人1組のペアでそれぞれ魔法を発動し、大きさを前の人より小さくしたり、大きくしたりして魔力操作を鍛える。
「お前らー、暑くなってきたから水分補給しろよー」
イライアス先生が全体に向かってそう言った。
「私達も休憩するか」
「ハァ、ハァ、…すみません」
「いや、気付けず悪かった」
ルーカスは魔法実技のペアはヨハンと組んでいる。皇族は生まれ持つ魔力量が多い。加えて今世代の皇子達は平均値を大きく上回っている。
その為2人は、魔力量が大きく違い、今までもヨハンにルーカスが合わせる形だった。しかし夏が近付き、暑さで体力を奪われる為、ヨハンの限界が来るのが早くなったのだ。
ルーカスは氷の魔法を使える為、温度に対して疎い。いつも通りの体調のルーカスは、気温が上がっている事に気付きづらく、ヨハンが疲れている事にも気付けなかったようだ。
やはり、厄介だね。
「ネオ、日陰で休みに行くぞ」
「ありがとうございます」
2人は休憩の為建物の影に向かい、休憩をする。
「すみません、テオ殿下……」
「良い。元々魔力量が違う。加えてこの暑さだ。しかし、私はそれに気付けないからな。だからネオ、隠すな」
そう、ルーカスは人の表情を読むのが得意だ。しかし、今まで人の悪意に晒されてきたせいか、ヨハンは感情を殺すのが上手い。普段なら気付けただろうが、ルーカスは魔力操作に集中し、加えてヨハンは元から汗をかきにくい為、気付かなかった様だ。
「すみません。いつも私が先に限界が来てしまうので、テオ殿下が練習できていないのではと」
「だからと言って、そなたが倒れたら元も子も無いだろ」
「うぅ、すみません」
ルーカスの言葉に、ヨハンは凄く申し訳なさそうに謝った。
やはり、皇族という意識が強いんだろうね。だから言い出せない。まあ、ネオは親しい人相手でも気を使うみたいだけど。メーリンみたいに相手にずけずけ来ればいいのにね。
仕方ない、姉さんにお願いしようか。
「ネオ、少しここで休憩していろ」
「分かりました」
そう言ってルーカスは違う所で休憩しているソフィア達の元へ向かった。
「姉上、少しよろしいですか?」
「あら、貴方から来るなんて珍しいわね。どうしたの?」
「実は──……」
「あら、そういう事なら私もお願いしたいわ。この暑さでは大変だものね。ネオのところに行きましょうか」
「ありがとうございます」
話を終えるとルーカスとソフィア達はネオが休憩しているところに向かった。
「ネオ、夏の間、私は姉上と組む事にした。そなたはナタリー達と組んでくれるか?」
「は、はい。勿論です」
その言葉とは反対に、ヨハンの表情は少し暗くなった。
「はあ、本当に君は。夏の間って言ったよね。夏が終わればまた一緒に組むのだから、体調管理をしっかりしててよ?」
「あ、あの、口調が……」
「誰もいないから良いよ。あと、疲れたらすぐ言う! 良いね?」
「は、はい!」
ルーカスの勢いに圧され、ヨハンは慌てて返事をした。それから少し休憩をした後、魔力操作の練習を再開した。
『実は、暑さと魔力量の差でネオが無理をしているようで。私相手だと、気を使わせてしまって、ネオが倒れると心配なので、ナタリー達と組ませてあげたいのです。それから、姉上は私と組んで頂けませんか?』
本当に、ルーは優しい子ね。今回のは、ただ私の魔力量がルーに1番近かったからだろうけれど。それでも、あの子が私を頼ってくれてよかった。
◇ ◇ ◇
(私の誘いを断り、子爵家風情の奴と組んだかと思えば、次は嫌いな姉と組むのかよ。同じ王子の私と組んだ方が良いに決まってるだろ! なぜそれが分からんのだ! それに、なぜ私が伯爵家の奴らと組まなければならない。絶対に私と組ませてやる。テオは私にこそ相応しいのだ!)
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