転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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本編 幼少期

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「そうだね、本名で呼び合うのはどうかな」


「承知致しました、ウィリアム殿下」


「殿下は固くないかな、シエンナ」


「叔父から礼儀は尽くすものだと教わりましたので」


 そういえば、初めて会った時にアレクサンダーがそんな風に言っていたね。


「アレクサンダーか。なら仕方ないね。ヴァイオレットとフローレンスはウィリアムと呼び捨てで呼んでくれるかな」


「……ウィリアム様と、呼ばせて下さい」


「わ、私も、ウィリアム様とお呼びしたいです……」


 2人は、さすがに初対面で年上の、それも皇子を呼び捨てには出来ないと、申し訳なさそうな表情をした。


「そうですよ、ウィルお兄様。初対面なのですから、呼び捨てにはしづらいですよ。でも、私の事はソフィと呼んでくださいね」


 ソフィアは笑顔でヴァイオレットとフローレンスに言う。2人はこくこくと頷き返事をした。


「ソフィはちゃっかりしているな」


「それなら私の事もウィルと呼んで欲しいよ」


「ウィル殿下、妹達が困っているので張り合わないでください」


「そうよ。皇子に向かって愛称なんて呼べないわ」


「ティファニーは、全員を愛称で呼んでるだろ」


「まあ、そうだったかしら」


 ティファニーが便乗するとアドルフがツッコミを入れて皆で笑いあっている。


「私の事もエドワードでもエドでも好きに呼んで構わない」


「ちなみに私はエディって呼んでるぞ~。ウィリアムの事はウィリーで、ルーカスの事はルーちゃんだ」


 ルーちゃんと言う言葉に、シエンナ達3人は驚いた表情をした。


「そうだな、ルーカスの事はルーちゃんと呼んでやればいい」


 追い打ちで、エドワードがそう言うと、3人は少し怪訝そうな目をした。
 貴族間で仲の良くない男性に対して、ちゃん付けで呼ぶ事は、凄く失礼な事だった。お茶会が始まって、ルーカスが会話に入ってきていない。加えて、最初の兄弟への挨拶や、アーサーから側近に対して近付くなと言われたという事から、3人は、ルーカス達との間に溝があると思っている。
 そんな相手に対して、ちゃん付けをさせるなど、虐めているのも同然の事だ。そして、ルーちゃんと呼べという事は、自分達にも虐めに加担しろと言っているも同じ。
 シエンナ達は、ルーカスを伺うように見た。


「兄上が仰るなら、構いません。好きに呼んでくれ」


 この言い方では、エドワードがルーカスに強要しているように感じるだろう。


「ありがとうございます」


 3人はルーカスに対しお礼を言ったが、ルーちゃんと呼ぶことは無かった。その事に、エドワード達は少しだけ不機嫌そうな表情をしたが、すぐに話題を変えていく。
 その後も、シエンナ達がルーカスと会話をしても、ルーカスの事を呼ぶことは無かった。
 他の呼び方をすれば、エドワード達の反感を買い、ルーちゃんと呼べば、虐めに加担することになる。
 ルーカスを呼ばないと言うことは、虐めにも加担せず、エドワード達からの反感もかわない最善の策だろう。


 それからも、お茶会は進んでいき、予定の半分程の時間が経った。すると、ウィリアムがエドワードに話しかける。


「兄様、そろそろ良いのではないでしょうか」


「ああ、そうだな。彼女達は合格だ。ルーカス、君はどう思う」


 エドワードがルーカスに問いかけると、ルーカスが纏っていた空気が柔らかくなった。すると、シエンナ達は凄く不思議そうな表情をした。


「僕も合格だと思うよ、兄さん」


「「「……???」」」


 ルーカスが素の話し方をすると、シエンナ達は何が起きたのか理解が追いついていないようだ。


「……え、あの、テオ、殿下?」


「うん、ごめんね。居心地悪かったよね。君達が僕に対して、どう接するかを見たかったんだって」


「私達の圧力に保身に走るか、他の呼び方をして私達の反感を買うかをな。だが、両者共を尊重して、のらりくらりとその場を凌いだのは、貴族としての流石だ」


「僕は保身に走っても構わないと思うけどね。だって、自分を守れないと他人なんて守れないでしょう?」


「それでも私達は、ルーカスを傷付ける者は近づけさせたくないんだ」


「私も兄様に賛成だよ」


 未だに、シエンナ達は情況を噛み砕けていないようだ。だが、少しずつ理解していくと、口を開いた。


「という事は、エドワード殿下方は、テオ殿下と仲がよろしいと言うこと、でしょうか?」


「ああ。そういう事だ」


「良かったぁ! 私てっきり、お兄様がルーカス様を虐める屑になってしまったのかと思ってしまいましたわ」


「おい! ヴァイオレット、口が悪いぞ!」


「お兄様も、演技だったのですよね?」


「当たり前です。それともフローレンスは私がそんな醜い事をする人間に見えますか?」


「い、いいえ! そんな事はございません!」


 ヴァイオレットとフローレンスは心底安堵したように全身の力を抜いた。







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