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本編 学園中等部編
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しおりを挟む確か、姉さんはお茶会を開くと言っていたよね。どうして僕の部屋に来たんだろう?
先触れもなく、突然やってきたソフィアにルーカスはそう思った。
「あのね、ルー。今、お茶会を開いているのだけど、そこにリヴァイも来ているの。リヴァイが貴方とお話したいと言っているから貴方も来ない?」
……リヴが言うかな?
「僕も行っていいのかい? 友人を呼ぶと言っていたけれど」
「勿論よ! ルーの素を知っている人達しかいないから安心して。ほら行きましょう!」
そう言うと、ソフィアはルーカスの手を掴んでお茶会をしている庭園に行こうとする。
「え、待って、姉さん! 僕、部屋着だから着替えないと。ローブも着ていないし」
ルーカスがそう言ってソフィアを引き止めると、ソフィアは腕を掴みながら、振り返り、ルーカスの姿をじっと見つめる。ルーカスは首を傾げ不思議そうな顔をする。
何をしているんだろう?
「大丈夫よ、ルー。今日の貴方も可愛いわ!」
ソフィアは笑顔でそう言うと、そのまま歩き出してしまった。
「えっ、だめだよ。怒られない?」
「貴方は外出用の服だと、神々しくなってしまうもの。それくらい質素の物でも天使に見えるのよ? 部屋着の方が近付きやすいわ」
「ふふふ、何それ」
ルーカスはソフィアの言葉に可笑しくなって笑ってしまった。
まあ、良いか。後で怒られよう。
「本当よ? 貴方、外で見ると神々しくて恐れ多いもの。ふふ」
「それは姉さんも同じだよ。今日もとても綺麗だ」
「まぁ! 貴方は可愛いも綺麗もかっこいいも持っているのね。私の弟は今日も完璧だわ!」
そんな風に話しながら歩いていると、前からセバスが歩いてくる。
「ソフィア様、お茶会の途中では? どちらに行かれるのですか? っ!? ルーカス殿下、それは部屋着では……?」
「後で父様に怒られに行くから、今は見逃して欲しいな。だめ?」
ルーカスの言葉に、セバスは凄く考え込み、セバスも庭園まで付き添うことで、しぶしぶ了承してくれた。
「じゃあ行きましょう!」
ソフィアは楽しそうにそう言って庭園まで3人で向かった。
庭園に着くと、ナタリー達が楽しそうに会話をしていた。
「あっ! こんにちは、ルー様」
「こんにちは、僕もお邪魔しても良いかな?」
「はい、もちろんです!」
「ノア様のお隣が空いておりますよ」
「うん、ありがとう」
ルーカスがリヴァイとヨハンの間に座る。するとリヴァイは、驚いた表情をしている。
「どうしたの?」
「殿下、そちらの服は、部屋着では……?」
その言葉に、皆が凄く驚いた表情をしている。
「うん。そのまま来てしまった。後で父様には怒られに行くから、内緒にしていてくれないかな? お願い」
リヴァイは、セバスの方へ目を向けた。
「ノア様は、断れますか?」
「……無理だ」
「私も無理でした」
「お祖父様でもテオ殿下には敵わないのですね」
皆のやり取りに、ルーカスは首を傾げた。
「リヴァイ、ルーが来たのですよ。話をしてください」
「姉さん、その事なのだけど。本当にリヴが僕と話したいって言ったのかな?」
「あら、やっぱり気付いていたの?」
「うん。けれど、僕はリヴと話をしたいから、来てしまった」
それを聞き、ソフィア達はリヴァイに温かい視線を送る。
「けれど、ルーカス殿下は、寮でも読書をしておられると。ノア様に話しかけないのですか?」
「リヴはずっと僕と共にいるからね。自室くらいは、1人の時間がないとつかれてしまう。ただでさえ昼間は僕の事で気を使っているんだから」
互いに気を使って話しかけなかった為、会話か出来なかったことを知り、皆は、付き合いたての恋人か! と突っ込みたくなった。
「皆で楽しく話していたのに、邪魔をしてごめんね、リヴ」
「いいえ。邪魔などではございません。私が殿下とお話したいと思っていたのは、事実、ですので……」
リヴァイは少し照れたように言う。
「そう、良かった。ふふ、リヴ、耳が赤いよ? 照れているのかい?」
ルーカスがリヴァイを揶揄うように言った。
((獲物を狙う鷹の目をしてる!?))
本当にリヴは、可愛いなぁ。
「では、寮に戻っても、沢山話しをしようね」
「……はい」
その後、皆で会話をしながらお茶会を過し、お茶会が終わった。そして、ルーカスはアーサーの元へ行き、軽い注意を受けて自室に戻って行ったのだった。
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