転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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本編 学園中等部編

32 sideアンジェリーナ

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 アンジェリーナがイライアス先生の後に教室へはいる。


「丁度良い時に来た。ベニー、私は今この者達に虐められているのだ。助けてくれるか?」


「……そんな風には見えねぇぞ?」


 ルーカスは顔色一つ変えずに淡々とそう言った。ルーカスに詰め寄っていた男子生徒達は呆気に取られた。


「私は生徒会でコールマンを虐めているらしい。そなたら、心当たりはあるか? この者達はコールマンから聞いたと言っているが」


 本当にいらないことをしてくれたわね!


「俺からはそんな風に見えなかったぞ」


「せ、先生がいない時にやったんだろ!」


「先程も言っただろ。仕事を滞らせる者を注意する事が虐めならば、私はコールマンが改心するまで虐め抜いてやると」


「だから! アンジェリーナ様がお前に仕事の邪魔をされたと言っているんだ!!」


 男子生徒の言葉を聞き、イライアス先生は顔を青くする。


 言ってないわよ! あんた達が勝手に勘違いしただけでしょ!


「わ、私! テオ殿下に邪魔をされたなんて一言も言っていません!」


 そうよ、言ってないわ!


「私はただ、分からない所を何度も質問してしまって、テオ殿下によく注意を受けて、仕事も溜まってしまっていると。私、どうすれば良いのか分からなくて、お友達の皆さんに相談したんです……。
 でも、私の言い方が悪くて皆さんに誤解させてしまったようで……。本当にごめんなさい!」


 そう言ってアンジェリーナが頭を下げると、男子生徒達もルーカスに頭を下げた。


 私の計画が全て水の泡じゃない! まあ良いわ。この後リヴ様から告白される予定だもの。


 イライアス先生から昼休みに職員室に来るように言われ、授業が始まった。




 昼休み、アンジェリーナ達が集まると話し合いが始まった。そこにはリヴァイ達もいる。


「お前らは家族への報告と1週間の謹慎だ。テオとエリーもこちらから家族に報告しておく。それから、丁度いい所にいるから聞くが、ノア、お前の恋文が見つかったと言うが本当にお前のものか?」


 ここで聞いたらリヴ様が告白できないじゃない!!


「有り得ない」


 リヴァイがきっぱりと否定した。


 ほら! 照れて言えないじゃない!


「まあ、そうだよな分かった。じゃあこれでこの話は終わりだ。午後の授業遅れんなよー」


 もう! 本当に最悪!! なんでリヴ様まで連れてきたのよ!


 それから数日経っても、リヴァイからアンジェリーナに話しかけに来ることは無かった。

 そして、アンジェリーナのコールマン伯爵から手紙が届いた。


『アンジェリーナへ

 生徒会に入ったのだろう。勉学に励んでいるようで嬉しく思う。


 先日、学園の教員から連絡があった。揉め事があったそうだな。それも当事者になり、相手は第3皇子殿下だと。
 分かっていると思うが、今回の事はアンジェリーナ、君達の方に非がある。しっかりと反省をして次に活かせ。


      父より


 追伸 : 第3王子殿下は群を抜いて頭の回転がとてもお早い。皇族の方々を政治的にも日常的にも、絶対に敵に回すな。
 それから、恋愛も程々にしろ。生徒会の皆様にご迷惑をかけるな。良いな。夏の長期休暇には必ず帰って来い』





 敵に回すなって、化け物は元々派閥が違うのだから敵でしょう? それに、天使の私が嫌われることなんてないんだから、敵に回すわけないじゃない!
 でも、お父様のお願いだもの。長期休暇まで大人しくしておかなくちゃだわ。







 
 手紙を出す数日前、コールマン伯爵夫妻は、皇城に来ていた。


 皇城の謁見の間にはアーサーとルーカス、フレデリック、そしてリヴァイがいた。コールマン伯爵夫妻が謁見の間に入ると、アーサーの雰囲気が少しピリついた。それとは反対に、ルーカスの雰囲気はとても柔らかいものだ。


 第3皇子殿下は、こんな雰囲気の方だったか?


「コールマン伯爵、よく来たな」


「この度は、娘の失態、誠に申し訳ございませんでした」


「学園内で起きたことだ。大目には見る。だが、私の大切な息子から、話があるそうだ」


 アーサーの言葉にコールマン夫妻は驚いている。すると、ルーカスが話し始める。


「先日の揉め事の件は解決したからもう良いよ」


 っ!? 口調が……。


「僕が言いたいのは、コールマンの生徒会での仕事態度。彼女は僕の側近であるリヴの事を慕っているようだ。恋愛をすることが悪いとは思わないよ。好いている相手と話したいというのも理解出来る。
 けれど、限度がある。コールマンの態度は許容の範囲を超えている。
 このままでは、いずれ彼女を生徒会から追い出す事になるだろうね。そうなれば、彼女にも家名にも傷が付く。それは嫌、だよね?」


 ! ならば、矯正しろということか。第3皇子殿下も凄い圧力だ。


「娘には言って聞かせます」


「そう、それは良かったよ」


 ルーカスからの圧が消え、また雰囲気が柔らかくなると、コールマン伯爵夫妻はほっとした。


「それから、気になっているだろうから教えてあげるね。これが僕の素だよ。それに、僕と父様達は仲が悪いというのは嘘だよ」


「私共に教えてしまってよろしいのですか? もし、私共がばらしてしまっ……」


 ゾクッ!!


「それ、本気で言っているのかい? まあ、ばらしたければばらしても構わないよ。君達の立場が悪くなるだけだからね」


「愚問でした。申し訳ございませんでした。一切他言致しません」


「そうだね。約束だよ?」


「「はい」」


 謁見が終わると、コールマン伯爵夫妻は皇城を後にした。


 もし、私達が他言すれば、皇族を裏切ったことになる。そんな事になれば、長く皇帝派であったコールマンには立場がなくなってしまう。それを理解した上で私達に素を見せたのか……。
 もしこれが第3皇子殿下の独断ならば……。


 コールマン伯爵夫妻は、ルーカスを敵に回す事は危険だということを悟ったのだった。





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