転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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本編 幼少期

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 ルーカスはリリアンを抱えて自室に戻ってきた。


「ルー! 遅かったから心配したのよ! っ!! リリー!」


「ごめんね、姉さん。リリーを治療してあげてくれるかな?」


「分かったわ。ルーのベットにリリーを寝かせてもらえるかしら」


「うん」


 ルーカスは急いで自分のベットにリリアンを寝かせた。そして、ソフィアが光の魔法をかけて治療していく。


「テオ殿下。リリアン様をお助け頂き誠にありがとうございます」


「いや、僕の方こそ直ぐに知らせに来てくれてありがとう。おかげで大事に至らなかった」


「しかし、リリアン様にお怪我を追わせてしまいました……」


「そうだね。けれど、この対応が最善だった。今回の事はそのまま受け取って、次がないように考えれば良い」


「はい……!」


 コリンは決心したように返事をした。ルーカスとコリンが話していると、ソフィアが治療を終えた。


「もう大丈夫だと思うけれど、念の為お医者様に見せた方がいいわね」


「そうだな。すぐにウルを呼ぼう」


「リリー、ソフィ、ルーカス! 無事で良かったわ!」


「お母様!」


 ルーカスの部屋にアーサーとジェシカそれからアレクサンダーがやってきた。
 ジェシカは部屋に入ると、ルーカスとソフィアを思い切り抱きしめた。


「私達は大丈夫ですよ」


「リリーも姉さんが光の魔法をかけてくれたからね」


「そうだったのね。2人共よく頑張ったわ!」


「ふふふ、ありがとう、母上」


 ジェシカが2人の頭を撫でるとルーカス達は嬉しそうに微笑んだ。




 皆で少し会話をしていると、皇城専属医師長のウルがリリアンの体を見にやってきた。


「特に問題はございません。ルナ皇女の光の魔法のおかげでしょう。迅速且つ丁寧に治療なさって下さったおかげですね」


「そうか、ソフィ、よくやった。ウルも忙しいのに来てくれて助かった」


「いえいえ、こんな老いぼれで宜しければいつでもお呼びください」


「老いぼれというほど老いておらぬだろう」


 ウルとアーサーが軽口を叩いて笑う。すると、ウルがルーカスの方を向き、真剣な表情をした。


「テオ殿下。私はテオ殿下のお母様であらせられるルーシー様の治療を任されておりました。あの時、ルーシー様をお救い出来ず、申し訳ございませんでした」


 ウルは深く頭を下げた。


 彼は今までずっとこの事を抱えてきたんだろう。皇子の母を救えなかった事ではなく、子のいる母をただの1人の患者を救えなかった事を。ああ、彼はずっとこれを抱えて生きていく。


「うん。許すよ。君の謝罪は受け取った」


「っ、ありがとうございます」


 ウルは、安堵したような、決意したような、そんな表情でお礼を言って部屋を後にした。




 その後少しすると、リリアンが目を覚ました。


「……ここ、は?」


「リリー! 痛いとこはない?」


「お姉様。はい、どこも痛くありません」


「良かったわ! ここはルーのお部屋よ」


「!? 第3皇子様のお部屋ですか!?
 この白いくまちゃんも……?」


 リリアンは自分の寝ていたベットの上に置いてあるシロクマのぬいぐるみを指して言った。


「その白いくまちゃんも、僕の物であっているよ。初めまして、リリー。第3皇子のルーカスだよ。よろしくね」


「はわゎ! 女神様ですか?」


「流石は姉妹だな」


「そうですね。ソフィと発想が似ています」


 リリアンの言葉に、アーサーとジェシカが感心したようにそう言った。


「ふふふ、君の兄だよ。会うのが遅くなってごめんね」


「い、いえ! お話し出来て凄く嬉しいです、第3皇子様」


 ソフィアやジェシカ達は、リリアンの第3皇子様という呼び方に、反応した。


「リリー、第3皇子様だと他人行儀だわ。ルーの事もお兄様って呼んでみたら?」


「そうね。エドワードやウィリアムもいるから、ルーお兄様なんてどうかしら」


「それはいいお考えです!」


 2人の提案に、リリアンはルーカスの顔を見た。


「君の思うままに」


「! ルー、お兄様……!」


「うん、リリーは本当に可愛いね」


「ありがとうございます、ルーお兄様!」


 すごく可愛い!


「じゃあ、リリー。答え合わせをしましょう!」


「答え合わせ、ですか?」


「ええ。リリーの誕生日の時に匿名の贈り物を渡しているでしょう? その贈り主は、誰だと思う?」


「っ! まさかっ」


 リリアンはルーカスの方に目を向けた。


「そう、正解は、ルーでした!」


「今まで直接渡せなくてごめんね」


「いえっ、いいえ! 凄く嬉しかったです! お手紙も何度も読み返して、贈り物のぬいぐるみも絵本も、今も大切に使っています!」


「そう、ありがとう、リリー」


「私の方こそ、素敵な贈り物をありがとうございました」


 そうして、皆で会話をし、最後にエブリンの処罰について、アーサー達から話があった。幸いリリアンは、心の傷は余り深くなかったようで、生活に支障はないだろうとの事だった。





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