転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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本編 学園中等部編

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 馬で少し駆けると、森の開けた所に若い騎士達と魔獣が戦っているのが見えた。


「味方10名、内負傷兵3名。2名戦闘続行、1名重傷。クマ2体を3名、オーガ4体を2名、ウルフ5体を4名で戦闘中」


 クマの魔獣と戦っている3名の内2名が腹や背中に怪我を負っている。重傷の騎士は全身から血を流し、動けないでいた。


「リヴとエイルでオーガ4体を相手する。オーガを相手しているそなたら2人は、クマの方を援護しろ」


「「了解」」


 ルーカスが声をはりあげてそう言った。


「テオ殿下……!? お、お待ちください! いくらノア様でもまだ学生……」


「歳は関係ない。命令だ」


 オーガと戦っていた魔法士がルーカスの命令に戸惑って声を上げたが、ルーカスがその魔法士を睨み従わせた。
 リヴァイ達がオーガの元へ行くと、オーガと戦っていた騎士と魔法士は、クマの魔獣の方へ向かう。


「キャシー、ウルフの方を援護しろ」


「了解」


 ルーカスは倒れている重傷の騎士の元へ向かう。


 息はある。けれどこのままでは危ないね。


「この中に光の魔法が使える者はいるか?」


「使えます!」


 クマの魔獣と戦っている1人の魔法士が答えた。


「この者を治療しろ。ついでにそこで死にかけてる2人もだ」


「それでは戦力が……!」


「クマは私が一体引き受ける。2人いれば倒せるな?」


「おひとりでは危険です!!」


「結界がある」


「……! ……分かりました。治療します」


 魔法士と騎士2人は重傷の騎士の元へ向かった。

 それを見てルーカスは指笛に魔力を乗せ、1体のクマの魔獣を自分の方へ引きつける。剣を抜き、クマが振り下ろしてきた腕を避け、クマの首元へ剣を振り、頭をはね飛ばした。


「……しゅ、瞬殺」


 リヴァイ達の方もオーガを倒した様でウルフの方へと援護に向かっている。少しするともう1体のクマの魔獣とウルフも討伐された。


「怪我はどうだ?」


「傷が塞がり、気を失っている彼も時期に目を覚ますと思います」


「そうか。ならばそなたらも共に休んでおけ」


「い、いえ、休んでいる間に村の方へ魔物が移動してしまうかもしれませんので」


「私の鷹が見張っている。何より、客がいないと虚しいだろ」


「……え?」


 そう言うとルーカスは琴を出した。騎士と魔法士達は呆気に取られた。
 だが、ルーカスは気にせず古琴で【癒心音(ゆしんいん)】を弾いていく。


 癒心音は人の心を癒したり、大地や植物を癒す効果のある曲だ。その為ルーカスの琴は、大地を癒すと同時に、騎士や魔法士達の長期戦で疲弊した心も癒していた。




 それから少しの間琴を弾き、大地を浄化し終える頃、気絶していた騎士が目を覚ました。


「ぅゔ……。テオ殿下、申し訳ございません」


「目覚めたか。そなたらに聞きたいことがある。馬はどうした」


 ルーカスが騎士達に問うた。
 ルーカス達が援護に来た時から、彼らの馬が見当たらなかった。足が無ければ、魔獣だらけのこの森を進むのは死にに行くのと同じだった。


「……連日酷使したため、馬の体力が限界で、その…村の近くで休ませております」


 えっ、村の近く……?


 騎士らは後ろめたそうに言った。 ルーカス達が今いる場所は、村からかけ離れた森の奥だ。彼らは戦いながらここまで歩いてきた事になる。
 ルーカス達の顔には驚きと呆れそして怒りが含まれた。


「それは、ジル殿の命令か?」


「い、いえ! 違います!」


「まさかアレクサンダーがそんな指示を出すとはな。私はアレクサンダーの元へ行く」


「お供致します、ルーカス殿下」


 ルーカスとキャサリンは馬に乗って本部のテントがある方向へと走る。


「お、お待ちください!!」


「本当に違うんです! 私達が勝手にした事なんです!!」


 騎士達がルーカス達を引き留めようと叫んだが、2人はその言葉を無視して馬で駆けて行ってしまった。


「ノア様……! お願いします、どうか殿下をお止めしてください!!」


「本当に団長の指示では無いのです!!」


「必要ない」


「ご自身で追いかけに行かれれば良いのでは?」


 ルーカス達が見えなくなり、騎士達はリヴァイにルーカスを止めるようお願いした。
 しかし、リヴァイもアレイルも止めに行く気がない様だ。


「馬無しでは殿下に追いつけません。お願いします、ノア様!」


「お前達には馬がない。それは何故だ?」


「っ、それは……」


 リヴァイの問いに騎士達は口ごもる。


「お前達は足を捨てた。足がなければ緊急時に報告にも行けない。殿下をお止めしたいのならば、村まで馬を取りに行けば良い」


「今から追いかけたとて、ルーカス殿下に追い付くことは不可能だとは思いますが」


 リヴァイとアレイルの言葉に、騎士達は自分達がした行いがどれ程無謀な事だったのかを理解した。







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