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本編 学園中等部編
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しおりを挟む初日の魔物退治が終わり、本部テントに戻ると、ルーカス達が途中で会った騎士達はアレクサンダーにこっぴどく叱られていた。そして彼らには次の日からも、魔物退治後に村へ水を与えに行くという罰が与えられた。
その後1週間、ルーカス達は魔物の退治と呪素の塊の浄化を手伝った。そして周辺の村へ音、若しくは光の魔法使いを派遣し、大地を浄化して、村の井戸や畑に水が復活した。
魔物の数も呪素の塊の大きさも減った為、あとは騎士団と魔法士団に任せて皇城に戻ることになった。
「殿下方、お力添え下さり誠にありがとうございました。お気をつけてお帰り下さい」
アレクサンダーからの労いの言葉を貰い、ルーカス達と側近達はレイモンド家の人達の転移の魔法で皇城まで帰った。
皇城に着くと、もう辺りが暗くなっている為、アドルフやリヴァイ達は皇城の客室に泊まることになった。そしてアーサーから夕食を招待された為、食堂で一緒に夕食を取る事になった。
「皆ご苦労。急な要請にも関わらず向かってくれて助かった。今日は城でゆっくり休んでくれ」
「大変恐縮です。今後もレオ陛下のご命令とあらば、迷いなく従う所存にございます」
アーサーの労いの言葉に、リヴァイが気後れすることなく答えた。この場では皇族を除けばリヴァイが1番身分が高い。ムハンマドは宰相家である為、公爵家という立場ではあるが実質的に、他の公爵家よりも身分が高い。その為、アーサーからの皆への労いの言葉に答えるのはリヴァイがする事になる。
そしてリヴァイが"陛下の命令"ではなく"レオ陛下の命令"とわざわざアーサーの名を出したのは、自分は皇帝の命令ではなく、アーサーの命令ならば聞くという意味だ。
それはアーサーを認めてはいるが、相応しくないと判断すれば、皇帝であろうと命令には従わないという意味でもあった。
もし他の貴族達がこんな発言をすれば不敬に当たる。しかし、アーサーはリヴァイの発言に感心した様子でいる。それはリヴァイが時期宰相だからだ。
時に宰相は、皇帝に対し苦言や小言を言わなければならない。その為、皇帝だからと臆していれば、それこそふさわしくない事だ。
アーサーはリヴァイの高い能力を時期宰相として、自分の右腕になる者として認めているのだろう。例え可愛い息子を任せる相手として認める事が出来なくても……。
ーーーーーーーーーー
ここまでお読み頂きありがとうございます!(´▽`)
字数が全然足りなかったのでリヴァイ視点のお話と組み合わさせて頂きます。
引き続きご覧下さい( ̄^ ̄)ゞ
sideリヴァイ
時は少し遡り、ルーカスが学園の寮に入った日。リヴァイとルーカスは一緒に湯浴みをした後、勉強をしたり本を読んだりして時間を使い、就寝の準備をした。
「ねえ、リヴ。角と翼を出してもいいかな?」
「勿論です。殿下が出したいと思われた時に出して下さって構いません。私に気を使う必要などございませんので」
「ありがとう。それから、朝だけど、僕、寝起きの機嫌が悪いみたいで、君に悪態をついてしまうかもしれないんだ。ごめんね」
「そうなのですね。問題ございません」
「ありがとう。おやすみ、リヴ」
「おやすみなさいませ」
挨拶をすると2人はベットに入り、明かりを消した。
殿下とまた湯浴みをご一緒する事になるとは。それにしても、私は殿下に対して何を言ったんだ。いや、まず殿下にあんな事を考えている時点でおかしい。
肌が白くて美しいなどと……。あまつさえ私は殿下に触れたいと思っていた。それではまるで、殿下を襲った者達と同じではないか。
殿下は私と触れ合うことに安心感を覚えて下さっている。それなのに私がこの様な事を考えている事が知られれば、いや、こんな事を考えている私と触れ合えば、殿下は怯えて私を拒絶してしまわれるかもしれない。
リヴァイは、怯えて震えたルーカスを思い出し、自分からは触れる事がないようにと心に誓って眠りについたのだった。
バサァー
次の日の朝、リヴァイは卯の刻の少し前に目を覚ました。そして日課である剣術の鍛錬をしに行こうと準備をし、剣を持って部屋を出ようと扉に近付いた。その時、リヴァイの視界の端にルーカスが寝ている姿が目に入った。
っ!? 殿下、なのか? 凄く、美しい……。
ベットには、翼と角を出し、クマのぬいぐるみを抱えて眠っているルーカスの姿があった。
リヴァイはルーカスに見惚れ、思わず近付いて触れそうになってしまった。
っ……! 私から触れないと就寝前に心に刻んだばかりだろう。
リヴァイは気を取り直して、扉を開けた。すると、ガチャリという音と共にルーカスが目を覚ました。
「ぅうん……うるさい」
ルーカスが起き上がり、リヴァイを睨みながら言った。
「っ、申し訳ございません。鍛錬に行こうと」
「そう、早く行っておいで」
ルーカスはリヴァイが言い終える前に素っ気なく言った。リヴァイはもう一度謝り、部屋を後にした。
本当に寝起きは不機嫌になられるのだな。
その後半刻程で鍛錬を終えリヴァイが部屋へ戻ると、ルーカスの機嫌が戻っていた。
……皇女様方が天使だと言う理由が分かるな。
「おはようございます、殿下」
「おはよう、リヴ。……ごめんね。凄く態度が悪かったよね」
「いえ。事前にお教え頂いておりましたので。寧ろ、物音を立ててしまい申し訳ございません」
ぎゅっー!
っ!?
「リヴは本当に優しいね」
ルーカスは嬉しさのあまりリヴァイに抱きつき、リヴァイのお腹にぐりぐりと頭を擦り付けた。
可愛らしい方だ。
リヴァイはそう思うと、ルーカスの頭を撫でていた。それに気づき、慌てて手を離した。
「も、申し訳ございません……!」
「ん? リヴ、もっと撫でて?」
ルーカスはリヴァイの手が離れたことに気付き、少し寂しそうな表情をした。そしてリヴァイの手を取り自分の頭に乗せて、そう言った。
っ、ああ、可愛らしい。
その後少しの間、ルーカスはリヴァイに抱きつき、リヴァイはルーカスの頭を撫でていた。
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