144 / 410
本編 幼少期
133
しおりを挟む9の月。今日はリリアンのお披露目会の日だ。
「リリー、すごく素敵だよ」
「とても似合っているよ。本当に妖精のよう」
「弟が天使様で妹が妖精なんて私は凄く幸せですね」
「それならソフィは女神様だよ」
「ならば、ウィリアムは精霊か」
「私達にとっては皆可愛い愛し子だ」
「ええ、アース様の言う通りよ」
リリアンを褒めていると、アーサー達まで親バカ具合を発揮した。
「陛下、そろそろ時間ですので家族愛も程々にして下さい」
褒め合いが止まらない中、セバスが皆を窘める。
「もうそんな時刻か。リリー、今日の主役は君だ。頑張るんだぞ」
「何かあれば、私たちの所へ来ると良い」
「リリーを虐めた者はこてんぱんにしてあげるからね」
「ふふふ、そう致します」
「ルー、貴方は今日も別行動するのでしょう? 酉の刻には、控え室に来て一緒に食事を取るからね」
「うん、酉の刻に行くよ」
「待っている」
そう言うと、エドワード達は先に広間へ入っていった。
「では、僕も行ってくるね。リリー頑張って」
「はい!」
ルーカスもエドワード達の少し後に広間へ入った。
広間には既に沢山の貴族達が集まっていた。
沢山いるね。親しい人達へ挨拶回りをしないといけないね。オスカーの人達は来ているみたいだから、先に行こうか。
ルーカスはオスカー家の人達が着いていることに気づき、彼らの所へ向かうと、彼らもルーカスに気付いた。
「第3皇子殿下にご挨拶申し上げます」
「久しぶりだな、グレ、イ……」
ルーカスはグレイ達に挨拶をしようとしたが、その隣に立っている初めて見る女性が視界に入り、目を見開いて制止した。
その女性は初めて会うはずなのに、ルーカスには見覚えがあった。
「お初にお目にかかります。トリルビィ・リタ・オスカーが第3皇子殿下にご挨拶申し上げます」
「テオ殿下、こちらは娘のトリルビィで、シャーロットの姉にございます。シャーロットと似ておりますでしょう。性格は全くの別物ですが」
「姉……。ああ、凄く、似ている……」
本当に、母様と似ている。
ルーカスは演技を忘れて、ほんの少し悲しそうな表情になった。
トリルビィは、顔立ちはシャーロットとそっくりで、髪や瞳はシャーロットのものを暗くした様な色だった。
「初対面が公の場になってしまい申し訳ございません」
「いや、構わない」
ルーカスは正気を取り戻し、淡々と答えた。
「シャルが亡くなった年は、殿下の心も不安定で、シャルとそっくりなこの子を見て、暴走してしまわれる可能性もあったため、私がトリーには帰省を遅らせていたのです」
「しかし、その後はトリーは色々な領地でカフェを営んでおりまして、ここ数年は録にオスカーに戻って来て居なかったのです」
「そうだったのか。早く会いたかっただろうに済まなかったな」
「いえいえ、私は勝手に墓参りに行っていましたのでお気になさらずに」
「それは良かった。またオスカーに行かせてもらう。その時はゆっくりと話せると良いな」
「楽しみにお待ちしております」
そう言うとルーカスは、オスカー家の人達から離れて行った。
会場内には、殆どの貴族達が集まり終えていた。すると、アーサー達が広間に入ってきて、挨拶を述べる。
「今日はよく集まった。リリアンと仲良くしてやってくれ」
ザワザワ
アーサーの言葉に会場の皆がざわつき出した。アーサーの言葉を要約すると、リリアンに危害を加えるなと言う警告だ。
「第2皇女殿下のご入場です」
入場の合図とともに、扉が開かれ、リリアンが広間に入ってくる。
リリアンは瞳の色と同じ淡い緑の生地に、所々にオレンジみのある朱色の飾りが着いたドレスを纏っている。
そして腕には、ソフィア達とお揃いのブレスレットが着いている。
リリアンは玉座の階段下まで来ると、アーサー達に向かい、綺麗な所作でお辞儀をした。
「((ヒソッ…エラ皇女もとても可愛らしいな」
「((ヒソッ…ああ。おい、エラ皇女の腕、あれは陛下達と同じブレスレットじゃないか?」
「((ヒソッ…ははっ本当だ。テオ殿下の足にはアンクレットなんか着いてなかったのにな」
「((ヒソッ…テオ殿下は男に襲われたんだろ? 陛下達が性別を間違えて、ブレスレット送ったんじゃね? はははっ!」
はあ、人間はどうしてこうも他人を貶める事が好きなんだろうね。まあ、それを利用している僕も僕だけど。
リリアンの挨拶が終わると、男爵家から順にリリアンへの挨拶が始まった。
それを見てルーカスは、自分の側近達の親族への挨拶周りに向かっていった。
21
お気に入りに追加
727
あなたにおすすめの小説

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。



【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる