転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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本編 学園中等部編

16 sideリヴァイ

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「違うわ、エド。リヴのせいじゃないの。こんな事で、大事な事だけどだからこそ、泣きたくなかったのに。ごめんなさい、すぐに止めるわ」


 ティファニーは必死に涙を止めようとしている。しかし、止めようとすればするほど、その瞳から溢れてきてしまう。
 それを見てリヴァイは急いで引き返し、ティファニーに近付いた。


「姉上、申し訳ございません……。私は口下手で、女性を慰める言葉は分からないのです」


 私はどうすればいいのだ……。


「ふふ、それじゃあ女性ではないルーを慰めるのは上手なのね」


「っ、男性を慰める事も下手な様です。殿下は自分が落ち込んでおられても、私の心配をしてしまうお方ですので」


「確かにそうね。私の弟はなんて頼りないのかしら、ふふふ」


 ティファニーはリヴァイの言葉に泣き笑いの表情になり、涙は止まっていた。


「さっきのは本当にリヴのせいではないのよ。リヴが不憫で何より、そんな貴方の気持ちも考えないで、酷いことを言ってしまったわ。ごめんなさい」


「私こそ、姉上のお心に気付かず自分の気持ちをぶつけてしまいました。申し訳ございません」


「もう! リヴは優しすぎるわ! 今回のは私が悪いの。貴方が謝る必要なんてないの!」


「こいつが優しいのはティファニーとルーカスにだけだ。他の奴には礼儀は尽くすが死ぬ程冷たいからな」


 アドルフの言葉に、エドワード達が頷き賛同していく。すると、ティファニーが少し考え込んでから口を開いた。


「リヴ、話を掘り返して悪いけど、私の話を聞いてくれないかしら。そして貴方の意見も聞かせて」


「分かりました」


「私はね、貴方にルーへの気持ちを大切にして欲しいと思っているの。勿論、家の問題もあるわ。けれど、お父様もお母様も、貴方の気持ちを優先させると思う」


 ティファニーは、後継者の件は、もしもの時は自分の子を付かせてもいいと言った。


 皇族の血は特殊だ。結界と封印の魔法は皇帝の座に付いてから産まれた子にしか現れない。
 エドワードが皇帝になり、ルーカスやウィリアムが子を作ったとする。二人の子供には結界と封印の魔法は発現しない。そしてその子供達の孫達の代には、ルーカスやウィリアムの面影すら一切残らなくなる。
だが、ルーカスとウィリアムの母方の血と、2人の相手の家門の血が色濃く発現する。
 2人の子孫に残るのは、2人の母方の血のみで皇族の血は全て消えてしまうのだった。

 だが、反対に言えば、母方の家門の血を色濃く継がせることが出来るということ。もし、ティファニーの第2子以降の子がリヴァイの養子に入ったとする。最初はムハンマドの資質を持つ者は生まれないが、何代か後にはまたムハンマドの血が戻って来るという事だ。


「だから、後継の事とか、家門の事とかは置いて、貴方がどうしたいのかを教えて欲しいの」


 家門ではなく私がどうしたいのか……。


「私は、殿下に対してこの様な感情を抱いている事を申し訳なく思っています……」


 リヴァイは暗い表情でそう言った。その言葉を聞き、ティファニーもリヴァイ自身が望んでいないのであれば、仕方がないと思った。


「しかしそれと同時に、殿下の隣に私以外の者がいるのを見ると、とても苦しくなります。同じ側近であるエイルやキャシーにも嫉妬をしているのだと思います」


 リヴァイはバツが悪そうに言った。それとは反対に、リヴァイの言葉にティファニー達は嬉しそうにする。可愛い弟を取られる事を嫌がっていたウィリアムまで喜んでしまっていた。


「殿下に嫌われてでも、ずっと私のそばにいて頂きたいと思ってしまっています」


「無理矢理にでも手元に置いておきたいということか?」


 っ、無理矢理に……。それでも……。私は、こんなにも浅ましい人間だったのか。


「……申し訳ございません」


 リヴァイは自分に対する嫌悪感が隠しきれず、表情に出ていた。


「はあ、よくそれでルーカスを諦めるなんて言えたな」


「ふふ、そうですね、お兄様」


「……お怒りにならないのですか?」


 エドワードが呆れたように言い、皆がそれに賛同した。そして、自分に対し怒りを見せないエドワード達にリヴァイは困惑した。


「怒るも何も、惚れている相手にそう言う感情を持つのは当たり前だろ」


「第一、お前がそんな事を出来る訳がないでしょ」


 ……何故だ?


「これだから自己評価の低い人は……」


 リヴァイが拍子抜けすると、ウィリアムが呆れたように言った。そしてウィリアムの雰囲気がいつもの穏やかなものに変わる。


「ルークの事でこんなに悩む誠実な君が、ルークの嫌がる事を出来るとは思わない。もしそんな事があるとしたら、それはどうしようも無い何かが起きた時だろうね」


「だからノア、自分の気持ちに素直になれ。そしてルーカスにお前を惚れさせろ。それが一番お前にとって楽な選択だ」


 ウィリアムとエドワードの言葉に、リヴァイはとても意外だという反応をした。


「君は知らないと思うけど、私達は君の事も友人だと思っているからね。友人の恋愛は応援する。相手がうちのルークという事は気に食わないけど」


 友人……。


「何か反応してくれると嬉しいのだけど。あ、それから、私は君の事をノアちゃんと呼ぶ事にしたから」


「私とエドお兄様はリヴァイと呼ばせて頂きますね」


「友人だからな。だからリヴァイも私達のことを本名で呼べ。愛称でもいいが……」


「本名で呼ばせて頂きます」


 リヴァイが即座に答えた。


「頑張ってルーカスを落とせ」


 殿下を落とす……。


「ふふ、今はいつも通りで良いと思いますよ」


「っ、ありがとうございます、ソフィア様」


「リヴ、自分の気持ちに素直になってね」


「……はい、姉上」


 エドワード様達は私の浅ましい気持ちを許して下さるのか。私は、自分を許せるのだろうか、許しても良いのか……?






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