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本編 学園中等部編
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しおりを挟む「そ、そんなはずありません!! 確かにノア様のアンジェリーナ様宛の恋文が見つかったのですよ!?」
恋文……。そんなものまで用意したんだ。よくやるね、そんな面倒な事。
「その恋文に、ムハンマドの封蝋印は押されていたのか?」
封蝋印は、それぞれの家紋の形の物があり、それを使える者は直系の者達だけだ。代理であっても他の者達は使うことが出来ない。
「そ、それは……」
彼らはルーカスの言葉に狼狽えた。
「だ、だが! いじめの方はどうだ! 私はアンジェリーナ様からご相談を受けたのだぞ!」
「私が彼女の仕事の邪魔をしたと言ったな? 先程の話もそうだが、そんな事をして私に何の利点がある」
「アンジェリーナ様の仕事を邪魔して仕事を遅らせて、彼女が他の生徒会の方々に怒られて苦しんでいるのを見て楽しんでいるのだろ!!」
その言葉に、ルーカスの表情筋が一切仕事をしなくなった。
(ルー、本気で怒っているわね)
「コールマンは、初等部の人間でもこなせる様な仕事しか任されていない。にも関わらず、同じ事をほんの一刻で、十数回も特定の生徒に対し質問に行く。見回りの仕事では、くだらん雑談ばかり話し仕事に集中しない。仕事を滞らせているのはどちらだ。
そんな人間を注意する事が虐めだと? ならば、私はコールマンが改心するまで一生虐め抜いてやろう」
ルーカスが冷めた表情でそう言った。生徒達は、ルーカスの怒りに対し、怖気付く。
「そ、そんな訳……!」
「第一、確証もなく問い詰め、要求も言わずにただ人を貶め辱める。そなた達のしている事の方が、余程虐めという名が相応しいだろう?」
「なっ!?」
ガラガラ!
「おい、席つけ~。……何してるんだ?」
ルーカス達が話をしている間に、授業の開始時間になり、イライアス先生がやって来た。その後ろにはアンジェリーナの姿もある。
「丁度良い時に来た。ベニー、私は今この者達に虐められているのだ。助けてくれるか?」
「……そんな風には見えねぇぞ?」
ルーカスは顔色一つ変えずに淡々とそう言った。ルーカスに詰め寄っていた男子生徒達は呆気に取られた。
「私は生徒会でコールマンを虐めているらしい。そなたら、心当たりはあるか? この者達はコールマンから聞いたと言っているが」
その言葉に、アンジェリーナは驚いた表情をする。
怒りの感情が隠しきれていないよ。何に対して怒っているのかな。
「俺からはそんな風に見えなかったぞ」
「せ、先生がいない時にやったんだろ!」
「先程も言っただろ。仕事を滞らせる者を注意する事が虐めならば、私はコールマンが改心するまで虐め抜いてやると」
「だから! アンジェリーナ様がお前に仕事の邪魔をされたと言っているんだ!!」
男子生徒の言葉を聞き、イライアス先生は顔を青くする。
「わ、私! テオ殿下に邪魔をされたなんて一言も言っていません!」
……本当に、性格罪悪だね。
「私はただ、分からない所を何度も質問してしまって、テオ殿下によく注意を受けて、仕事も溜まってしまっていると。私、どうすれば良いのか分からなくて、お友達の皆さんに相談したんです……。
でも、私の言い方が悪くて皆さんに誤解させてしまったようで……。本当にごめんなさい!」
アンジェリーナは深く頭を下げて謝った。
「誤解……。そう、だったのですね。テオ殿下、私達の誤解だった様で、申し訳ございません」
そう言ってルーカスに対して詰め寄ってきていた生徒達は頭を下げて謝罪をした。学園内の為、普通の貴族相手ならばこれで済んだだろう。だが、ルーカスは皇族。皇族に対し濡れ衣を着せて、暴言を吐いたんだ。誤解でしたで済むはずがない。
「取り敢えず授業を始めるから、席つけ。お前らは昼休みに職員室に来い」
イライアス先生がそう言うと席に着き、授業が始まった。
そして昼休み、教室にルーカスの側近達がやって来た。
「職員室に行かなくてはならなくなった。先に食事をしてきて良いぞ」
「いえ、ご一緒致します」
「分かった」
そうしてルーカス達が職員室へ行くと話し合いをした。その末、男子生徒達には家族への報告と1週間の謹慎が言い渡された。コールマンの方は謹慎はなく、家族への報告のみとなった。
そして念の為、リヴァイには、コールマンへの恋文の件の真偽を尋ね、リヴァイとは一切なんの関係もなかったことが明らかとなった。
今回の件の噂が広まるまで、そう時間はかからなかった。
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