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本編 学園中等部編
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しおりを挟む次の日の申の刻、アーサーの執務室にはルーカス達とフレデリックが集まっていた。
「揃ったな。3日前、騎士団と魔法士団による調査で魔物の凶暴化を促していたのがニール伯爵家とヴィンセント子爵家だということが分かり、関わった者達を捕えている」
「父様、その2家は他領よりも魔物による被害が多いと聞いておりますが」
「そうだ」
ニール家の思の魔法は、思考を操り、ヴィンセント家の幻の魔法は、幻影を見せる。
アーサーの話によると、自領や周辺領の森にいる魔物に、思の魔法や幻の魔法を使って、凶暴化させていた様だ。
魔物の退治の為、今までこの2領の調査はあまり進んでいなかった。しかし、1週間ほど前から一時的に魔物の出没が激減した。
その間に調査を進めると、この2家の者達が魔法を使っていた事が分かった。
騎士団はすぐに関係者達を捕えたが、2領で魔物が凶暴化しすぎた為か、森に呪素の塊ができ、魔物が一斉に出没しだした。
「現在もアレク達が魔物を討伐し、光と音の魔法で大地を浄化しているのだが、ニール領で人手が足りていないようなんだ。学園が始まってすぐで悪いが、明日から1週間程ニール領に行き、手を貸してくれ」
「「承知しました」」
「分かった」
明日から1週間は学園を休み公務に励む事になった。ニール領には側近であるアドルフ達やセドリック達、そしてリヴァイ達も同行する。
明日の朝、レイモンド家の人達が、転移の魔法でニール領まで送ってくれるらしい。
「側近達にはこちらから協力要請を出している。今日は早めに休め」
「はい」
話を終えると、ルーカス達は自室に戻り明日の準備をした。
翌日、朝早くからルーカス達は愛馬と伝書用の鷹を連れ門に集まった。側近達も門に集まり終えると、レイモンド家の人達が魔法を使い、一瞬でニール領の森に到着した。
呪素のせいか辺りが暗くモヤっとしている。
っ、少し息苦しいな。
「お待ちしておりました、殿下方」
到着すると、すぐにアレクサンダーがやって来た。アレクサンダーはルーカス達に現状と作戦を簡潔に素早く教えた。
ルーカス達は側近達と4人1組で馬に乗って移動し、魔物の討伐と大地を癒す事になった。ルーカスはシュバルツに跨り、オズワルドをシュバルツの上に乗せた。そしてリヴァイ達に指示を出す。
「私達は東方だ。リヴとエイルは剣と魔法を使え。キャシーは地の魔法で2人の援護だ。私は音の魔法で大地を癒す。リヴ、そなたが先頭を走れ」
「「「了解」」」
少し走ると、ルーカスはシュバルツとオズワルドに言う。
「シュー、手網を離すよ。リヴにそのままついて行ってくれるかな。オズは辺りを飛んで何かあれば報告をしに来て」
〘ああ〙
〘承知〙
オズワルドが空を飛び、辺りの視察に行った。
「音の魔法を使うけど、君達は気にせず走り続けなさい」
「「「はい」」」
シュッ
ルーカスはシュバルツの手網を離して亜空間から琴を出し、魔力を込めて琴を奏でていく。
ルーカスが琴を弾いて走った大地が少し澄んだ様にモヤが減った。そのまま少し走っているとリヴァイが言う。
「魔物の気配です。止まります」
リヴァイ達が手網を引いて止まり、ルーカスは片手で琴を抑え、片手でシュバルツの手網を引いて止まる。
ゆっくりと近付いて行くと、そこには黒いモヤを纏ったウルフが2体いる。
「馬を1箇所に集めて、リヴとエイルで右の一体。僕とキャシーで左の一体を相手する」
「はい」
ルーカス達はすぐに馬から降りて1箇所に集め、リヴァイ達が右の一体を引き付けた。ルーカスが亜空間から剣を出した。
「キャシー、魔法で援護してくれるかい。それからシュー達をお願い」
「はい」
ルーカスはウルフとの距離を一気に縮めて切りかかった。
ルーカス達はすぐにウルフを仕留めた。
呪素を吸って強くなっている。
「仕留めました」
「うん。……オズが戻ってきた」
オズワルドがルーカスの所へ急いで飛んでくる。
〘 主、この先でクマの魔獣2体とオーガ4体、そしてウルフが5体、騎士と魔法士達10名が戦っているが苦戦中。負傷者も数名いる〙
先程のウルフはそこから漏れたかな。
「この先クマ2体、オーガ4体、ウルフ5体。いずれも騎士、魔法士10名が交戦中。負傷者数名、援護に向かうよ」
「「「了解」」」
ルーカスの指示に、馬に乗りそちらへ向かった。
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