転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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本編 学園中等部編

30 sideアンジェリーナ

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 私の名前はアンジェリーナ・エリー・コールマンよ。この世界は、私を中心に回っているの。だって、私は天使だもの。


 アンジェリーナはコールマン伯爵家に第2子として生まれた。上には年の離れた兄がおり、後継者としての教育も終盤に差し掛かっている時にアンジェリーナは生まれた。

 アンジェリーナの両親は、彼女の兄であるエイダンには、それは厳しかった。後継者としての教育に力を入れて、余りエイダンと家族らしい会話をしてこなかったのだ。それでも何年も共に過した血の繋がった息子だ。両親は彼の事を愛しているし、エイダンもまた、両親を愛している。それは互いに分かっていた。エイダンが後継者として育つと、両親も身の負担が降りたのか、徐々に優しく接するようになってくる。だがやはり少しの溝ができてしまっていた。


 それに気付いた時、両親は後悔した。もっと早く、気付いていればと。その為、両親は数年後に生まれたアンジェリーナには、それはもう優しく甘やかして接した。エイダンもまた、自分と両親のようになって欲しくないと思い、アンジェリーナを甘やかした。それが行き過ぎたものだと気付かずに。




 アンジェリーナは生まれた時から欲しいと言えばなんでも手に入った。玩具に衣服、アクセサリー。

 それでも、両親は厳格だった。その両親に育てられたエイダンもまた、厳格な人間に育った。
 アンジェリーナにも悪いものは悪いのだとしっかり叱る。その為アンジェリーナも小さい頃は少し我儘でも、優しい性格をしていた。それが変わったのはアンジェリーナが5歳になり、仮名をもらいに行った時からだ。


 アンジェリーナには、聖の魔法の素質があった。聖の魔法を持つ者は珍しく、家族だけでなく、領地の者達にも賞賛された。アンジェリーナはそれに有頂天になった。自分は特別なんだと、皆が自分を賞賛し愛しているのだと。

 そして5歳になるアンジェリーナは神殿へ仮名を貰いに行く。アンジェリーナが貰ったエリーという名は、輝く光という意味がある。ナサニエルでは光とは国神のルミナスを表す。その光という意味を持つ名をルミナスから与えられ、アンジェリーナの有頂天に拍車をかけたのだった。


 エリーは輝く光という意味があるって、辞書で見たもの! 私は神にも愛されているんだわ!


 そしてアンジェリーナのお披露目会で、彼女は皆に自慢をした。


「私の仮名ね、エリーって言うのよ! エリーは輝く光って意味があるの!」


「エリー様はとても愛らしい方ですから、ルミナス様もその名前を与えて下さったのですね」


 お披露目会に来ていた他の貴族も、愛らしい容姿をした素直なアンジェリーナに、好感を持っているため、アンジェリーナの事を沢山褒めた。


 その日から、アンジェリーナの我儘はエスカレートした。人の物を欲しがったり、手に入らないと泣き喚いたり。それを両親やエイダンが叱ると、アンジェリーナはそれを素直に聞いた。いや、聞いた振りをする。

 アンジェリーナは頭が良かった。我儘放題をすれば、家族が自分の言うことを聞いてくれなくなると分かっている。だから、家族の前ではいい子の振りをする。
 そして、使用人や自分を怒る事の出来ない相手に、無理難題を押し付けた。


 そんな生活をして、10歳になった頃、アンジェリーナは家族に本性が知られること無く、学園の寮に入った。そして学園の入学式の日、アンジェリーナは道に迷ってしまい、遅刻しそうになっていた。


 どうしよう、迷っちゃった。先生はきっと待ってくださるわ。けれど、皆を待たせるのは、皆に愛される天使として良くないわ。


「おい、初等部の者か? こんな所で何をしてるんだ」


 アンジェリーナが迷っていると、教員と1人の生徒がこちらに歩いてきた。教員がアンジェリーナに声をかけた。


「あ、あの、私、迷ってしまったみたいで」


「迷子か。ここは中等部の教室がある棟だ。ノア、お前生徒会だろ。送って行ってやれ」


 どうやら、アンジェリーナは間違って中等部の棟に来ていたらしい。教員と一緒にいたのは、当時、中等部4年のリヴァイだった。


「講堂に行かなくてはいけません」


 リヴァイはそう言うと、教員の方を向き、自分で行けと言う顔をした。


「相変わらず冷たいな。私は今から入学式のリハーサルがあるんだ。頼む、行ってくれ」


「はあ、分かりました。付いて来い」


 そう言うと、リヴァイは初等部の棟の方へ歩いていく。アンジェリーナも慌てて付いて行く。


 凄くかっこいい人! ノアって呼ばれていたから、公爵家のリヴァイ・ノア・ムハンマド様ね。確か、化け物の第3皇子の側近をしているって、皆が言っていたわ。


「あの、ノア様! ありがとうございます。私、アンジェリーナ・エリー・コールマンって言います! アンジェリーナと呼んでください!」


「ああ」


 リヴァイは、前を向いたまま、返事をしてそのまま歩いていく。


 ああって、それだけ? 皆だったら、嬉しそうに名前を呼んでくれるのに。あっ、きっとこんな可愛い私と話す事に照れているんだわ! 今まで化け物と一緒にいたんだから当たり前よね。私から話しかけてあげなくちゃ!







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