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本編 幼少期
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しおりを挟むあれから半年程が経った。5の月、エドワード達が夏の長期休暇に入り、食堂で皆と夕食を食べていた。
「リリー、来月頭に神殿に行き仮名を頂きに行く為、そのつもりで準備しておきなさい。それから、リリーの側近も決まった」
リリアンの側近は、アレクサンダーの兄にあたる、ルイーズ侯爵の娘のシエンナ、ラルフの妹のヴァイオレット、そしてノーマンの妹のフローレンスの3人だ。
シエンナはルーカス達と同い年で、ヴァイオレットとフローレンスはリリアンと同い年の子だ。
「では兄様、先に私達で3人と会いましょうか。ソフィとルークはどうしようか」
「私もご一緒致しますわ」
「僕も行くよ。人と接触する練習にもなるからね」
「分かった。なら、お茶会の準備を進める」
ルーカスはこの半年間で誰が近くに来ても震えることがなくなった。初対面の者が目の前に来ても、震えることは無い。ただ、男性に触れられるとまだやはり震えて動けなくなってしまう。
だが、対面する分には問題ない為、リリアンの今年のお披露目会にも参加する予定だ。
それから2週間後、ルーカス達は側近達と軽いお茶会を開く。ルーカスがお茶会に行く準備をしていると、アーサーが部屋へと尋ねてきた。
「ルーカス、今日は演技で行くんだろう?」
「そうだね、会ってみてから素に戻すか決めるつもりだよ」
「そうか。無理はするな。もし辛くなったらエドワード達や側近達にすぐに言うんだぞ」
「うん、分かったよ」
「だが、ノアはあまり近付きすぎるな。一定の距離を保つんだ」
「大丈夫だよ。リヴは無闇に僕に近付いて来る子では無いからね。他の子達も僕が怖がらない様に距離を保ってくれているから」
最近ルーカスは、アーサーからリヴァイとは少し距離を取れと言われるようになった。その事についてルーカスは、リヴァイと湯浴みをした時に、くすぐり合ったりと、距離が近かった為リヴァイとの距離が近くなり、体が震えないかを心配してくれているのだと思っていた。
「兎に角だ。ノアとは一定の距離を保て」
「うん、そうするね。ではそろそろ行ってくるよ」
「ああ。行ってこい」
ルーカスは、お茶会の会場である庭園へと向かった。庭園に着くと、エドワード達と側近達が集まっていた。
「お待たせしてしまい、申し訳ございません。ルーカス・アルシアン・ラ・テオ・オスカー・ナサニエルが第1皇子殿下、第2皇子殿下、並びに第1皇女殿下にご挨拶申し上げます」
ルーカスは完璧な所作でエドワード達に向かい挨拶をした。
通常、皇子や皇女同士では公の場であっても正式な挨拶はしない。するとすれば、お披露目会の主役の場合、そしてデビュタントの場合のみだ。
エドワード達が軽く返事をすると、今度はリリアンの側近達が立ち上がり、ルーカスに対してカーテシーを行い挨拶をする。
「シエンナ・フレヤ・ルイーズが第3皇子殿下にご挨拶申し上げます」
「お初にお目にかかります。ヴァイオレット・アルマ・ライリーが第3皇子殿下にご挨拶申し上げます」
「お初にお目にかかります。フローレンス・ベル・レイモンドが第3皇子殿下にご挨拶申し上げます」
「ああ、よろしく頼む」
ルーカスが返事をすると3人は顔を上げた。
「ルーカス、そこの空いている席に座れ」
エドワードは空いているリヴァイとアレイルの隣の席を指して言った。ルーカスはそこに顔を向けると、少し怪訝そうな顔をしてから、発言する。
「エイル、席を変わってくれ」
「えっ…?」
「悪いなリヴ、父上からそなたに近付くなと警告されてしまった。エイル、変わってくれるか?」
「あ、はい。どうぞ」
アレイルは、慌てて席を立ち、ルーカスに席を譲りリヴァイの隣に座り直した。シエンナ達3人は少し驚いた様子だ。そして3人とリヴァイ以外の皆は、心の中でアーサーの事を心が狭いなと密かに思ったのだった。
お茶会が始まったが、ヴァイオレットとフローレンスは、緊張でガチガチに固まってしまっていた。2人はお披露目会こそ済ませたが、いかんせん皇族と会うのも、お茶会に参加するのも今日が初めてだった。
「おいおい、ヴァイオレット。緊張しすぎだろ」
「だって皇族の方に公爵家、侯爵家の方が勢揃いなのですよ!」
「フローレンスもです。殿下方はお優しいので失敗しても大抵の事は流してくださいます。もう少し肩の力を抜いて下さい」
「は、はいっ、お兄様」
ラルフとノーマンが指摘すると、兄と話せたおかげか幾分か肩の力が抜けたように見える。
「まあ、緊張するなという方が無理だよね。じゃあそうだね、名前の呼び方を変えようか」
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